第382話 2ndの強化
カキ氷を入れられるような器か。土の昇華まで行っていれば岩を形成して作る事も出来るけど、まだ昇華には辿り着いていないもんな。魔法で生成しても永続的に使える訳じゃないから、そもそも本格的な器としては使いにくい。
何か大きな木の実の中身でもくり抜いてみるか、大きめな貝殻とかでも探してみる? うーん、そのくらいの大きさの木の実ってヤシの実とか? 貝殻も探すならどっかの海岸とかかな。それか海エリアに行って探してみるか……。
「器なら竹林にでも行って竹でも切ってくればどうだ? 竹自体は天然産だから適度な大きさに切れば器として使えるぞ」
「あ、竹か! ちなみに桜花さん、竹の在庫とかあったりしない?」
「残念ながら品切れ中だな。あんまり持ち込みも多くねぇし……」
ふむ、桜花さんのとこに在庫があったのならトレードしていきたかったけど在庫なしでは仕方ない。それにしても器に竹を使うという手があったか。そういや前に掲示板で竹林があるってのは見た気もするね。
「それって何でなのかな? 需要はありそうな気もするんだけど」
「あー、単純に面倒なんだよ。地面の死角から急に生えて刺してくるタケノコと、獰猛なパンダがいるらしくてな」
「おー!? パンダだー! そしてサヤの出番だー!」
「確かにパンダの相手は私が適任かな」
「タケノコの方はハーレの出番だね」
「危機察知の出番だねー!」
「俺の水のカーペットも有効そうだな」
竹を採るのに、地面からタケノコが刺してくるんならそりゃ面倒だね。それに獰猛なパンダがいるとなれば単純に面倒ではありそうだ。
特にタケノコが地味に厄介なそうだけど、水のカーペットで地面から距離を取っていれば比較的安全だろう。それにハーレさんの危機察知やヨッシさんの腐食毒や氷魔法が有効なはず。
「あ、ちなみに雨の後はタケノコの攻撃が特に激しくなるらしいから要注意だな」
「そういう性質があるんかい!?」
確かに雨上がりはタケノコが生えてくるって聞いた事はある気はするけど、行動パターンに組み込まれてるとは思わなかったぞ。今は快晴だけど、さっきまで雨は降ってたんだよな。これは要注意か……?
「それで肝心の竹林って何処にあるのかな?」
「何ヶ所かあるって聞いたが、俺が知ってるのは赤の群集の森林の北側の平原か、ミズキの森林の南部の平原か、青の群集の森林の西部の平原だな」
「あー、なるほどね」
赤の群集の森林の北側は、共闘イベントの前編でティラノと戦ったエリアか。他の場所にはまだ行ってないし、アルがいない時にまだ行ってない他のエリアに行くのも微妙か。それにしても竹林は基本的に平原の中にあるっぽいね。
「みんな、どうする? アルがいない状態だし、赤の群集の森林の北部の方が良い気もするんだけど」
「前行った時は瘴気が酷かったもんねー! 私は行きたいです!」
「まだ共闘イベント中だし、向こうの方に行くのも今がチャンスじゃないかな?」
「サヤの意見に賛成。まだミズキの森林の臨時拠点化は解除されてないしね」
「あ、そうそう。そこの竹林はミズキの森林から西寄りの北側から出たらほぼ目の前らしいぞ」
「桜花さん、追加情報サンキュー!」
「良いって事よ。ついでで良いから竹を採ってきてくれると助かる」
「了解。情報量分くらいは採ってくるとするか」
桜花さんもサラッと要望を伝えてくるね。まぁ聞いている感じだと結構危険そうなので、注意していこう。……意外と場所は近いのに在庫が少ないってのも気になるしね。一応他にも理由がないか聞いておくか。
「ところで、竹の在庫が少ない理由って何か他にもあったりする?」
「ん? あー、ただ単純に需要と供給が釣り合ってないだけだ。灰のサファリ同盟の方で大量に欲しがってるからな」
「あー!? そういやラックが試しにはちみつレモンを作ってみるって言ってたー!? もしかして器に竹を使ってるのー!?」
「お、まだ試作段階で情報はあんまり話してないって事だったが、ハーレさんは知ってんのか。ま、そういう事だな」
「なるほどね」
ハチミツもレモンもあるんだから、それらを組み合わせてみるのはなんの不思議でもないか。でもあれを作ろうと思ったら流石に器は必要そうだもんな。それを竹でなんとかしようとしているんだね。そしてハーレさんの情報源は、ラックさんとリアル側で話題になったんだろうな。
灰のサファリ同盟はほんと色々な事をやってるね。もしかしたらそのまま齧るより酸っぱくない魔力値の回復アイテムが出来るかもしれないし、竹の調達を自分達で使う以外分も頑張るか。
「それなら採りに行ってる人はそれなりにいるのかな?」
「基本的にはマイペースのまったり勢が進化の軌跡との交換狙いで採りに行ってるぜ。強い人達はもっと遠くに行くか、見物メインだからそんなに量は入ってこないんだよ。ま、そういう事で死亡率は高めだ」
