第416話 別の移動操作制御


 とりあえずのメンバーは揃ったし、遂にこの大きな湖の中へと出発である。さてと夜中の湖探索となれば、一応聞いておくかな。


「ルストさんが発光を使ってるけど、俺も使っといた方がいい?」

「あ、ケイさん、お願い出来る?」

「ほいよっと」


 弥生さんに確認を取ったところ、必要そうな感じの返事だったので用意しておこうっと。ふむ、湖の中なんだよな……。それならば……。


「アル、水のカーペットは必要になりそう?」

「……水中ならいらないとは思うが、ケイ、どうする気だ?」

「いや、ちょっと移動操作制御の登録内容を変えようかと思ってさ。暗い水の中だし、懐中電灯的なやつをね」

「なるほど、そういう事か。まぁ、良いんじゃね?」

「よし、それじゃそうするわ」


 さてとまずは出しっぱなしで、アルのクジラの下にあった水のカーペットを解除してからだ。アルも湖の方に移動したし、もういらないね。


<『移動操作制御Ⅰ』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 57/57 → 59/59(上限値使用:1)


 水中で移動のみの水のカーペットを作ったところで役立つとも思えないし、移動操作制御は水のカーペット専用ではないからね。たまには行く場所に合わせて構成を変えるのも良いだろう。

 さて、久々に登録モードで移動操作制御の発動をしていこうっと。


<『移動操作制御Ⅰ』を登録モードで発動します。なお行動値の消費はありません>


 よし、これで登録が始まった。上限発動型のスキルは登録出来ないから、そこは要注意しないとね。


<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 59/60 : 魔力値 191/194

<行動値を4消費して『増殖Lv4』を発動します>  行動値 55/60


 これで土の操作と光の操作を……ってあれ!? これって並列制御が必要なんじゃ……? 今まで気にした事なかったけど、移動操作制御に並列制御を組み込む事って出来るのか……?


「……ケイ、どうしたのかな?」

「いや、ちょっと思いつきが上手く行くのか分からなくて考え中……」

「やってみればいいのさー! ケイさんはいつもやってる事!」

「そうだね。別に登録だけなら実際にスキルが発動する訳でもないしね」

「おう、やっちまえ、ケイ!」

「……うん。『ビックリ情報箱』の実演は気になる」


 まぁぶっつけ本番で試してみるのはいつもの事だし別に良いか。……っていうか、今思ったけどこれってもしかしたら……。

 うん、弥生さんの移動操作制御による暗黒空間を使った戦法にカラクリがあるのかもしれない。前にジェイさんと分析した時、弥生さんがまだ見抜かれてない要素があるというのが引っかかってたんだけど……。


「あらま、これはちょっと嫌な予感ー?」

「お、マジで? 弥生さん、そんな反応していいの?」

「あちゃー!? こりゃ失敗したかな?」

「……弥生さんもやらかしましたね?」

「うるさいよ、ルスト!」


 そう言いながらルストさんの木の幹で爪研ぎを始めるネコの弥生さんであった。シュウさんはのほほんとのんびりしているだけで止める気は無いようである。まぁこれくらいは日常なのかもね。

 それはそうとして、あの弥生さんの反応はその戦法の秘密に一歩近付いたという事か。ならば、実際にやるまでだ! 並列制御を選択!


<『並列制御』の登録は通常の倍の登録数として扱われます。ご注意ください>


 お、並列制御は倍の使用量にはなるけど登録可能なのか! ふっふっふ、つまり弥生さんの戦法は多分だけど闇の操作と何かのスキルを同時発動しているという事になる。……その辺の分析は後にして、とりあえず登録しておこうっと。


<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>

<行動値を19消費して『光の操作Lv3』は並列発動の待機になります>  行動値 36/60

<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>

<行動値を6消費して『土の操作Lv5』は並列発動の待機になります>  行動値 30/60

<指定を完了しました。並列発動を開始します>


 よし、これで登録は完了っと。さてとこれでうまく行けば良いんだけど、どうだろな? まぁ試して見るべし!


<移動に使用するスキルの登録を終了します>

登録内容:『土魔法Lv1』・『増殖Lv4』・『並列制御:光の操作Lv3・土の操作Lv5』

使用上限値:6


 移動操作制御の使用上限値は登録スキルの数の合計数になるけど、並列制御分は使用上限値が倍になって4か。まぁ合計6なら許容範囲……って、ここから発光も使うんだからそうでもないか? まぁいいや、使うだけ使ってみようっと。


「登録完了! 実験的に発動するぞー!」

「わくわく!」

「どんな風になるのかな?」

「んー、見た目的にはこれまでと極端には変わらなさそうな気もする?」

「まぁ既存のスキルの組み合わせだしな」

「……でも、興味はある」


 うん、期待してくれてるのは良いけど、多分それ程凄いことにはならないと思うよ。アルの言う通り、今まであったものを組み合わせただけだしね。

 でも、うまく行けばそれなりに便利なはず! さて発動していこう。


<行動値上限を4使用して『発光Lv4』を発動します>  行動値 57/59 → 55/55(上限値使用:5)

<行動値上限を6使用して『移動操作制御Ⅰ』を発動します>  行動値 55/55 → 49/49(上限値使用:11)


 まずは先に発光を発動しておく。これを先にしておかないと光の操作の段階で指定が出来なくて困るだろうしね。そして移動操作制御に登録した順番に小石を生成し、その小石に発光するコケを増殖させ、土の操作で小石を、光の操作で発光している光を支配下に置く。

 よし、ここまでは構想通りのものになった。後は小石を浮かせた状態で、以前ベスタにスポットライトを当てた時の要領で光を前方のみに方向を変えていく。……よし、大成功だ!


「おー!? 光量の強い懐中電灯っぽいね!?」

「これは便利そうだね、ケイ」

「へぇ、こりゃいいな」

「ケイさん、ナイスだね」

「……うん、これは湖の中の探索には便利そう」

「ふふん、どんどん褒めてくれていいぞ! ほら、こうやって向きも変えられるし、位置も動かせるからな!」


 まぁ初めは並列制御が移動操作制御に登録出来るのかっていう発想が完全に抜け落ちていたけども、いざやってみれば少しコストは上がったけど登録できる事は判明した。

 これはまとめ情報にあったりするのかな? 地味に盲点な気もするから、この情報はない可能性も否定は出来ないか。


 でも、弥生さんの反応からして確実に赤のサファリ同盟は知ってたね。よし、ちょっとした情報戦と行こうじゃないか。弥生さんの暗黒空間と闇の操作を活用して姿を隠し、大型化と通常時の二択を迫るあの戦法を暴いて見せる!


「弥生さん、移動操作制御に並列制御を組み込んでるよね?」

「あははー? なんの事やらー?」


 さっきの迂闊な発言で大体の事は察しているからね。まぁ思いっきり目の前で同じ系統の手段を見せたんだから、ここはちょっと強気に攻めてもいいだろう。

 さて、弥生さんのあれは暗闇で姿を隠し攻撃方法を絞らせずに奇襲する戦法である。となると、それを強化する方向性……。でも足場によっては移動の際に不意の音が発生する可能性も……あ、大体のカラクリの推測が出来た。なるほど、そっちを隠す必要もあった訳か。それに、これなら攻撃の方向も……。


「ふっふっふ、弥生さんの戦法の謎は解けた!」

「活き活きしていますね、ケイさん」

「ルストさん、俺は割と気になってたんだよ!」

「そうですね! 未知のものを知りたいという気持ちは分かりますとも!」


 流石はルストさんだ。全く同じ方向性という訳ではないけど、好奇心から色々やってみたいという点では通じるところがあるらしい。


「……シュウさん、ヘルプー!」

「弥生、これは流石に厳しいね。まぁ赤の群集の独占ではなくなるだけではあるから、そこまで気にしなくて大丈夫だよ」

「うー! ケイさん相手に思いっきり失言したよー!」


 ふっふっふ、油断は大敵なのさ! ということで、いざ推測発表と行ってみよう! これで間違ってたら大恥な気もするけども……。


「ずばり、弥生さんは土の操作で複数の小石を操作して、自分自身を含めて暗黒空間を闇の操作で制御して隠している! そこから状況に応じて縦横無尽に小石を足場にしつつ、攻撃を繰り広げていると見た!」

「あーあ、全部見破られちゃったかー!」


 お、弥生さんも観念したのか、すんなり認めたね。……まぁ見抜いたからといって、簡単に対応出来るとも限らないんだよな。……まぁ暗視か閃光を使えば良いんだけど、奇襲や乱戦にはかなり有効なんだよね。


「あ、そういう戦法だったのかな」

「そうなると、ハーレさんの散弾投擲や、俺のリーフカッターや、ケイの水流の操作が有効か」

「確かに範囲攻撃が有効そうだねー!」

「破る手段は色々ありそうだな」

「……対策を考えるのは良いんだけどさ、張本人の前で言っていいの?」

「「「「……あ」」」」

「……うん、それはヨッシの言う通り」


 ヨッシさんのツッコミには一切の反論の余地が無かったよ……。弥生さんも失言したけども、俺らは俺らで思いっきり失言しまくってんじゃん! 弥生さんのカラクリを暴いた事で、テンション上がって失敗した……。


「……ところで、一番遅刻した俺が言うのもなんだけどな……。その、出発しなくていいのか?」

「よし、そうしよう! さぁ、みんな出発するよー! ケイさんとルストで灯りはお願いね!」

「えぇ、分かりました。移動の配置はどうしましょうか?」

「先導はかなり良い灯りのあるケイさん達に任していい? ルストとわたしとシュウさんが最後尾で、真ん中はマムシさんと、アーサー君と、水月さんでお願い」


 マムシさんによる暗に脱線しすぎだという忠告をされてから、弥生さんが色々と誤魔化すように矢継ぎ早に指示を出していく。うん、俺らも弥生さんも今回は迂闊過ぎた……。まぁ今回はお互い様という事で。


 過ぎた事を気にし過ぎても仕方ないので意識を切り替えていこう。そろそろ真面目に出発しないといけないのも事実だしね。さてと折角だし、水中はアルの背に乗って行くのでいいかな?


「弥生さん、それで了解だ!」

「うん、よろしくねー!」


 アルたちからは特に異議もないので、これで問題はないだろう。さてと次は俺らのPTでの動き方を決めていかないとね。


「その状態でアルの背中の上から探索していこうと思うけど、みんなそれでいいか?」

「おう、問題ないぜ」

「了解です!」

「基本的にケイに照らしてもらいながら進めば良いのかな?」

「あ、そうだね。他の方向も確認は必要だけど、その方が色々と見つけやすそう」

「おう、それでいいぞ!」

「……うん。それでいい」

「それじゃそれで決定だな」


 そうして湖の中での行動方針も決まっていった。……なんだかまだ湖の中に入ってもいないのに、流石に脱線し過ぎたな。纏水の効果時間が勿体無い……。


「それじゃ改めて、今度こそ出発だよ!」

「「「「「「「「「「「おー!」」」」」」」」」」」


 弥生さんの号令に合わせて、みんなの気合も充分である。さて、湖の中で何が待ち受けているのか楽しみだね。今度こそ湖の中へ突入だ!




 そして俺のPTのみんなはアルの背に乗って、湖の中へ突入していく。まだ入ったばかりの場所なので浅いけども、夜の日という事もあり、夜目があっても薄暗い感じである。

 まぁ背中のコケが光っているので、周囲は視界良好だね。湖の水の透明度は高いみたいだ。お、一般生物の小魚の群れが目の前を泳いでいったな。ふむふむ、浅い所は水草も多いみたいだね。でも深い所は見通せないか。


「さーて、こいつの出番だな」


 さっき作ったばかりの発光するコケを応用した光量の強い懐中電灯みたいなものである。これで何処まで照らせるものか、楽しみだね!


 流石に現在地は浅過ぎるので、少し進んでからという事になった。少し移動しただけでも、ここが相当綺麗な水である事は実感出来たね。浅瀬は浅瀬で何かありそうな雰囲気だったけど、今回は俺らのグループは湖底がメインなので、水深の深いところを目指していった。


「おー! 小魚がいっぱいだー!」

「あっちにはカメか。海とはまた趣きが違うな」

「ケイのその灯りは便利だね」

「思った以上に使えそうだな、この懐中電灯モドキ」

「あ、懐中電灯モドキなんだ?」

「まぁ電灯ではないもんね」

「……電灯じゃなくて魔灯?」

「発光って魔力じゃなかった気がするし、何か違う気がするぞ」

「……それなら、やっぱり懐中電灯モドキ?」

「ま、俺はそう呼ぶと決めた!」


 そんな雑談をしながら、ようやく本格的な湖底の探索の開始である。首長竜もだけど、他にも何かあるかもしれないし色々と見ていこう。

 登録したばかりの俺の懐中電灯モドキも結構明るいから、これは結構役立ちそうだ。これで照らしながら、どんどん深いところへ進んでいこうじゃないか!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る