第526話 ケイとサヤのコンビ戦
空中ではサヤとイブキの対決が始まっている。そして地上では俺と羅刹の睨み合いとなっていた。さて、こっちは簡単に行動の誘導は出来そうにないな。
「……まぁ、何を企んでいても潰すまで。『魔力集中』『ファイアクリエイト』『操作属性付与』『連速脚撃・火』!」
「望むところ!」
流石に羅刹が俺を放置してくれる訳もなく、赤みを帯びた銀光を放つ蹴りが俺に向けて迫ってくる。名前やまだ銀光が弱めという事から判断して連撃系だな。
火属性で攻めてくるのは想定の内だったけど、既に火属性っぽいのに更にファイアクリエイトで属性を上乗せ……? なんだ、この違和感……? いや、とにかく今は迎撃を優先だ。
<行動値上限を2使用と魔力値4消費して『魔力集中Lv2』を発動します> 行動値 67/71 → 67/69(上限値使用:3): 魔力値 200/204 :効果時間 10分
<行動値を1消費して『群体内移動Lv1』を発動します> 行動値 66/69(上限値使用:3)
<行動値5と魔力値15消費して『土魔法Lv5:アースウォール』を発動します> 行動値 61/69(上限値使用:3): 魔力値 185/204
予め増殖でロブスターの表面の全体に広げておいたコケの左のハサミ部分に核を移動して、そこを起点に魔法砲撃で砲撃化した土の防壁魔法を発動! ついでに魔力集中で衝撃にも持ち堪えやすく補強だ!
ふっふっふ、コケの核をハサミの側面に移動して、そこから発動した土の防壁だ。まるでハサミを守る盾みたいになったね。
「何? ハサミの側面で受けただと?」
「ま、応用スキル相手じゃそうは保たないけどな!」
「ほう? 狙いは時間稼ぎで……使うのはこれか!」
「え、ちょ!?」
俺が土の盾で防御を固めたのを見ると同時に羅刹は攻撃方向を変えていき、さっき増殖で作ってばら撒いたコケに蹴りを入れて燃やし始めた!? あぁ、折角仕込んだコケがどんどん減っていく!?
あ、そうか。単純に属性を持ってるだけだと火属性のダメージ自体は入ってもスキルでは燃やせないのか。コケ対策の火属性の付与って訳なんだな。
「その慌てっぷりからすると、このコケはやはり仕込みか」
「ちっ、バレバレだったか……。だけど、それ以上は潰させない!」
「はっ、甘いな。これで連撃の強化も大詰めだ」
「なっ!?」
そこに羅刹の眩い銀光を放つ蹴りが土の防壁を蹴り砕いていた。……あー、連撃の最大強化だと耐え切れ……いや、まだ銀光が収まっていないって事は次が来る!? ……いや、一応回避手段はあるけど博打になるか。
「もらった!」
「くっ!?」
タイミングを見誤れば、この一撃で大ダメージは確実。だけど、ここはそれをチャンスに変えるまで! そして銀光を放つ羅刹の踏みつける様に振り下ろされる蹴りがロブスターのハサミに届きそうになる。よし、今だ!
<行動値を3消費して『スリップLv3』を発動します> 行動値 58/69(上限値使用:3)
ハサミの角度を絶妙に合わせて、表面のコケで滑らせることで最後の強力な一撃の回避に成功っと。おー、凄い威力の蹴りが地面に亀裂を入れて少し埋まってるね。
とはいえ、ハサミの表面のコケは全部駄目になったし、回避に使った左側のハサミには亀裂が走ってHPも結構減った。だけど、動くのには支障はない範囲だしここは絶好の反撃のチャンス!
「なん……だと?」
「さて、反撃させてもらおうか!」
<行動値4と魔力値12消費して『水魔法Lv4:アクアボム』を発動します> 行動値 51/69(上限値使用:3): 魔力値 173/204
魔法砲撃で砲撃化して、回避に使わなかった右側のハサミを起点に指定。距離が離れていればあっさりと避けられるだろうけど、この至近距離なら外さない! 魔法砲撃で威力増幅したアクアボムを食らえ!
