第563話 バトルロイヤル、再び


 さてと、サヤ達はワイワイと騒ぎながら『異常回復Ⅰ』の取得を狙っているけど、俺はどうしようかな? アルはサヤ達のバトルロイヤルのポイントのカウントをしているし……って、地味に根が動いてるな……?


「アル、根が動いてるけどそれは何やってんだ?」

「あ、これか? 多根縛槍のLv上げをやってんだよ。まだまだ発動速度が遅いしな」

「あー、確かにあれは遅いよな」

「だろ? Lvが上がれば発動速度も上がるらしいからな」

「なるほどね」


 ふむ、根縛はLvが上がった事で発動速度が上がっているけども、その上位に当たるっぽい多根縛槍の発動速度はかなり遅いもんな。コイルルートと並列制御で発動して、その辺は補っていたけども元々の発動速度が早い方が良いのは間違いないか。


「で、そういうケイはどうすんだ? 凝縮破壊Ⅰは取れたんだし、次に何を育てるんだ?」

「んー、そうだな。即座に実用的になりそうな土魔法Lv6が良いかなとは思ってるぞ」

「なるほど、土魔法のLv6か。……その場合はアースインパクトになるのか?」

「多分そうだとは思うぞ。まぁ、まとめを見れば分かるだろうけど、そこはやっぱり自力で確認したいんだよなー」

「ま、そりゃそうか。……それはそうとして、ケイはスキル強化の種は何に使う?」

「あー、それは悩み中……」

「……やっぱりケイもか」

「土の昇華に使うつもりが自力で到達しちゃったからなー。アルは?」

「俺も水の昇華の予定だったから、同じような理由で悩み中だ」

「……まぁそうなるよな」


 サヤとヨッシさんとハーレさんについては既にスキル強化の種は使用済みになったけど、俺とアルまだ未使用である。……いっその事、Lv6に上がって間もない水魔法をLv7にでもしてみるか?


「……アル、水魔法Lv7ってどう思う?」

「あー、そういう手段もあるのか。……魔法の性質が分からんが、それは十分ありだと思うぜ」

「ふむ、検討の余地は十分過ぎるほどありかー。うーん、悩む……。どういう性質の魔法なのかも気になる……」

「気になるなら、まとめでLv7の魔法を確認してみるか?」

「……よし、悩んでても答えが出る訳でもないし、ちょっと確認してみる」

「おう、そうするのがいいと思うぞ」


 出来れば自分で確認したいという気持ちはあるけども、必ずしもそれだけにこだわる必要もないか。魔法のLv7に既に到達している人がいる可能性もあるから、その情報が出ていれば確認するのも手段としてはありだろう。アイテムの使用も絡む訳だし、絶対に自分達だけで見つける事しかしないってこだわるつもりもないしね。

 という事で、まとめ機能でチェック開始! えーと、魔法の項目を見てっと……あれ? Lv6まではあるけど、Lv7の情報はないな……? てっきりあるものと思っていた情報だけど、まだ到達した人がいないって事なのかな。


「アル、雑談もいいけどちゃんとカウントしてくれてるかな?」

「サヤ、隙ありー! 『アースクリエイト』『散弾投擲・瘴』!」

「そうでもないかな! 『略:ウィンドボム』!」

「ちょっとは反撃しないとね! 『略:棘伸縮』『並列制御』『アイスプリズン』『乱れ針・浄』!」

「わっ!?」

「ちゃんとカウントしてるから心配すんな。今のでハーレさんとヨッシさんに1ポイント追加だな」


 お、今度はサヤがアルに声をかけたとこを狙われて攻撃されていたね。ふむふむ、砂を生成してからの散弾投擲の迎撃に意識を向けさせてから、その隙をついてヨッシさんが拘束しつつハチの針での連続突きか。ま、伸ばしたウニの棘でだったけど、そういう手段もありなんだな。


