第327話 後編の進捗状況


 なし崩し的にルストさんに引っ張られて移動して行く事になったけども、これが予想以上に速かった。少し前までのサヤと水月さんがアルのクジラを背負った時よりも速いし、ベスタとサヤの2人体制で牽引した時よりも遥かに速いようである。

 とは言っても、サヤと水月さんで背負った時はバランスの関係で最高速度は出ていなかったみたいだし、サヤとベスタの2人で牽引した時は成長体だったから比較対象としては微妙かもしれないけど。


「うひゃー!? 速いねー!?」

「ハーレさん、落ちないように気を付けてくださいね?」

「大丈夫さー! あ……」

「ハーレ!?」

「やっぱりそうなりそうな気がしたよ! 『並列制御』『アイスプリズン』『氷の操作』!」

「おー! ヨッシ、ありがとね!」

「ハーレ、油断し過ぎ。気をつけようね?」

「はーい!」


 アルの巣の中で仁王立ちをしながら速さを楽しんでいたハーレさんだが、頭に被っているクラゲに風が入り込んだようで、巣から落ちて後方へと置き去りにされていく。……かと思ったら、ヨッシさんがハーレさんを氷の檻で確保して、操作して巣へと戻していた。ハーレさんが飛ばされて即座に樹洞から出てきての素早い救出劇、ヨッシさん、ナイスだね!

 氷の操作は移動速度を優先させたようですぐに効果は切れていたけども、そういう使い方もありか。ふむふむ、土の拘束魔法は防御にも使えるし、拘束にしか使えないという事はないんだな。


<『浄化制御Lv1』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 51/53 → 51/54(上限値使用:4)


 あ、浄化制御の効果が切れた。でも纏浄による発光での視界向上は変わらないから、これは浄化属性の方の効果みたいだね。

 それはともかくとして、俺もちょっとしたきっかけで落ちないように気をつけておこう。ハサミでアルの根を挟んでおいてっと。よし、これで大丈夫だろう。でも一応何か手を打ったほうが良さそうな気もする。


「アル、これは風除けを作った方が良いか?」

「あー、それもそうだな。……って、ケイ。今はスキルの発動は無理だろ?」

「あ、そういやそうだな……」


 現在、灯り用の光源小石を操作しているから追加でのスキル発動は無理だね。うーむ、こういう時に移動操作制御の枠がもう1つ欲しいところ。……まぁ無い物ねだりをしても仕方ないから、あるものだけで頑張るか。


「1個前の転移地点まで戻ったら、発動するスキルを調整するか」

「それでしたらもう辿り着きますよ?」

「もうかよ! いや、丁度いいけどさ!」


 思った以上の移動速度で1つ前の転移地点まで戻って来た。いくつかのPTの人達が休憩したり、エンの分身体と戦っているようある。

 軽く話を聞いてみたけれど、ここのエンの分身体は復活しても強くはならないらしい。不動種相手の戦闘練習としては丁度良いとの事だ。行動パターンは同じみたいなので倒す手順の練習はこれが良さそうかな。


 まぁここの場所に特に用はないので軽く挨拶してから素通りだ。ここから北へ戻って、ザックさんと遭遇した転移地点から東に行けば海エリアへ続くルートだね。その途中から海水の地下湖があり、その先の転移地点がシアンさんやソウさんと合流して経路確立させた場所になる。


「とりあえず、風除けの為に発動し直すぞ」

「ケイさん、よろしくねー!」

「あ、アル。樹洞投影もお願い出来ないかな? 私は樹洞の中の方が移動は安定するしね」

「あー、そういやそうか。おう、分かった」


 アルも滑らせるための根の操作と水の操作の再発動の為に調整をしていく。っていうか、アルも纏浄中だから地味にHPが減ってるな。……これはもう時間が勿体無いとか関係なく解除しといた方が良いのかも。


「アル、纏浄は解除しとかないか? 流石に移動でもダメージ食らうのは面倒だぞ」

「……それもそうだな。サヤ、ヨッシさん、ハーレさん、纏浄での攻撃は任せて良いか?」

「それは任せといてかな!」

「うん、そうだね。任せておいて」

「私達でその辺はなんとかするさー!」


 ということなので、纏浄は解除しておこう。1時間ぶっ続けで強敵と戦う予定がないのであれば、このデメリットは邪魔でしかないからね。うーん、使い道はあるけれど使いどころは限られるな。


<纏属進化を解除しました>

<『支配ゴケ・纏浄』から『支配ゴケ』へと戻りました>

<『傀儡ロブスター・纏浄』から『傀儡ロブスター』へと戻りました>

<『浄化制御』『浄化の光』が使用不可になりました>


 よし、解除完了。視界は少し悪くはなったけど、それでも金属塊のある転移地点でなければ基本的に問題はない。そしてアルも同様に解除して、纏っていた浄化の力が消えていく。これで纏浄も纏瘴も日付が変わるまでは使えないけど、これは仕方ない。まぁ今日は必要なさそうだしね。

