第17章 『???』を探そう

第501話 スクショのコンテスト


 晴れていると着実に気温が上がってきた中で、今日の授業は終わった。さてと今日は特に母さんからの買い出しのメッセージは届いていないので、すぐに家に帰ろう。ジメッとした湿度と今日の晴れで地味に不快感がある。


「よし、圭吾、アイスでも食って帰ろうぜ!」

「え、特に今日は用事ないからパス。てか、慎也は金ないんじゃ?」

「即答かよ!? いやいや、ちょっとした臨時収入があったから!」

「あ、今時珍しい現金でも拾ったのか? 電子マネーじゃ拾う事はーー」

「普通に小遣い貰っただけだっての!?」

「……え? お前、月末に貰ってるんじゃなかったっけ?」

「ふふん、水月が電子マネーを送ってくれたんだよ! ……来月分のゲームの月額費がヤバいって言ったら少し多めにな!」

「……それはゲーム以外に使わずに残しとけよ……」

「アイス1個ぐらいだったら、大丈夫だって!」

「……よし、今度水月さんに会ったら、その言葉をそのまま伝えとく」

「ふん、構わねぇって! 折角奢ってやろうかと思ったのに、それなら1人で買いに行くわ」

「……はいはい、ご自由にどうぞ」


 水月さんは慎也の金遣いの荒さを甘く見たのか? 少し余裕があるからって本来の用途とは違う使い方をし始めて、使い過ぎた挙げ句に、最終的に本来の用途の金額としては足らなくなるやつだ。

 あー、でもアーサーの件で慎也を関わらせたっぽいから、その辺の事も折り込み済みかもしれないね。今まで聞いてる感じでは慎也の親と水月さんは普通にやり取りはあるっぽいし、慎也の金遣いの荒さを全く知らないという事もないだろう。


 ……ま、放っておいて帰るか。正直なところ、アイス自体は食べたい気分ではあるから自腹で普通に買っても良いんだけど、昨日は近所のおばちゃんに晴香の件で捕まったから、避けたいのが本音である。……アイス1つでまた捕まるのは割に合わないからね。



 ◇ ◇ ◇



 慎也は放置して、無事帰宅! さてと今日はすぐにログインして、みんなが揃う前にちょっと実験でもやっていこうかな。あの新しく取得した万力鋏の捕縛性能は結構な応用範囲がありそうなんだよね。

 そんな時に携帯端末にメッセージが届いた事を知らせる通知が表示された。誰からだろう? 


「ん? 晴香からか」


 内容を見てみれば電車一本乗り遅れたので、少し帰る時間がズレるという事である。まぁ電車の本数、決して多いとは言えないから1本乗り遅れると場合によっては30分くらいはズレるもんな。

 とりあえず了解とだけ返事をしておいてっと。まぁそういう事ならハーレさんは少しログインは遅れるって事だな。


 あまり気にし過ぎても仕方ない内容なので、自室に戻ってササッと部屋着に着替えてから、冷房の電源を入れる。さぁ、今シーズン初めての冷房の出番だね。

 この時期では流石にまだないだろうけど、室温が上がり過ぎて強制ログアウトは嫌だし、それ以上に熱中症にもなりたくはないからね。この辺の室温管理はしっかりしておかないと、大惨事を招きかねないので要注意! 



 ◇ ◇ ◇



 そして、いつものようにいったんのいるログイン場面へとやってきた。今日の胴体部分は『第1回「Monsters Evolve online」スクリーンショットコンテストの開催予告のお知らせがあります。詳細は公式サイトかいったんまで』となっている。あー、今日の時点で例のスクショコンテストの正式な告知が行なわれるのか。


「いったん、スクショコンテストについて教えてくれ」

「はいはい〜。まずは開催期間のお知らせね〜。新しい群集クエストについては確認してるかな〜?」

「あれだよな、群集拠点種にスクショを情報提供として渡すやつと、何かを見つけるやつ」

「そうそう、その群集クエスト《各地の記録と調査・○の群集》ってシリーズね〜。全部の群集がこの群集クエストを終了するまでが事前募集期間になるよ〜」

「ふむふむ。え、もしかして早めに群集クエストを終わらせたら待ってないといけないやつ? ってか、先に終わったらスクショの提供はどうなんの?」

「それについてはご安心を〜。見つける方は先に終わったら待つ必要はあるけど、スクショの提供については全ての群集が終わるまで受け付けるからね〜」

「あ、そうなのか」


 ふむふむ、流石に群集ごとに受け付けの終了時期がズレるという事はなさそうで……あれ? でも、それって何の意味があるんだ? 一括でワールドクエストにでもして、群集に関係なく募集を受け付けた方が……あ、もしかして……?


