第13章 あちこちを探索しよう:雪山編
第379話 いったんに質問
今日の授業も終わり放課後になったので適当に慎也と雑談しながら下駄箱へと移動していく。特に学校に居残ってする事も無いからさっさと帰ろうっと。
「うっわ、土砂降りじゃんか。あーあ、帰るのしんど……」
「……げ、傘がない……」
「ドンマイ、圭吾!」
「地味に笑顔を浮かべてんじゃねぇよ!」
「ぐふっ!?」
誰かに傘を勝手に持っていかれたみたいで、地味に笑いを堪えている慎也にイラッときたので一発殴っておいた。……はぁ、傘が無いと家が近いとはいえ、この土砂降りだとずぶ濡れになるな……。
「で、圭吾どうすんの?」
「折り畳みの傘があるから、そっちを使う」
「折り畳み傘があんのかよ!?」
「おい、持ち歩くようになったの誰のせいだと思ってる?」
「……あ」
「……そういやあの傘、どうなった? まだ返してもらった覚えもないんだけど?」
「明日持ってきます!」
「……2本あっても邪魔だから、今度晴れた日に返せ」
「おう!」
折り畳み傘を持ち歩くようになったのは、慎也が勝手に俺の傘を持って行ったせいでびしょ濡れになって帰ったのが原因なんだよな。新しい傘を買うのも馬鹿らしいから、次に晴れる日までは家にあるビニール傘でなんとかするか。
「そんじゃまたな」
「おうよ!」
そして帰路についていく。話している間に少し雨も弱まったみたいだし、折り畳み傘でも大丈夫だろう。特に今日は母さんから買い出し依頼もないから、また雨が強くなる前にさっさと帰ってしまおう。
◇ ◇ ◇
特にトラブルもなく帰宅っと。流石にまだ晴香は帰ってきてないな。さてと、今日は特に何も用事はないからすぐにログインしようかな。折角だし、1時間くらいソロで遊んでおこう。
ログインするといつもの場所にやって来た。いつも通りのいったんの胴体部分には『共闘イベントでの一部の報酬の詳細に関してはいったんに聞いてね。それと任意ではありますがアンケートへのご協力をお願いします』とある。
なるほど、掲示板にあったやつはこれか。そしてアンケートについては例の模擬戦絡みのやつだね。
「毎度、ログインありがとうございます〜」
「おうよ。とりあえずアンケートに答えていってもいいか?」
「あ、ありがとね〜。それじゃ『模擬戦に関するアンケート』を始めるよ〜」
「ほいよ」
「まずは希望する方式を選んでね〜。一つ目は一対一の決闘型、二つ目は大人数でのバトルロイヤル型、三つ目はPT同士のチーム戦型、四つ目は速度を競うレース型、五つ目はプレイヤースキルを競う競技型となってます〜」
選択肢は5つあるのか。ふむ、どれも面白そうではあるけどここはやっぱり決闘型かな。っていうか、これは選択するのは1個だけか……?
「なぁ、いったん。これって複数回答は無し?」
「ごめんね〜。早めに実装したいみたいで、今回は1個だけに絞る予定なのさ〜」
「今回は……? って事は、後々実装される可能性もありか?」
「アンケートの回答次第だね〜。ちなみに複数回答をしたがっていたっていうのも回答結果として報告されます〜」
「そこの反応もアンケートかい! まぁそういう事なら1個に絞るけどさ……」
ふむふむ、とりあえず早めに1つは実装して後から全部実装される可能性もありって事か。それなら手っ取り早く欲しいものを選んでおけばいいかな。……ここは決闘型にしておくか。
「いったん、回答は決闘型でよろしく」
「方式は決闘型だね〜。それじゃ次の設問を行くよ〜」
「おうよ」
「次は模擬戦に関するイベントについてだね〜。一つ目はトーナメント方式の勝ち抜き戦でのイベント、二つ目は期間を区切っての勝利数による報酬型のイベント、三つ目は公式でのイベント化は希望しないとなっております〜」
これは模擬戦の方式に合わせたイベントを開催してほしいかどうかって質問か。うーん、戦いたいって気もある気はするけど、これってプレイヤーによって大きく分かれるとこだしな。
報酬での差がつきそうだし、対人戦は苦手って人も結構いるみたいだしね。ここは無理にイベント化してくれなくてもいいか。対人戦のイベントはこれからも競争クエストみたいなのがあるだろうからそっちでいいや。