 さてと移動再開に向けて小石の灯りの再生成と風除けの準備をしておこう。


「『樹洞投影』『並列制御』『水の操作』『根の操作』!」

「ふむふむ。何度か見せてもらいましたし、あちこちで類似のものを見かけはしますが、この移動方法も面白いですね。私は普通に走ってますから、滑らせるのは発想になかったんですよね」

「ルストさん、走るの早いもんね!」


 俺らからすると蜜柑の木のルストさんがあの勢いで走ってる方が不思議だけどね。育てる人によって随分と方向性も変わるものである。うーん、完全物理特化型のコケとか居るのかな? もし居るのなら会ってみたい気もする。


「ちなみにこれの原型は私達で考えたんだよー!」

「ほう? そうなのですか。私は物理に特化させていますし、2ndもいませんので興味深いものです」

「ルストさんって2ndいないのー!?」

「いつかは作ろうとは思っているのですが決めかねていましてね。どうやらまだ未解禁のエリアもありそうですし、そこで見つけた種族というのもありなのではないかと思っているところです」

「そういやペンギンがいるかもって話だったもんね!?」

「えぇ、そうなりますね! どのような種族がいるのかが今から楽しみですとも!」


 あー、ルストさんに2ndがいないって聞いて意外な気はしたけど、理由を聞いて納得。要するに選択肢が多くて悩んでいるのと、まだ未確認の種族をやってみたいっていう2つの理由か。

 まぁ使える種族が多いけどオフライン版と違って全ての種族でやり込むって事が難しいから、悩むのは仕方ないのかもね。……って、脱線してないで準備しないと。


<行動値上限を2使用して『移動操作制御Ⅰ』を発動します>  行動値 51/54 → 51/52(上限値使用:6)


 まずは水のカーペットではなく、ただの水球を生成。形を変えるのは出発の直前でいいや。さて、次!


<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 50/52(上限値使用:6): 魔力値 143/182

<行動値を4消費して『増殖Lv4』を発動します>  行動値 46/52(上限値使用:6)


 あ、ヤバ!? 増殖のLvが上がったからそれで使ってみたけど、これは確実に増え過ぎた!? ロブスターの表面に収まりきらずに地面にまで増殖していってるし……。状況によってはこれもありだけど、通常使用ではLv3で充分みたいだね。

 それにしても纏浄のデメリットで思いっきり魔力値が減ってるな。コケの群体数に関しては今ので一気に解消したけども。


<行動値を3消費して『土の操作Lv5』を発動します>  行動値 43/52(上限値使用:6)


 さてこれで準備完了である。ここまで来た状態に戻して、ルストさんの前に水の防壁を用意して風除けにしていく。


「あ、ケイさん。私には風除けは必要ありませんよ?」

「え、そうなのか?」

「その風除けは移動操作制御を使ったものでしょう? 敵に当たれば効果が消えますし、前からの敵は私が対処しますので問題ありませんよ」

「あー、そっか。そういう事なら、ルストさんに任せた。ハーレさん、ヨッシさん、その場合は支援よろしく」

「了解です!」

「うん、わかったよ」


 敵の迎撃についてはルストさんとハーレさんとヨッシさんに任せるという事で。サヤは手間取った時の救援でもいいだろう。


「ケイ、私も攻撃は出来るよ? その為の竜だからね」

「まぁ、サヤは手が足りない時に頼むよ。まだ遠距離は苦手だろ」

「うっ、それはそうかな……」

「サヤさん、苦手なものを焦る必要はないのですよ。焦るほどにミスは増えますからね」

「……ルストさん」

「そうですとも! 焦って無茶な事をして、折角見れたはずの景色を見逃した時の悔しさといえば! えぇ、あの日の出を見ようと岩山を登っていた時に急ぎ過ぎてまだ慣れていなかった速度で走り続けたせいでバランスを崩し日の出の見れない西側へと滑落していった時の悔しさといえば! あの時焦り過ぎず慎重に進んでさえいれば私一人だけが見れずに岩山の麓で敵と戦うこともなかったのですよ。皆は他のエリアへ行きたいという事で再度日の出を見に行く機会はまだありませんし、あぁどうしてあの時に無駄に焦ってしまったものかと今でも後悔しておりますとも! ですから焦らずに段階を踏むというのは大事なのですよ!」

「…………うん、分かったかな」


 何かサヤの沈黙が少し長かった気もするけど、とりあえず納得はしたようである。まぁルストさんが早口でなんか後悔してる的な事で結論としては焦るなと良い事を言っているけど、サファリ系的なハイテンションでちょっと台無し感はある。サヤの少しの沈黙の気持ちは分からないでもない。



 そうしてスキルの切り替えに時間がかかりながらも、再度出発となった。次の転移地点はザックさんが居たとこだけど、今もまだいるんだろうか? まぁ、そう時間もかからないだろうし行けば分かるか。


「あ、そうだ。今のうちにクエストの進捗確認しといていいか?」

「あー、そういや確認してなかったな。確認は任せた」

「ほいよ」


 という事で、移動中の今のうちに確認しておこう。少しだけ水の防壁と小石の灯りの制御も意識しつつ、クエストの詳細表示していく。まぁ精密な操作が必要な状況ではないので、多少ズレても問題ないだろう。さて、今はどうなってるかな?