「なるほど、強い人達が積極的に行ってる訳じゃないんだな」
「ま、近いしそれほど広くもないらしいからな。何よりタケノコを避けたり防御しながら竹を切り倒すのが面倒らしい」
確かに強い人やあちこち行きたい人にとっては一度見たら充分でそれほど魅力はないのか。まぁ俺らも器確保の目的がなければ、一度眺めて終わりだったかもしれないけど……。
「ま、その辺の事情は別にいいや。あ、最後に確認。一般生物でアイテム化が可能な竹と、モンスターの竹がいるって認識で合ってる?」
「おう、それで問題ないぞ」
「よし、それだけ分かれば充分。みんな、竹を採りに行くぞー!」
「「「おー!」」」
「おう、行ってこい!」
目的地も目標も決まったので、桜花さんの桜の木の樹洞から出て移動開始だね。さてと、水のカーペットでみんな乗ってササッと移動していこうっと。
<行動値上限を2使用して『移動操作制御Ⅰ』を発動します> 行動値 60/60 → 58/58(上限値使用:2)
よし、準備完了。手早く移動を済ませて、竹の採集に行こうじゃないか。
「それじゃみんな乗ってくれ」
「あ、ケイさん! 今回は私はパスです!」
「ごめん、ケイ。私もかな」
「え、なんで!?」
いつもならそんな事はないのに突然のサヤとハーレさんの水のカーペットに乗るのを拒否って地味に傷付く……。俺、何か嫌われるような事したっけな……?
「サヤ、ハーレ、ちょっと説明不足だよ」
「あっ!? ごめん、説明が足らなかったかな!?」
「あぅ!? ごめんね、ケイさん!?」
「……どういう事?」
あれ、どうやら嫌がられた訳じゃなくて何か別の理由があるようだ。そういやよく見たらハーレさんはクラゲで、サヤは竜でログインしてるのか。今日の合流した流れが流れだったから気付かなかった。って事は、クラゲと竜を鍛えたいからかな?
「えっとね、私は竜の浮いている状態で風魔法での推進を試してみたくてね」
「私はクラゲに移動操作制御を取らせたいのさー!」
「あー、なるほど。そういう事か」
つまりはサヤもハーレさんも移動絡みの強化をしたいって事なんだな。って、サヤは風魔法はいまいち育ってないんじゃないか?
「サヤ、風魔法のLvは高くなかった気もするけど効果あるのか?」
「ケイ、忘れたのかな? 私も魔法砲撃は取ったんだよ?」
「あ、なるほど。竜の尻尾を始点にして後方に放つのか」
「うん、そうなるかな。まぁ試してみないと分からないけどね」
ふむふむ、地面に接している状態なら微妙かもしれないけど竜に乗って浮かんでいるのであれば生成量の増えて指向性があるウィンドクリエイトなら意味があるかもしれない。うーん、でも浮いている場合だとどうなんだ?
「そういう事だから少し試してみても良いかな?」
「おう、良いぞ!」
「どうだろねー!?」
「うーん、クマも乗ってるし微妙な気もするけど……」
「ヨッシのその意見も分かるんだけど、それを確認してみるために試してみないとね」
「確かにそれはそうだね」
魔法砲撃での風魔法の利用は見たことないから、どうなるのかは不明だもんな。まぁこれで魔法砲撃での風魔法が使えるなら、俺のロブスターの推進力として使うのもありだな。
今の分かっている範囲でも風の操作で瞬発的に加速する事は出来るから、可能性は充分ある。うん、ここはやっぱり実験あるのみか。サヤもクマを竜の上に乗せて、体勢を整えている。水流の操作で流す時の波乗り状態だ。
「それじゃいくよ! 『魔法砲撃』『ウィンドクリエイト』!」
「おー!? 竜の尾から風が噴射してるー!?」
「でもあんまり進んではないね?」
「……これはクマの重量分で推進力不足かな……?」
「それなりに風量は出てるから、多分そうみたいだな」
うーん、完全な失敗とは言えないけど、実用段階とも言い難い。魔法砲撃の効果によって確実に生成量は増えているけど、竜自体が今は停止というか滞空状態だしクマの重量も含めて反動に耐えきってる感じだね。
「うーん、どうにか使い勝手は良くならないかな……?」
「移動しながらの補助くらいなら使えるんじゃないか? それかクマを小型化して軽くさせてみるとかどうよ?」
「あ、小型化! ケイ、それはありかもしれないかな!」
「お、サヤ、乗り気だね?」
「それじゃサヤをどこかの岩の隙間に嵌めに行こうー!」
「あっ、小型化を取るならそうなるのかな……?」
「まぁポイントでも良いけど、明確に条件が分かってるしな」
無駄にポイントを使わなくても、小型化なら5分間どこかに嵌ってれば良いだけなんだから比較的簡単な取得である。