「サヤ、ヨッシ、少し休憩しよー! 行動値、尽きたー!」

「……うん、私も尽きたから賛成かな」

「そだね。流石に行動値の回復をしないと、スキルが使えないしね」

「3人とも、お疲れさん。ちなみにアル、誰の勝ち?」

「あー、サヤが20ポイントで勝ちだな。次がハーレさんの18ポイントで、ヨッシさんは14ポイントか」

「やったかな!」

「うー! 少し足りなかったー!?」

「あはは、私は状態異常なしだとどうしても見劣りするね」

「ま、そこは気にしなくて良いんじゃねぇか? 得手不得手ってのは誰にでもあるもんだぞ」

「そもそもヨッシさんは実戦向きな性能になってるしな」

「あはは、まぁそうなんだけどね」


 基本的にヨッシさんは状態異常特化型の育成になっているから、状態異常の効かない同じ群集相手だと効果を十全には発揮出来ないもんな。その中で魔法をうまく使いつつ、サヤやハーレさんに攻撃を当てられているんだから凄いもんだよ。

 それにしても瘴気制御も浄化制御も魔力集中や自己強化に比べると魔法の破壊性能は一段落ちるのか? 拘束された時に全然破壊が……って、あれか。もしかして回数重視で行動値の節約をする為に全部Lv1で発動してたとかそんな感じ? うん、普段より全体的に明確に威力は低かったし、多分そうなんだろうな。


「ヨッシ、操作系スキルならサヤには圧勝なのさー!」

「……否定は出来ないけど、その言い方はどうなのかな、ハーレ?」

「あぅ!? フォローしようと思ったら言葉選びを間違えたー!?」

「あはは。サヤ、ハーレには悪気はないから許してあげて?」

「……別に怒ってはないかな」


 サヤはちょっと言ってみただけで、本当に怒っているという雰囲気ではない。ま、いつものじゃれ合いの範疇なんだろうね。


「それはそうと、ケイは水魔法をLv7にするのかな?」

「あ、しっかり聞こえてたんだ?」

「うん、まぁね。それで情報はあったかな?」

「あー、残念ながらまだLv7の魔法の情報は無しだった」

「なんだ、そうなのか?」

「まぁなー。さて、どうするか……」


 情報なしという残念な結果だった。でも余計に内容が気になってきたし、今すぐに水魔法をLv7に上げても良いんだけど、地味にジェイさんと斬雨さんが近くにいるのが気にはなるんだよな。灰の群集でまだ情報が上がっていない魔法を、青の群集がいる目の前で試す訳にもいかない。……今からミズキの森林に行って試すのも、ベスタを呼び戻す約束をしている以上は避けておきたいな。

 それに現時刻はもうすぐ11時である。第2弾のスクショの撮影も……って、あれ!? ちょっと他の事をして見ていなかった間に人が増えてない!?


「あー、とりあえず今ここでやるのは無しで……。どう考えても今はやるべきじゃない……」

「ん? なんで……あぁ、そういう事か。さっきから段々と賑やかになってた気はしてたが……」

「あー!? 結構、青の群集の人達がいるー!?」

「……いつの間にあんな集まったのかな?」

「なんか、凄い事になってるね」


 サヤ達は回数稼ぎに夢中なっていて、俺やアルは気にもしていなかったけども、いつの間に俺達がスクショを撮っていた時よりも大人数へと増えていた。……大型の種族の人も結構集まってるから、ちょっとスクショ撮影の中心部がよく見えないな。


「アル、ちょっと乗せてくれ。どんな状況か見たい」

「あー、今のケイの位置からじゃ見えないのか。いいぜ」

「かなり凄い事になってるよ?」

「私も見たいので、アルさん乗せて下さい!」

「わっ! これは凄いかな!」

「おらよ、『根の操作』!」

「アル、サンキュー!」

「アルさん、ありがとー!」


 元々飛べているヨッシさんと、すぐに竜に乗って確認していくサヤであった。まぁ、俺もハーレさんも自力で飛べば良いんだけど、ここはアルに任せるという事で! アルが根の操作で簡単に引っ張り上げてくれたしね。