【共闘イベント『瘴気との邂逅』】


 ワールドクエスト《この地で共に》の進行状況


 【赤の群集】

  常闇の洞窟、金属塊の修復支援 3/13

  ボス撃破 0/5


 【青の群集】

  常闇の洞窟、金属塊の修復支援 3/13

  ボス撃破 0/5


 【灰の群集】

  常闇の洞窟、金属塊の修復支援 4/13

  ボス撃破 0/5


  ボス戦への参加回数:7(使用済み:2)



 ふむふむ、予想はしてたけどもボスの撃破はどこも未達成か。そして金属塊の修復は何ヶ所かは成功していると。まぁこれは一斉に修復させる予定なので、特に気にする情報でもないか。

 そういやこれって、破壊されたらカウント数は減るんだろうか? 確認はしてないけど、減る可能性はありそうだよな。まぁ、ここら辺は明日以降の頑張り次第だね。


「正直、見た意味あんまり無かった気がする」

「……よく考えたらそうだな。明日一斉にやる予定なんだから、意味はないか……」

「はい!」

「どうした、ハーレさん?」

「エン……っていうか、群集拠点種がボスにカウントされてない理由が気になります!」

「あ、それは確かに気になるかな?」

「何かありそうだよね?」

「そういえばそうですね。……倒す必要はないとか、そういう事なのでしょうか?」

「……どうなんだろな?」


 確かに気にはなるんだよな。ルストさんが言うように倒す必要がないから、ボスとして数えられていないという可能性は充分ありそうだしね。まだまだイベント期間中に入手した大量の進化ポイントがある訳だし、その用途も何かあるはず。

 もしかしたら群集拠点種の正常化に大量の進化ポイントを提供するという可能性もない訳じゃない。一度その手の提供要素はあったしね。まぁ推測は出来ても、推測止まりになるんだけどね。


 あ、そういや今の進化ポイントってどうなったんだろ? 前編に比べると圧倒的に敵の数は少ないけども、常闇の洞窟の道中で倒した敵の分だけ進化ポイント増えてるはずだしね。まずはコケの方から一応確認しておこうか。


【進化】


 増強進化ポイント 1527P(共闘イベント開始後の加算:1372P)

 融合進化ポイント 1479P(共闘イベント開始後の加算:1363P)

 生存進化ポイント 1542P(共闘イベント開始後の加算:1369P)


 コケの方は瘴気の凝晶と浄化の輝晶で思いっきり使ったから、結構減ってるね。とはいえまだまだ大量にある。うーん、最終的にこれがどう変わるのかが非常に気になる。まぁ考えても答えは出ないし、ロブスターの方も見てみるか。


【進化】


 増強進化ポイント 2389P(共闘イベント開始後の加算:2375P)

 融合進化ポイント 2413P(共闘イベント開始後の加算:2366P)

 生存進化ポイント 2423P(共闘イベント開始後の加算:2369P)


 見てみたものの、前に確認した時の数値を覚えてないからよく分からん! なんとなく増えている気はするけどさ。まぁ使ってないから減ってはいないはず。


「危機察知、反応あり! 前から来るよ!」

「おっと、危ないですね。おや、クモですか」

「これも使っていかないとね。『並列制御』『エレクトロボール』『エレクトロボール』!」

「クモはサヤの天敵さー! 『魔力集中』『強投擲』『強投擲』『強投擲』!」

「……これは任せても良いかな?」

「良いと思うぞ」


 そして途中で現れた光るクモはあっという間にHPが削られていき、ポリゴンとなって砕け散っていった。


<ケイが未成体・瘴気強化種を討伐しました>

<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>

<ケイ2ndが未成体・瘴気強化種を討伐しました>

<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>


 識別をしていなかったから敵の情報は分からなかったけど、どうやら普通の未成体だったようである。まぁこの瞬殺ぶりから見てレベルは低かったんだろうね。


「みんなお疲れ様かな」

「ふっふっふ! 強投擲がLv5になったよー!」

「お、ハーレさん良かったな」

「あと狙撃をLv1上げれば『凝縮破壊Ⅰ』だねー!」

「あと少しだね、ハーレ」

「サヤは『連鎖増強Ⅰ』まではあとどのくらい!?」

「私も後は爪刃乱舞をLv1上げればかな」

「サヤももう少しなんだ?」

「サヤ、どっちが先に取得するか勝負だよ!」

「受けて立つかな!」


 どうやらサヤもハーレさんもあと少しで操作系の昇華に相当する応用スキルの強化スキルの取得のようである。ヨッシさんもアルも昇華したし、みんなパワーアップしていくね。

 俺も土の操作の昇華狙っているけど、Lv5になってそれほど経ってないからまだ時間はかかるかな。


 そうしている内に次の転移地点へと辿り着いた。意外と他の人とすれ違う事が多くて、思ったより時間がかかったけどね。

 どうやら俺らがいた方向に向かっている人が結構いるみたいだけど、どうなってるんだろ? 俺らが居たとこまで行くのかな? それとも他に何かあるんだろうか。

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