問題はサヤが嵌まれるような場所があるかだけど、これについては俺が岩の操作で岩を動かせば良いだろう。というか、乗り気だったサヤも嵌まるというのを聞いて若干乗り気が薄れた気もする。まぁ5分間、まともに身動き取れない状態になるのは難色を示しても仕方ないか。
「その前に実際に推進力になるか試してみたらどう? ケイさんも同じ条件で風魔法はいけるよね?」
「おう、スキル的にはな。でも多少の差異はあると思うぞ?」
「ケイ、お願い出来るかな? 一応竜のステータスは魔法寄りだから、ケイほどじゃなくても参考にはなると思うんだ」
「ほいよ。そういう事ならやってみるか」
サヤの竜は魔法寄りに進化させたからね。あまり現時点では活用しきれていないけど、それを活用する為にもここで強化していくのは重要だろう。
共闘イベントの大筋は終わったけども、まだイベント期間中だしね。こういう合間の期間で色々と育てていきたいところである。さてとサヤの要望通り、俺も魔法砲撃を使った風魔法を使ってみるか。
<行動値上限を1使用して『魔法砲撃Lv1』を発動します> 行動値 58/58 → 57/57(上限値使用:3)
<行動値1と魔力値4消費して『風魔法Lv1:ウィンドクリエイト』を発動します> 行動値 56/57(上限値使用:3): 魔力値 190/194
これで魔法砲撃による砲撃化は出来た。さてと部位指定はどうしようかな……? 地味に背中のコケと、ロブスターの左右のハサミと、頭部というか口と、尻尾が選択できるんだよな。尻尾は使い道はなさそうだから除外として、頭部を使ってみる……? 実験も兼ねてるし、左右のバランス的には良さそうだから頭部でやってみるか。
始点の指定は頭部にして、砲撃化したウィンドクリエイトを発動! さて、これでどうなる?
「おー!? ザリ……ロブスターの口から風が吹き出てきたー!?」
「でも微動だにしてないね。それにしてもケイさんの魔法砲撃って口も指定出来たんだ。そういやサヤは魔法砲撃の指定場所はどうなの?」
「えっと、私はクマが両手と口で、竜が口と両手と尻尾かな。種族によって指定出来る数は違うみたい」
「あ、そうなんだ」
「ちなみにコケなら核のみだな」
「地味にコケのみだと魔法砲撃とは相性は良くないんだね?」
「そうかもな。核の位置を教えるようなもんだし」
核を潰されたからといって即座に倒される訳じゃないけど、核の位置がバレると周りのコケを潰しやすくはなるからね。そういう意味ではコケ単独での場合だと魔法砲撃は非常に相性は悪いだろう。
でも、ロブスターと一緒の状態の俺ならそれほどそれは弱点にはならない。まぁこの辺は組み合わせ次第ってとこか。
「ケイ、その状態で軽くジャンプするとどうなるのかな?」
「あー、まぁ普通に踏ん張れてるけどそれなりに勢いはあるしな。それもやってみるか」
「うん、お願い」
「ほいよ」
本命はこれが推進力になるかどうかだしね。とりあえず軽くジャンプをしてみて、効果の程を試してみないといけない。せーのでジャンプ!
「……あ」
「「「あ……」」」
「そんなに効果時間は長くないみたいだな?」
桜花さんのそんなツッコミが入ってきた。……うん、まぁ効果時間切れと同時にジャンプしたって何の意味もない!? よく考えれば昇華してない生成系の魔法がそんなに長時間使える訳が無いよね……。
「気を取り直しもう一回!」
<行動値1と魔力値4消費して『風魔法Lv1:ウィンドクリエイト』を発動します> 行動値 55/57(上限値使用:3): 魔力値 186/194
今度は砲撃化して発動すると同時にジャンプをしていく。お、今回はうまくいったか?
「それなりに勢いはあったけど、墜落したね」
「……飛距離は2メートルくらいかな?」
「……単独で飛べる訳じゃない俺には無理だと分かった」
「でもサヤの竜なら使えそうだよねー!? クマを小型化すればだけどー!」
「それもそうかな。……竜の大型化じゃ駄目かな?」
「それは風の昇華がないと無理じゃないか?」
「うっ、確かに。流石に風の昇華までは無理かな……」
改めて実験してみたものの、多少の推進力にはなるけど一気な加速に使いたいなら昇華が必須。もしくは魔法砲撃のLvが上がれば多少効果は違うかもしれないね。とりあえず魔法砲撃は解除しとくか。
<『魔法砲撃Lv1』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 55/57 → 55/58(上限値使用:2)
よし、解除完了っと。それはそうといつの間にやら当たり前のようにハーレさんが浮かんでいるけど、そっちはどんな調子だろう?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます