第410話 虫の林
3つのサファリ同盟の共同での湖探索という事で周りには沢山の人はいるけども、今回の俺らのPTの臨時メンバーはヨッシさんと同じハチの翡翠さんになった。
とりあえず挟んで捕まえたままのカブトムシを何とかしないとね。っていうか、硬いな、このカブトムシの角……。まずは識別してみるか。
<行動値を4消費して『識別Lv4』を発動します> 行動値 22/55(上限値使用:5)
『堅突カブトムシ』Lv4
種族:黒の瘴気強化種(堅牢突撃種)
進化階位:未成体・黒の瘴気強化種
属性:なし
特性:突撃、堅牢
お、大体予想通りの構成だな。ふっふっふ、突撃がメインならばもう捕まえた現状では俺が圧倒的に有利である。さーて、ここは手早く済ませようかな。
ふむ、堅牢ということは防御は高いだろうから高威力で一気に仕留めるか。って、暴れんな! あ、丁度いいところに岩があるね。よし、アルの上から飛び降りてその勢いも乗せて……。
<行動値を2消費して『鋏衝打Lv2』を発動します> 行動値 20/55(上限値使用:5)
<熟練度が規定値に到達したため、スキル『鋏衝打Lv2』が『鋏衝打Lv3』になりました>
カブトムシの角を掴んだままの左のハサミで岩に叩き込み、再び朦朧を入れた。思ったよりHPが減らなかったなー。むしろ岩のほうが砕けてしまったけど別に良いか。
「うっわ、えげつねぇ攻撃すんのな、ケイ……」
「ん? 折角だしフラムにもやってやろうか? 前のヘビの時は触りたくなかったけど、今のツチノコならやってやるぞ?」
「……いや、遠慮しとく」
意外と有効っぽい戦法っぽいんだけどな、この敵を捕まえたまま叩きつけるのってさ。これって、斬雨さんとか掴んで一緒にスキルの発動でもやれば結構凶悪な威力になるんじゃね?
その場合のダメージ判定が誰になるのかが気にはなるけど、これはこれでありだな。とはいえ、俺のPT内では組み合わせられない内容か。
「あ!? また危機察知だよ! ケイさん、右側から!」
「またかよ!?」
まだカブトムシも倒せていないというのに次が来るのか。これは一旦発光は解除した方が良いのかもしれない……。よし、こいつも捕まえてやろうっと。狙いやすいようにコケに視点を移して……よし、来たか!
<行動値を2消費して『鋏鋭断Lv2』を発動します> 行動値 18/55(上限値使用:5)
どうやら早めな突撃でロブスターの頭を狙ってたみたいだけど、少し下がる事で回避。そしてタイミングを見計らって、飛んできたやつをハサミで挟む! よし、角からは外れたけど胴体部分を挟んで捕縛は成功っと。
「ん? 今度のはカブトムシじゃなくてクワガタか」
「あー! ホントだね!?」
「カブトムシとクワガタか。まぁ夜の虫としてはありがちな敵だな」
「そうだね。……少し周りから聞こえてくるのに比べたら良いのかも?」
「あー、確かにそうかな」
「……うん、確かに」
周囲でも俺の他に襲われているプレイヤーはいるけども、そっちはまた違った虫っぽいもんな。うーん、ちょっと他の様子を見てみるか。
「うわ!? この蛾、分裂するぞ!?」
「こっちの蛾は毒の鱗粉をばら撒いてきやがる!?」
「蛾は焼け! それが一番早い!」
「お、マジか! よっしゃ! 『ファイアボール』!」
「蛾はうぜぇ! 『ファイアボム』!」
蛾の群れに襲われている人達もいるようだし、蛾にも分裂するヤツと、毒の鱗粉をばら撒くヤツが別個体としているようである。ほうほう、蛾には火が有効か。……でもその火の灯りに引き寄せされて数が増えているような気もする。
てか、捕まってるくせにカブトムシもクワガタも暴れるんじゃねぇよ! せーの、えいや! よし、左右のハサミで勢いをつけてカブトムシとクワガタを互いにぶつけたら少し大人しくなった。また朦朧が入ったかな。
「うわ!? でかいカミキリムシか!?」
「やめてー!? 葉っぱを噛み切らないでー!?」
「こいつ! 『強爪撃』! 硬!?」
「あー!? 葉っぱが食べられていくー!?」
こっちは蜜柑を光らせている木の人が50センチくらいはありそうなカミキリムシに襲われていた。他にも同様な光景があちこちであるみたいだし……よし、発光は切ろう。ここの林で発光はなしだな。
<『発光Lv4』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 27/55 → 27/59(上限値使用:1)
光源が敵を活性化させているみたいだし、これ以上不用意に敵を増やすのは得策じゃない。他の人達もどんどんと光源を消していっている。まぁ夜目でそれなりに視認は出来るから問題ない……って、また暴れんな!