「それでコンテストの詳細についてだけど、今回は初回という事でーー」

「群集毎に部門分け……か?」

「あ、気付いたんだ〜? うん、群集毎にそれぞれ優秀賞が3枚、入賞については枚数未定になる予定だよ〜。それと個人部門と、団体部門があるからね〜」

「……大人数で撮るのもありって事か?」

「そういう事だね〜。何を撮るかの指定は特になしでご自由にどうぞ〜。このコンテストに限っては置き換え処置や承諾は無しという事になるので、その点はご了承下さい〜」

「え、承諾無しなのか?」


 別にそれが嫌という訳でもないし、コンテストという性質上では仕方ない処置か? ふーむ、ちょっと気にしそうな人が出てきそうな予感がする。


「基本的には応募されたのは受賞したもの以外は公表されないから、情報的なのは心配いらないよ〜。受賞したものもプレイヤーの情報は削除する事になるからね〜」

「あ、そうなのか……。それならどこの群集の誰が写ってるかまでは判別出来ないんだな?」

「一応はそうなるね〜。ただ一発で分かる見た目のプレイヤーについてはどうしようもないかな〜?」

「……それは、このコンテストに限った話じゃない気もするけどな……」


 見た目でどのプレイヤーか分かる人とか、そもそもコンテストが無くても目立つという話である。あれ、でも群集毎に部門分けをするなら、それでどこの所属かは分かるような……。


「いったん、それだと部門分けの時点で所属が分かるんじゃないか?」

「うん、順番に整理して説明をしたいから、ちょっと落ち着こうか〜」

「あ、悪い」


 いかん、ついいったんの説明を遮って、先の説明を聞こうとしていた。うん、思っていたよりも俺自身が今回のコンテストは楽しみにしていたっぽい。ふー、落ち着いて順番に説明を聞いていこう。


「落ち着いてきたみたいだね〜。分かりやすく整理した情報があるから、それを見てもらおうかな〜」

「お、そんなのあるのか」


 そうしていったんに渡されたウィンドウを見ていく。えーと、どんな内容だ?


【第1回『Monsters Evolve online』スクリーンショットコンテスト要項】


 各群集において、受け付けを行ったスクリーンショットを運営の方である程度の数に絞る為に事前審査を行います。その事前審査を通過したスクリーンショットを、公式サイト及びゲーム内の特設ページで公開し、そこからユーザー投票による得票数を元にして群集ごとの各賞が決定となります。

 この投票の際にはどの群集のスクリーンショットなのかと、撮影者の名前は伏せて、ユーザー投票を行いますのでその点はご了承下さい。


 また投票時には全てのユーザーに『総合票』『個人票』『団体票』の3票が配布されます。3票全てを投票された方にはもれなく『転移の実×10』をプレゼントしますので、投票にはぜひご参加下さい。


・各部門の説明

 

『総合部門』


 ユーザー投票の中で『総合票』が最も多かったスクリーンショットに送られます。

 こちらは『個人部門』『団体部門』の総合した全てのスクリーンショットが対象となります。

 また、該当のスクリーンショットが『個人部門』ならその撮影者へ、『団体部門』なら参加登録者の全員に賞品が送られます。

 

 最優秀賞:1枚

   賞品:スキル強化の種、2個

 


『個人部門』


 個人で撮影したスクリーンショットを対象とした部門になり、各群集において個別に選出します。

 撮影内容については厳密な指定はありませんが、ゲーム内の手を加えていない景色や、偶然発生した珍光景などのスクリーンショットを推奨します。


 ・赤の群集

   優秀賞:3枚 

    賞品:スキル強化の種、1個


    入賞:枚数未定 

    賞品:各種アイテムの詰め合わせから好きな物を2個


 ・青の群集

   優秀賞:3枚 

    賞品:スキル強化の種、1個


    入賞:枚数未定 

    賞品:各種アイテムの詰め合わせから好きな物を2個


 ・灰の群集

   優秀賞:3枚 

    賞品:スキル強化の種、1個


    入賞:枚数未定 

    賞品:各種アイテムの詰め合わせから好きな物を2個



『団体部門』


 大人数で協力して撮影したスクリーンショットを対象とした部門になり、各群集で個別に選出します。

 撮影内容については厳密な指定はありませんが、人工的に手を加えたものや、ゲームの大人数での戦闘風景などのスクリーンショットを推奨します。


 団体部門につきましては、参加者の登録を行った上でスクリーンショットの撮影者が応募して下さい。受賞された際には、賞品は参加者全員へと配布されます。


 ・赤の群集

   優秀賞:3枚 

    賞品:スキル強化の種、1個


    入賞:枚数未定 

    賞品:各種アイテムの詰め合わせから好きな物を1個


 ・青の群集

   優秀賞:3枚 

    賞品:スキル強化の種、1個


    入賞:枚数未定 

    賞品:各種アイテムの詰め合わせから好きな物を1個


 ・灰の群集

   優秀賞:3枚 

    賞品:スキル強化の種、1個


    入賞:枚数未定 

    賞品:各種アイテムの詰め合わせから好きな物を1個


 ※全ての部門で選出されたスクリーンショットは宣伝へ使わせていただく事があります。その点はご了承下さい。



 これってかなり賞品が豪華だ!? 個人部門と団体部門は内容の指定自体はないけども、推奨内容があるんだな。それにユーザー投票の際には、どのスクショがどの群集の人かは分からないようになっているんだな。

 そして選ばれたスクショは宣伝に使われる可能性ありか。まぁラックさんが俺らを撮ったスクショも既に宣伝に使われてるし、今更といえば今更だね。


 これ、どちらかというと賞品のラインナップ的にあまり強くないサファリ系プレイヤーとかに合わせてるな。そして団体部門は強い人とそうでない人達が協力して行えるようにしている気がする。

 逆に個人部門は赤のサファリ同盟みたいに個人が強いサファリ系プレイヤー向きの設定になってる気がするね。

 それにこの内容なら、新規の人でもチャンスはありそうだね。スクショを撮る技術が必要にはなりそうだから、これまでのイベントとはまるで方向性が違うものになっている。


 ふむふむ、これは思った以上に面白そうだ。投票する事で課金アイテムの転移の実が貰えるのもありがたい。これはハーレさんがレナさんと計画していた土曜のスクショを団体部門で出すのも良いかもね。

 流石に総合部門は無理だと思うけど、優秀賞のスキル強化の種は欲しい。もし駄目でも入賞でアイテム詰め合わせも、器が有用だという事が分かった今ならかなり魅力的だね。


「なぁ、いったん。ちょっと質問」

「何かな〜?」

「これ、何枚応募しても良いやつ? それと団体部門って人数制限はある?」

「どっちも特には制限ないよ〜。あ、でも団体部門は実際には参加してない人が多いと運営の事前選考で落ちる可能性が高くなるかな〜? その辺の行動ログはちゃんとあるからね〜」

「あ、そうなるのか」


 流石に賞品のアイテム狙いで協力していない人を水増しするのなしか。まぁこの辺は当然の処置だな。


「もう1つ質問。今日これの告知があったけど、昨日の段階でスクショを提供してエントリーした人の扱いはどうなるんだ? 昨日の時点で団体部門表記ってあったのか?」

「昨日の段階では団体部門はまだだったね〜。今は受け付け可能になってるけど、その前にエントリーした場合は個人部門になってるよ〜」

「……なるほどね」

「ちなみに受け付け終了までなら、エントリーの取り下げも、エントリーのし直しも可能になってるよ〜」


 ふむ、それならこれから団体部門にエントリーし直す事も可能な訳か。まぁ今までに撮っていたスクショをエントリーしていたのなら、大体は個人部門にはなりそうだし問題もないんだろうね。


「よし、大体分かった。思った以上に楽しそうじゃん!」

「そう言ってくれるとありがたいね〜。スクショの内容に制限はないから、気軽に参加してね〜」

「おう! そのつもりになってきた!」


 思った以上に良い報酬だから、ダメ元でも良いから狙っていきたいところ。まぁ群集クエストで???を探すのもやらなきゃいけないから、その辺はみんなと相談しつつだね。


「それじゃスクショの承諾をお願いします〜」

「あ、そういや後回しにしてたっけ」


 とりあえずいったんからスクショの承諾用のウィンドウを受け取って内容をチェックっと。ふむ、流石に昨日は赤の群集と青の群集からのスクショが多いな。……まぁ予定通り基準を共闘クエストの前に戻すか。


「いったん、灰の群集以外のスクショは拒否にしといてくれ」

「あーそういえばそう言ってたね〜。はいはい〜、そのように処理しておくね〜。あと、これは今日のログインボーナスね〜」

「お、サンキュー!」


 本日分のログインボーナスも受け取ったし、これでひとまずここでする事は完了だね。それじゃ早速ログインして、色々やっていきますか! 色々と実験はしたいけども、まずはエンのとこでスクショの情報提供で貰える情報ポイントのレートと、スクショコンテストの応募方法を実際に確認しないとね。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る