「よし、イベント化は希望しないに一票」
「ほいさ〜。意外とイベント化は希望しない人が多いね〜?」
「まぁこのゲーム、対人戦がメインじゃないしな。対人戦には興味ないって人にも何人か会ったしね」
「なるほどね〜。貴重な意見をありがとうございます〜」
やっぱり大々的なイベント化は希望しない人は多いっぽいね。あ、でも競技型のイベントならちょっと見てみたい気もする。まぁ形式が決まらないとこの辺は何とも言えないか。
「それじゃ最後に何かご意見ありましたらよろしくお願いします〜」
「そうだね……。あ、折角だから観戦機能は欲しいかも。出来れば公開するかどうかは設定が出来る形で」
「観戦機能とその公開有無の設定だね〜。はい、伝えておきます〜」
「おう、よろしく!」
「それじゃアンケートはここまでね〜。ご協力ありがとうございました〜」
「どんなのになるかは楽しみにしてるからな!」
「それも伝えておくね〜」
よし、これでとりあえずアンケートは終わりだな。さてと、それほど使うつもりはないんだけど一応聞くだけ聞いてみようか。
「そういやイベント報酬にある『部位合成の種』ってのは何処まで自由度があるんだ?」
「えっとね、合成進化で合成出来るのは全部出来るよ。ただし、アイテムでの合成進化になるからステータス加算やその他の引き継ぎはないのでご注意を〜」
「へぇ? って言っても、合成進化はしたこと無いからよく分からん!」
「うーんとね、攻撃部位に指定出来るものの大半は合成可能だと思ってくれればいいよ。ごく一部には不可能な攻撃部位もあるけどね」
へぇ、大半の攻撃部位なら合成可能なのか。駄目な例としてはコケの核とかかな? あれを合成しろってのは流石にちょっと無理がありそうだしね。他に聞いておきたいのは……あ、これはどうなんだろう?
「そういう事なら、動物に植物の根とか植物の根に爪とかもあり?」
「変わった組み合わせではあるけど、可能だよ〜」
「マジか!? ならリスの脚に鋭い爪とかってのも?」
「うん、可能だよ〜。そのリスの場合なら、両手両足の内の1ヶ所から4ヶ所の範囲で指定が可能だね〜」
「……1ヶ所と4ヶ所での違いって何かある?」
「えっと、爪の大きさが変わるかな〜。少ない方が大きくなるね〜」
「なるほど、そういう仕様か」
ふむふむ、そういう仕様なのであれば昨日言ってたレナさんの、脚に鋭い爪を追加して攻撃力アップというのは可能なんだな。頭や尻尾を増やして魔法砲撃による単独発動の昇華魔法の強化もできるだろうし、物理攻撃の強化の為には鋭い攻撃部位を増やすという手もあるのか。
これは予想以上に幅広い活用方法と、プレイヤー毎の個性が出て来そうな強化だ。……ふむ、興味は少し湧いてきたけども、俺としてはスキル強化の種を使いたいんだよね。とりあえずどういう仕様か分かっただけで良しとしよう。
「もう質問は良いのかな〜?」
「あー、聞きたいことは聞けたから……あ、スキル強化の種の方は説明してもらえる?」
「問題ないよ〜」
「あれって使った時に、それまでに溜まってる熟練度ってどうなるの?」
「えっとね、仕様としては加算される熟練度は使用時のスキルのLvが次のLvに上がるのに必要な熟練度の最大値が加算されるんだよね〜。上がりたてでもLvが上がる寸前でも加算量は同じなんだ〜」
「……つまりどういう事? それまで稼いでた熟練度はどうなる?」
「うん、そのまま次のLv用に使われるから無駄にはならないよ〜」
「よし! それが聞きたかった!」
途中まで熟練度を稼いでたらそれが無駄になる仕様なら使いどころに悩んだだろうけど、そういう事なら手に入り次第使っても問題ない。手に入るまでに土の昇華を目指すには目指すけど、そこで間に合わなければスキル強化の種で土の昇華にしてしまおう。
「他に質問はあるかな〜?」
「今度こそないかな?」
「了解です〜。それじゃスクリーンショットの承諾をお願いします〜」
「ほいよ」
いつもにようにスクショの一覧を受け取って見てみれば、結構な枚数があった。あー、ヒノノコ戦のも遅れてだけど承諾申請が来てるんだな。お、これいいな。