周囲の様子を見ている間に行動値も少し回復したし、さっさと仕留めてしまおう。
「サヤ、『爪刃双閃舞』か『連閃』を頼む。魔力集中もありでよろしく!」
「え、それは良いけどどうするのかな?」
「サヤの攻撃に合わせて、このカブトムシとクワガタを俺がぶつける。こんな機会は早々無いだろうし、実験も兼ねてな」
「……そういう攻撃もありといえばありか」
「ケイさん、容赦ないねー!?」
「……このPTは色々と驚く事が多い」
「あはは、確かにね」
「……少し思う所はあるけど、分かったかな。連撃数の少ない方でいくね。『魔力集中』『連閃』!」
何かみんなに色々言われているけど気にしない! 下手に離して戦うよりも既に捕まえてる現状の方が楽だしさー。意外とハサミの拘束力が強いみたいで、暴れても逃げる気配ないんだよね。いや、逃げられないというのが正しいのか。
とにかくサヤの連撃系応用スキルが発動した。狙いやすいように連撃数の少ない連閃の方にしてくれたっぽいね。よし、サヤに合わせて連続攻撃といこうじゃないか!
<行動値を3消費して『鋏衝打Lv3』を発動します> 行動値 24/59(上限値使用:1)
「いくよ、ケイ!」
「おうよ!」
まずは右のハサミで捕まえているクワガタを、サヤのまだ弱い銀光を纏う左から切り裂くような爪の斬撃へと目掛けて叩きつける。うぉっと、まだ初撃だから威力は低めとはいえ弾き飛ばされるかと思った。
クワガタはHPが2割ほど減ったか。多少何度かぶつけた時に1割くらいは減ってたから、まぁ初撃としてはまずまずか。でも、サヤと打ち合うにはこっちもそれなりに強化は必要っぽいね。
<行動値上限を2使用と魔力値4消費して『魔力集中Lv2』を発動します> 行動値 24/59 → 24/57(上限値使用:3): 魔力値 190/194 :効果時間 12分
「あ、魔力集中を使うのかな!」
「ちょっと力負けしてたしな。次行くぞ!」
「うん!」
自己強化とどっちにするか悩んだけど、ここは魔力集中でいこう。まぁ俺ごと吹き飛ばされそうになればカブトムシとクワガタを離せばいいだけだしね。さて、次々行くぜ!
<行動値を3消費して『鋏衝打Lv3』を発動します> 行動値 21/57(上限値使用:3)
魔力集中で威力を強化したから、さっき程は打ち負ける事はないはず。次は右から切り裂いてくる少し銀光が強まった爪の斬撃に向けて、左のハサミで捕まえているカブトムシを叩きつけていく。おぉ、カブトムシに結構なダメージが入った。
うおっと、サヤの攻撃の衝撃で体勢を崩しかけた。うーん、魔力集中のお陰で挟んだままのカブトムシを放す事はなかったけど、踏ん張りが厳しいね。これは自己強化の方が良かったかな?
「ケイ、大丈夫かな!?」
「とりあえず今回は大丈夫っと。次は怪しいけど……」
「え!? それは大丈夫なのかな!?」
「ちょっと待って、手段を考える」
連撃が当たる事によって銀光の輝きが強くなっているサヤの攻撃だもんな。ちょっと連鎖増強Ⅰの効果のかかった連撃系応用スキルの威力を過小評価していたらしい。使ってるところは見た事あるけど、直接その攻撃って受けた事ないしね……。
さてとカブトムシの残りHPは6割か。ふむ、次の一撃さえ俺が踏みとどまれれば何とかいけそうだな。とはいえ、自力では厳しいか。そうなると……。
「ヨッシさん、悪い! 俺に氷の拘束魔法を頼む! ハサミが隙間から出せる感じで!」
「え、あ、うん! 『並列制御』『アイスプリズン』『氷の操作』!」
そうしてヨッシさんの作る氷の檻の中に閉じ込められた。あ、氷の操作と併用すれば檻の間隔は調整が出来るんだ? これは地味に知らなかったね。さて、ヨッシさんが檻の前面の間隔を広めにしてくれたからハサミは振り回せるし、極端にふっ飛ばされる事はないはず。
「ケイ、急いでかな!?」
「あ、悪い!」
そういや多少の猶予時間はあるとはいえ、連撃が止まれば連撃による威力強化の効果がなくなってしまう。実験を兼ねてやってる事だから、ここは連撃が止まるのだけは避けないとね……。
とりあえず、カブトムシもクワガタも暴れんな。また地面に叩きつけとこ。……よし、大人しくなった。
「サヤ、行くぞ」
「うん!」
<行動値を3消費して『鋏衝打Lv3』を発動します> 行動値 18/59(上限値使用:1)
3撃目のサヤの銀光が強まった左からの爪の斬撃に向けて、右のハサミでグッタリしているクワガタを叩き付けていく。くっ、やっぱり衝撃が凄い!?
サヤの3撃目の勢いに踏ん張り切れずに氷の檻の側面に激突した。やっぱり用意してもらって正解か。
「おーい、ケイ、大丈夫かー?」
「あーとりあえず大丈夫だ。どっちも逃してないし」
「ケイさん、あの状況で捕まえたままなのも凄いね!?」
「……うん、あれは凄い」
「あはは……。私はヒヤッとしたね」
みんなも声をかけてくれている。それにしてもすげぇ威力だ。これだけの威力なのにサヤはいつもよく上手く連撃を決められるな。あ、でもカブトムシもクワガタも浅い斬り傷こそあっても本格的に斬り裂かれてはいないのか。
「なんでそんなに吹っ飛ぶのかな……? 硬化でも発動してて硬い……?」
「あー、サヤ的にもいつも通りじゃないんだな。こいつら、傷もついてるしHPもちゃんと減ってるけど斬れてないぞ」
「あ、ほんとだ」
「ま、多分あと一撃ずつで終わりそうな気もするし、一気に行くか」
「うん、分かったかな」
連撃が途切れても困るので手早く会話を済ませ、トドメに移っていこう。もうかなりサヤの爪の銀光も強まっているので、次は両断して仕留め切れるだろう。俺の鋏衝打の勢いもダメージに上乗せされてるだろうしね。
「んじゃトドメ!」
「うん、分かったかな!」
<行動値を3消費して『鋏衝打Lv3』を発動します> 行動値 15/57(上限値使用:3)
トドメという事でまずは右のハサミのカブトムシの方をサヤの眩い銀光を纏う爪に叩きつけ、反動を受ける直前でハサミからカブトムシを放しておく。ハサミがサヤの爪に当たらないように絶妙な位置調整が必須だったけど、そこはサヤが調整してくれたね。
お、今度はカブトムシは両断されてHPが消し飛び、ポリゴンとなって砕け散っていった。よし、カブトムシ撃破!
<ケイが未成体・瘴気強化種を討伐しました>
<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>
<ケイ2nd未成体・瘴気強化種を討伐しました>
<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>
取得についてはいつもの内容だからスルーでいい。既にサヤは最後の一撃に動き出しているから、俺もやらないとね!
<行動値を3消費して『鋏衝打Lv3』を発動します> 行動値 12/57(上限値使用:3)
直前のカブトムシと同様に、今度は右のハサミで捕まえているクワガタをサヤの連閃の最後の一撃に合わせて叩きつける。さっきと同じ要領でサヤが俺のハサミに当たらないように位置調整をしてくれて、俺もタイミングに合わせてクワガタを放していった。
そしてカブトムシと同様にクワガタも両断されて、HPが全て無くなりポリゴンとなって砕け散っていった。
<ケイが未成体・瘴気強化種を討伐しました>
<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>
<ケイ2nd未成体・瘴気強化種を討伐しました>
<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>
あ、そういやクワガタの識別はしてなかった……。まぁ討伐報酬から考えて瘴気強化種だったのは確定だし、多分カブトムシと似たようなもんだろ。
それにしても連撃系応用スキルの最後の2連撃は凄まじかった。威力が初撃とは桁違いだもんな。あれと打ち合うなら、俺にも連撃系の応用スキルが必要そうだね。……もしそれをやるとしても優先順位はかなり先にはなるか。
「サヤ、お疲れさん」
「今のはもうしたくはないかな……?」
「だろうな。言い出した俺が言うのもなんだけど、使い勝手は良くない……」
「……そうなるよね」
何だか少し疲れたような声音のサヤだけど、まぁ気持ちは分かる。俺は吹き飛ばされないようにかなりの注意が必要だったし、サヤも俺のハサミに当てないように狙いを定めるので神経を使ったはず。あんまり気軽に使うような戦法でないのは間違いない。
「そういやアルたちは?」
「ん? 暇してたぞ」
「私は他のプレイヤーの援護をしてました!」
「……する事なかった」
「私はケイさんの支援だったね」
「まぁ、あの方法ならそうなるか……」
ヨッシさんには氷の檻を用意して貰ったけど、他のみんなは手を出す余地もないか。うん、そういう意味でもさっきの戦法は無しだな。
そして周囲を見回してみれば、まだ戦闘中の人も所々にはいるけど大半は片付いているようである。まぁそれほど強くはないって話だし、少し待てば移動も再開出来るかな。
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