「羅刹!?」
「くっ、避け切れなかったか」
「……いや、今の直撃を免れただけでもびっくりなんですけど……」
確実に直撃だと思ったけど、手を犠牲にガードして後方に一気に飛び退いていたようである。いや、でもダメージ自体は結構与えたし、片手は潰したぞ。
羅刹は流石に俺を警戒して少し距離を取っている。……追撃してくれれば、万力鋏からアクアボールの連射コンボでもしようかと思ったけど、そこまで甘くはないか。
「余所見をしてる余裕は与えないかな! 『略:エレクトロボール』!」
「おわっ!?」
「イブキ、油断するな。集中しないと……すぐに殺られるぞ?」
「お、おう!」
さてと、羅刹は思いっきり俺の事を警戒してくれてるし、イブキの集中も乱れている。ここらで仕込みを使った奇襲でもやっていきますか。これは気付かれたら意味がないから思考操作で発動だ。
<行動値を19消費して『光の操作Lv3』を発動します> 行動値 32/69(上限値使用:3)
太陽光を支配下におき、狙いをつけていく。狙いは目の前にいる羅刹……ではなく、空中戦を繰り広げているイブキ! 太陽光を収束させたレーザーを発射!
「……っ!? イブキ、今すぐそこを離れろ!」
「どういう事だ、羅刹!?」
「逃さないかな! 『略:エレクトロプリズン』!」
「こんな拘束魔法なんざ、すぐに破って……って、うわ!?」
サヤの竜から放たれた拘束魔法を破ろうとした直後に、俺の光の操作で収束させたレーザーがイブキの龍の翼を焼き切っていく。ふっふっふ、これでイブキの片方の翼も潰したし、飛べなくなって落下していってるね。
「サヤ、追撃!」
「分かってるかな! 『連強衝打・風』!」
「くっそ、完全に油断した! 『並列制御』『ウィンドボム』『風の操作!』」
「逃さないかな!」
風の爆発の指向性を操作して強引に光のレーザーから逃れて地面へと落下していくイブキに向けて、サヤも竜の速度を上げて追撃していく。……でもサヤは連撃を追撃に選んだから、出来るだけ待機時間ぎりぎりまで伸ばしているみたいだけど、少し無駄打ちが発生しているね。
「羅刹、ヘルプー!?」
「ケイ、フォローお願いかな!」
「おうよ!」
「ちっ、厄介な!」
羅刹がイブキの元へと助けに行こうとするけれど、まだ操作時間の残っている光のレーザーを羅刹に放って妨害していく。コンビで戦ってるんだから、連携してやっていかないとね?
あ、地味に周囲が燃えてるけどこれは仕方ないか。
「……あのコケ自体を使うんじゃなくて、地面へ意識を向けさせる囮だったのか?」
「さて、どうだろね?」
「……手の内をわざわざ喋る訳もない……か」
ま、それにしても羅刹相手には、この光のレーザーは全然当たらないな。まぁ意識の外からの不意打ちだったからこそ、無防備な状態に直撃させられた訳だしね。
とりあえずイブキのHPは半分ちょっとと片方の翼を、羅刹は3割ちょっとと片腕を削れたか。うん、ここまでは上出来だな。イブキは好戦的ではあっても劇的に強い訳ではないし、羅刹はどうもバランス型のようでプレイヤースキルは鋭くはあっても思った程は1撃の威力は高くない。……まぁ回避出来なきゃ大ダメージを受けてたレベルの攻撃ではあったけどね。
「悪ぃ、羅刹。油断した……」
「いや、あれはケイさんの作戦勝ちだ。気にするな」
「で、ぶっちゃけどうするよ?」
「……そうだな。よし、厄介なコケを昇華魔法で一掃する」
「お、あれをやんのか!」
おっと、完全に俺が標的かよ。まぁまだあちこちにコケは残ってはいるし、地形的にも天然のコケは周囲にそれなりには存在する。コケの厄介さを知っているのなら狙いとしてはおかしな事ではないか。ま、昇華魔法だとすると、初手からぶっ放す訳にもいかないもんな。
「行くぞ、イブキ! 『ファイアクリエイト』!」
「おう! 『並列制御』『ウィンドプリズン』『ウィンドクリエイト』!」
げっ、並列制御を使って風の拘束魔法でロブスターの動きが封じられた!? くっ、破壊する事自体は可能だけど、同時に火と風の昇華魔法の発動まで用意してんのかよ。この使い方は思いつかなかった。
「サヤ、上空に行って言ってたやつを!」
「うん、分かったかな!」
羅刹とイブキによる火と風の昇華魔法が発動し、炎の竜巻が誕生して周囲を焼き払っていく。あー、これはちょっとずつ位置をズラしながら割と長めの時間で発動する昇華魔法のようだね。
じっくりと念入りに焼き払うつもりみたいだけど、瞬殺出来る種類にすべきだったな。サヤは上空へと移動して昇華魔法の範囲圏外に退避していく。さて、予め用意してもらったあれを使おう。
「ケイ!」
「あ、空中に逃げるとかずりぃぞ!」
「……いや、飛べるイブキが言う事か? ……それにしても何をする気だ?」
よし、サヤが上空へと退避するのが間に合って、コケ付きの石を掲げている。サヤ、グッジョブだ!
それにしてもイブキの発言への羅刹のツッコミには同意だね。どう考えたって、飛べる人が言う事じゃない。ま、それじゃ急いでやっていきますか。
<行動値上限を15使用して『遠隔同調Lv1』を発動します> 行動値 32/69 → 32/54(上限値使用:18):効果時間 5分
<行動値を1消費して『群体内移動Lv1』を発動します> 行動値 31/54(上限値使用:18)
<『遠隔同調』の効果により、視界を分割表示します>
そしてサヤの持つコケ付きの石へとコケの核を移動していく。とはいえ、これではロブスターが死んでしまうので次の手を打たないとね。……この際、死にさえしなきゃいいか。
「サヤ、イブキに向かって俺をぶん投げろ!」
「分かったかな! 『強投擲』!」
「はっ!? あ、やべ!?」
まさか昇華魔法の発動中に狙われるとは思っていなかったようで、イブキは慌てて飛ぼうとするが翼の片方がないのでバランスを崩して転倒していく。ふっ、油断したな! って呑気にしてたらロブスターが丸焼きだから、大急ぎで思考操作!
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値10と魔力値90消費して『半自動制御Lv1:登録枠2』は並列発動の待機になります> 行動値 21/54(上限値使用:18): 魔力値 83/204 再使用時間 90秒
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値を6消費して『土の操作Lv6』は並列発動の待機になります> 行動値 15/54(上限値使用:18)
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
まずはロブスターのハサミを起点にした魔法砲撃のアクアボールの45連射を発動して、ロブスターの拘束を破壊。そして同時にロブスターのいる地面の土を支配下に置き、持ち上げて穴を作りその中へ飛び込み、大急ぎでその穴を塞いでいく。
よし、ロブスターの拘束は破壊出来たし、イブキに向けてコケに起点を切り替えて連射を再開だ。拘束の破壊に6発使ったから、残り最大で39発を撃ち込む!
「ちっ、そんなのありかよ!?」
「って、そんな事言ってる場合か! 避けろ、イブキ!」
「分かってらぁ!」
あ、思いっきりサヤに投擲してもらったのは避けられた。まぁいいや。どっちにしても背後から狙うだけ! 魔法砲撃がなくても通常発動で……って、コケの核を魔法砲撃の起点にすると視点がそのまま攻撃方向になるのか。それなら魔法砲撃で連射でいこう。どうせイブキの翼は潰したから飛んでは逃げれないし。
「ちょ、投擲を回避しても意味ねぇのかよ!? ぐはっ!」
よし、イブキにアクアボールの連射が次々と当たっていく。お、昇華魔法の発動時に発動者へとダメージが入れば昇華魔法は掻き消えるのか。今までそういう事は無かったから、これは新発見だな。
とりあえずこれで焼き殺される心配はなくなった。……昇華魔法の弱点も分かったし、これは今後の俺も気をつけないといけない内容だけどね。
「くっ、これは使いたくなかったけど仕方ねぇ! 『脱皮』!」
「イブキ!? それはデメリットが大き過ぎる!」
「だったらどうしろってんだよ!? このままじゃただの的だ!」
コケ付きの小石から放たれる連射を受けるのも、今の片方の翼が無くなっている状態で回避するのも厳しいと判断したようで、イブキは防御力大幅ダウンというデメリットのある脱皮を使い翼を再生していく。
「私の事を忘れてないかな!? 『連閃・風』!」
「し、しまっ!?」
完全に俺からの攻撃に気を取られていたイブキは再生した翼で空に逃げるも、サヤに対する警戒を疎かにして切り刻まれていく。おー、防御が大幅に下がってるから、凄い勢いでHPが減っていく。
「ちっ、油断し過ぎだ!」
「それは羅刹もだな」
「くっ、まだ連発出来るのか」
結構早い段階でイブキがアクアボールの連射に対応してきたので、まだ20連射くらいは残っているんだよね。……よし、ロブスター側の仕込みも完了!
「イブキ! 少しの間でいい、耐えてろ。大技でいく! 『重脚撃・火』!」
「おわっ!? 早めに頼むぜ!」
「やらせるかよ!」
「……魔法砲撃だろうが、通常発動だろうが、狙いがわかってりゃ避けるのは難しくねぇよ」
「ま、だろうね」
「……なに?」
そういうと思っていたからこそ、もう1つの仕込みをしている。さて、羅刹なら上手く避けてくれると思ってたよ。そして、これで所定位置への誘導は完了だ! という事でメイン視点をロブスターに切り替えだ。コケはアクアボールを連射しながらまだ飛んでいってるけど、特に問題もないから別にいいや。
「なっ!? 落とし穴だと?」
「コケの攻撃に気を取られ過ぎってな」
土の操作を使って地面の中にいたロブスターで地下から操作した土を利用して削るように穴を掘って移動して、羅刹の着地地点を誘導して地面を崩し、落下させる事に成功っと。意外と柔らかい土だったのと、操作した土の中に大きめな石が多数混ざっていて良かったよ。それにロブスターのハサミも穴を掘るのには役立った。まぁその分だけ土まみれになってるけどね。
ふふふ、そうして作った落とし穴に落ちた羅刹は、俺の目の前で盛大にバランスを崩して倒れている。それにチャージを開始したばかりの重脚撃も落ちた際に土に当たって不発となったようだね。では、追撃を加えていくか。
<行動値上限を31使用して『大型化Lv1』を発動します> 行動値 15/54 → 15/23(上限値使用:49)
<行動値を15消費して『万力鋏Lv1』を発動します> 行動値 0/23(上限値使用:49)
<『万力鋏Lv1』のチャージを開始します>
そして落ちてきた羅刹の恐竜の首を、大型化して魔力集中の効果をかけたロブスターのハサミで挟んでいく。羅刹は暴れてはいるけども、大型化した俺のロブスターや羅刹の恐竜でもまともに身動き出来ない狭さである。
気付かれないようにこんな地下で作業をするのはちょっと大変だったけど、マップに自分のコケとロブスターの両方の位置が表示されていたのは助かった。その表示と遠隔同調が無ければ無理な手段だったしね。
「……ちっ、手詰まりか。まんまと罠に嵌ったって訳か」
「ま、そういう事だな」
さてと現時点で羅刹のHPは4割を切ったところか。……ここから5割を削り切るには行動値は尽きたし、魔力値も心許ない。万力鋏の斬撃が完了したら、サヤに拾ってもらって空中で回復だな。
それで少し回復したら、ちょうど今少し離れたところに落下したコケを増殖させて使うのもありか。ん? あー、その必要もなさそうか。コケの視点で見えたけどサヤがちょうどイブキを斬り捨てたところだな。
「ぎゃー!?」
「……ちっ、イブキが殺られたか。だが、まだ負けてはいない!」
「そうでもないかな!」
「……な……に?」
そしてそこに竜の背にしがみつき、凄い勢いで急降下してくるサヤの姿がある。しかもその爪は眩い銀光を放っていた。あ、もしかしてさっきイブキを仕留めた際に最後まで連撃が行ってなかったのか?
「ケイ、これで仕留めるかな!」
「おうよ、サヤ!」
「……っ!? ……ここまでか!」
<『万力鋏Lv1』のチャージが完了しました>
俺の万力鋏のチャージも完了して挟み込んでいる羅刹の首を切断し、そこに竜の加速と落下の勢いを威力に加えたサヤの一撃が決まっていった。流石に羅刹もその攻撃に耐えられなかったようで、ポリゴンとなって砕け散っていく。
「おっしゃ、大勝利! サヤ、ナイス!」
「ケイこそナイスかな!」
行動値は本当に底を着いていたけども、なんとかイブキも羅刹も倒し切る事が出来た。……実際に戦ってみて思ったけども、イブキも羅刹も間違いなく強敵ではある。だけど、コンビでの連携という意味では俺らの方が上だったね。
というか、こういう言い方は良くない気はするけどもイブキが思いっきり足を引っ張っていた気がする。……羅刹との純粋な1対1ならばどうなったか、正直分からないな。とりあえず分かった事は遠隔同調も実戦で通用しそうである。まぁ単独の時に使うのはかなり危険だけど、連携して使うのならありだろう。
そして結構な経験値も手に入って、Lv16に上がる目前まで溜まったよ。すごい絶妙に上がりそうで上がらないところである。
そういや見てただけのアル達にも経験値は入ってたのかな? 同じPTでの戦闘状態の有無による経験値の取得量ってどうなってたっけ。……パワーレベリングは可能だから、多少経験値は減っても0って事はないはずだよな。ま、とりあえず大勝利という事で!
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