ヒノノコ戦、最後の締めの俺が水流でみんなを流している所が上の方から連写で撮られている。この時はみんなも纏瘴や纏浄で瘴気制御や浄化制御を使っていたから、瘴気属性によって禍々しくなった銀光と温かい光と混ざり合った銀光が一枚毎に強くなっていく様子が見事に撮られていた。
撮った人のプレイヤー名は知ってる人ではないけど、これは結構気に入った。これは貰っておこうっと。
「いったん、この連写のやつ全部くれ」
「はいはい〜。これは地味に人気なんだよね〜」
「え、そうなのか?」
「映ってる人、結構多いでしょう〜? 今のところ、9割くらいの人が貰って行ってるよ〜」
「マジか。まぁ気持ちは分かる」
まぁ見事に迫力ある感じに撮れているので、人気があるのはよく分かる。俺のPTのみんなも全員映ってるし、みんなも貰ったのかな? うん、ハーレさんは間違いなく貰っているだろうね。
「他は全部許可にしといてくれ」
「はいはい、そう処理しておくね〜」
さてとこれで大体やることは終わったはず。ちょっと普段よりここでする事が多かったけど、決して無駄なことではなかったね。なんだかんだで説明が必要になってくる事はちゃんと説明してくれるのでありがたいもんだ。
「さてと、それじゃログインするよ」
「あ、まだ駄目だよ〜」
「え、まだ何かあったっけ?」
「ログインボーナスをまだ渡していません〜。はい、これどうぞ〜」
「……あ」
いかん、つい忘れていた。それほど多いポイント数でもないけども、貰わないのは勿体無いもんな。これは忘れずに貰っておかないとね。
よし、ちゃんとログインボーナスを受け取ったし問題なし!
「それじゃ今度こそログインだ!」
「あ、そういえば同調種になった事でログイン制限が解除されてるよ〜。どっちでログインするか選んでね〜」
「そういやどっちでもログイン出来るようになったんだった。まぁ、ここはコケで!」
「コケでログインだね〜」
ロブスターでも色々やってるけど、やっぱり俺的にはコケの方が本体ってイメージだしね。ログインするならやっぱりコケだろう。あえて変える必要も特にはない。
「それじゃ今日も楽しんで来てね〜」
「おうよ!」
そうしていつもより少し長いログイン場面でのやり取りを終えてから、いったんに見送られつつゲームの中へと入っていった。
◇ ◇ ◇
ゲームの中に入れば、今日は昼の日である。……でも思いっきりゲーム内では雨が降っていた。うわー、今日はゲーム内でも雨なのか……。
昨日ログアウトしたのは桜花さんの桜の木のすぐ側だから、桜花さんの木陰で雨宿りをさせてもらおうっと。まぁロブスターもコケも水は全然平気だから濡れたとこで問題はないんだけどさ。
さて氷の小結晶の調達を桜花さんに依頼したいとこなんだけど、どうやら桜花さんは今はいないっぽいね。とりあえず今のうちにログインボーナスを貰っとくか。
<ケイが『進化ポイントの実:灰の群集』を使用します>
<アイテム使用により、増強進化ポイント4、融合進化ポイント4、生存進化ポイント7獲得しました>
<ケイ2ndが『進化ポイントの実:灰の群集』を使用します>
<アイテム使用により、増強進化ポイント4、融合進化ポイント4、生存進化ポイント7獲得しました>
よし、これで今日のログインボーナスの確保は完了っと。ログイン状態を見てみれば、サヤはログインしてるけどヨッシさんとハーレさんはまだっぽいね。とりあえず、サヤにフレンドコールをして合流するかな。
「あ、コケの先輩プレイヤー!?」
「……はい?」
そんな声が後ろから聞こえてきたと思ったから振り向いてみれば、何やら緑色のボールみたいなのが転がっていた。え、イメージ的にはマリモみたいな感じだけど、これはなんだろう? 灰色のカーソルだけど、この名前には見覚えが……地味にあるようないような……?
「えーと、どちら様?」
「あ、前に岩でぶつかりかけたコケのプレイヤーです!」
「あー、あの時の!」
なるほど、そりゃ名前に見覚えがあるはずだ。でもそれならこれってコケだよな……? え、このマリモみたいな姿ってどういう事? そして俺を探してたみたいだけど何の用になんだろう。
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