「さて、どうなってるのか……って、すげぇな!?」

「わー!? 凄い事になってるねー!」


 アルのクジラの上から覗き込んでみれば、思いっきり岩で作られた台座のようなものに纏瘴を行った斬雨さんが突き刺さっており、そのタチウオの頭部は本物の日本刀のように柄が用意されている。……あれはジェイさんに要望が出てた岩の操作でのものか。……台座っぽい岩にコケがあるのもジェイさんの仕業かな?

 そして黒い風が吹き荒び、周囲を燃やす黒い火を揺らしている。ついでに雷雲ではなく、周囲が暗闇に覆われているような感じなので闇の操作を併用しているようだ。……ちょっと見ない間に、凄い光景になってたもんだね。


「……これ、俺らがここから撮って団体部門に応募ってのはあり?」

「ケイさん、それは無理ー! 行動ログから参加の判定が入るから、団体部門では弾かれるはずです!」

「あ、そうなんだ。……それなら、個人部門ならあり?」

「ありだと思うけど、これだけ人数がいたら似たような構図の重複で事前審査で絶対に落とされると思います!」

「あー、まぁそりゃそうか」

「ズルはするなってとこだろうな」


 スクショ撮影のメイキングのスクショとかではありな気もするけど、人数が多ければ多いほど同じような事を考える人も出てくるだろうしね。そういうのを弾く為の事前審査でもあるのだろう。


「あ、終わったみたいかな?」

「……でもなんか、次を始めようとしてない?」

「そうみたいだねー!?」

「てか、指揮は相変わらずレナさんがやってんだな!?」

「まぁこういうのに関してはレナさんとかのサファリ系プレイヤーの出番だろうよ」


「さー、次もやっていくよー! 次のスクショ班の希望者と、スクショのアイデアを持ってこーい!」

「……レナさん、まだやんの?」

「今日はこうやってどんどん人も増えてるし、人数が減るまでとことんやるよー! ダイクも手伝う事!」

「……ま、いつもあちこち連れ回されてばっかだし、たまにはそういうのもいいか」


 うん、どうやらレナさんとダイクさんはまだまだやる気でいるようである。まぁ、みんな楽しそうだし別にいいか。

 あ、そうしているとジェイさんと斬雨さんがやってきた。どうやらこの2人はさっきのスクショの撮影までで終わりにする感じみたいだな。


「ケイさん、それに皆さんも、今日は成り行きではありましたが楽しかったですよ。……今度、ちゃんと青の群集の森林エリアまで来る時は案内をしますので、その際はご連絡下さいね」

「ま、そういうこったな! それじゃ俺らはこの辺で――」

「あ、ちょっと待った、ジェイさん、斬雨さん!」

「……おや、他に何かありましたか?」

「あー、ちょっと情報交換の内容の続きで話しておく事がね?」

「……なるほど。そういう事でしたら、お聞きしましょう」

「ありがとな、ジェイさん。あ、ちょっと今、ベスタが別件で動いてるから、呼んでくるまで待ってもらってもいいか?」

「えぇ、そのくらいなら構いませんよ」


 ほっ、流石にジェイさんもさっきの話の続きという事でちゃんと時間を取ってくれるようである。……さっきジェイさんがあえて詮索してこなかった事を、俺らが話す気になったというのを理解してくれているんだろうね。


「ベスタさんが出てくるって事は、重要な情報って事で良いんだよな?」

「その認識で問題ないぞ、斬雨さん」

「そうか。それじゃ待たせてもらおうか」

「ほいよ。アル、樹洞を頼んだ!」

「任せとけ! 『樹洞展開』!」

「……樹洞を使うという事は、迂闊に広げられない情報という推測は当たりですか。……灯りが欲しいですね。『発光』!」

「あ、ジェイさん、ありがと」

「いえ、この程度は誰がやっても問題ありませんからね」


 そんな風に話しながら、ジェイさんはすぐに樹洞の中へと入っていった。さて、ちょっと思ったよりは早いタイミングにはなったけども、ジェイさん達の手が空いたからベスタに連絡しておくか。あ、その前に……。


「そういや、サヤ達はどうする? 話に加わるか?」

「あ、どうしようかな……?」

「いえ、そのまま先程の特訓を続けておいて構いませんよ。纏瘴や纏浄を使っているのですから、効果時間が勿体無いでしょう。それに全員が居なければならない訳でもありませんしね」

「なぁ、ジェイ。俺も情報のやり取りは面倒くせぇんだが……?」

「……はぁ、斬雨らしいといえばらしいですか。……同意が得られればですからね?」

「おっし! って事で、そのバトルロイヤルに俺も混ぜてくれ!」


 あー、斬雨さんは基本的にこれからの情報には興味ないんだな。いや、相棒であるジェイさんが聞いていれば十分だという判断か? ……ただ単にバトルロイヤルの特訓が楽しそうだから、そっちに混ざりたいだけという気もする。


「私は良いけど、ハーレとヨッシはどうかな?」

「私も問題なしさー!」

「うん、私も良いよ」

「おっしゃ! サンキューな!」

「それじゃよろしくかな。ケイ、PTの連結をお願い」

「あ、それもそうか」


 斬雨さんは青の群集だから、PTを組むかPT連結をしないとダメージがそのまま通じてしまうもんな。そうなると流石に特訓への支障が出る。

 って、あれ? 今日合流した時にはアルがPTのリーダーになってたはずだけど、いつの間に俺がPTのリーダーに……って、あれか。アルがクジラだけにログインし直した時に俺にリーダーが移っていたっぽい。


 ま、その辺の理由は別にどうでも良いか。えーと、PT連結の申請は……ジェイさんの方がPTリーダーだからそっちにだね。


<ジェイ様のPTと連結しました>


 よし、PT連結完了っと。これで俺とジェイさんと、これからフレンドコールで呼ぶベスタとの話し合いと、サヤ達と斬雨さんとのバトルロイヤルでの特訓が再開だな。


「そういやアルはどうする?」

「あー、根を動かしながら一応話の方に混ざるぞ」

「ほいよっと」

「斬雨がわざわざすみません」

「いや、良いって。サヤ達もなんかやる気になってるしね」


「折角だし、青の群集VS灰の群集でやるかな!」

「ちょ!? 俺が不利すぎじゃねぇか、それ!?」

「流石にそれは不公平過ぎるから無しにしよう?」

「そうなのさー! ……たまたま、そうなる状況もあるかもしれないけどねー!」

「……それもそうかな」

「ちょっと待った!? それ、地味に俺を狙うって宣言だよな!?」

「「「……さぁ?」」」

「……いいぜ、やってやらぁ!」


 やる気というよりは、斬雨さんへのフルボッコ宣言な気もするけど……いや、違うな。あれはそう言いながら、みんな不意打ちを狙っている感じか。


「……心理戦込みでのやる気ですね。まぁ斬雨の弱いところではあるので、ちょうどいいですか」

「……ケイ、なんか斬雨さんを鍛えるみたいになりそうだけど、いいのか?」

「別に良いんじゃね? サヤ達もそれだけでもなさそうだしさ」

「あー、まぁ確かにそれもそうか」


 そもそも近接では以前にサヤが斬雨さんに勝っているけども、ハーレさんとヨッシさんについてはそうでもないからね。サヤと同じ斬撃系のスキルを使うとはいえ、斬雨さんのタチウオ相手だと結構勝手が違うもんな。そういう意味でも、このバトルロイヤルは決して悪い特訓ではないよね。


 さてと、それじゃ俺はベスタにフレンドコールをしていこうじゃないか。そこまでやったら今日は終わりってところかな。


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