第288話 支配していた瘴気強化種
新たに現れた……いや、出現自体は初めからしていたね。ウサギの角が今目の前で巨大化していくカタツムリになったんだもんな。見た目は普通のカタツムリの殻を細長く尖らせた感じで、中身の色はどす黒く禍々しい色合いをしている。……苦手な人は苦手そうだな、この見た目。
それにしても登場時で既にHPが半分も削れているけど、これってどうなの? プレイヤーの支配進化だと支配していたのを倒せば弱体化するって話だけど、そのままそれをボスも同じと考えていいのだろうか。……駄目な気がするね。
「隙だらけさー! 『強蹴り』! うわっと!?」
「レナさん大丈夫かな!?」
「こりゃ厳しいねー? まさか弾かれるとは思わなかった!」
巨大化していく角というかカタツムリにレナさんが蹴りを叩き込むけれど、周囲の吸収されていく瘴気が攻撃を阻むように弾き飛ばす。吹き飛ばされたレナさんをサヤが受け止めていた。……そして周囲の雑魚を吸収したカタツムリはあっという間にHPが回復していく。思った以上に回復が早いし、このペースならあっという間に全快だろう。
「やはり回復が早いですね。ケイさん達は今のうちに行動値と魔力値の回復を。斬雨!」
「わかってらぁ! 『断刀・風』!」
ウサギの追撃の際に大きくなったままの斬雨さんが緑の銀光を放ち出し、チャージを開始していく。……さて、ウサギは倒したし次が出てくるのは想定済み。まぁまだ雑魚敵が残っているのですぐに倒し切れるとも思ってはいない。
とにかく一度回復に専念して、ここは斬雨さんに任せよう。……半覚醒じゃない筈だから大丈夫だよね? 一応確認しとこ。
<行動値を3消費して『識別Lv3』を発動します> 行動値 7/51(上限値使用:4)
『瘴長殻カタツムリ』Lv6
種族:黒の瘴気強化種
進化階位:未成体・黒の瘴気強化種
属性:瘴気
特性:支配、瘴気吸収、軟体
よし、半覚醒はなしの瘴気強化種だね。これなら青の群集でも問題なくダメージを与えられる筈だ。そもそもその予定だからこそ、昇華魔法を使った訳だしね。
「青の群集、雑魚共を吸わせずに固めてろ! まとめてぶった斬る!」
「おっしゃ、任せとけ!」
「吸われてんじゃねぇよ! 『アクアプリズン』!」
「ホホウ、逃しませんので。『コイルウィンド』!」
そして青の群集の人達が吸い寄せられていく雑魚の瘴気強化種を捕まえていく。……そうやって足止めしても何か中身が出ていくように瘴気が溢れ出ていって吸われている気もするけど、一応少しだけど回復速度が遅くなったか。
こうして捕まえた状態でよく見てみれば、瘴気強化種の雑魚のHPが地味に減ってるね。なるほど、瘴気がHPという形になってるのか。そしてそれを吸い取る事で回復しているという訳だ。さてと、これはどう攻略するのが良いかな?
「ジェイさん、ダメ元で聞くけどこっちのボスの攻略方法は?」
「行動パターンも含め、ほぼ全てがまだ未確定ですね。ケイさん、回復ついでに現状の討伐総数の確認をお願いします!」
「まぁそっちが鍵っぽいよな。よし、確認してくる」
周囲の雑魚敵で回復するというのは事前の情報通り。さっきのウサギを仕留めたのと、雑魚敵を一定数倒す事が条件なのであればその確認は必須だな。ささっとアルの上に跳び移って回復しつつ、情報確認をしてこよう。
「警戒よろしく!」
「ケイさん、いってらっしゃーい!」
「しばらくは様子見かな?」
「そうだね。私はまだ行動値に余裕あるから、何かきたら迎撃するよ」
「俺も余裕があるから、そうするか。ケイ、任せたぞ」
「しばらく他の人に任せたー! 魔力集中と重脚撃の再使用可能、早くー!」
「あはは……。レナさん、元気が良いかな?」
とりあえずウサギの追撃という役目を果たしたとこだし、青の群集でもダメージは万全に与えられるようになっている。少し回復の為に時間を取りながら、情報確認でも問題ないだろう。
そこまで劇的にHPが減ってる訳でもないけど、少しは減っているので焼き魚を食べて回復もしておこうか。……うーん、ヨッシさんの焼いてくれた焼き魚は美味いには美味いけどやっぱり塩気が足りないね。
まぁいいや、今はクエストの進捗状況を確認しよう。討伐数が一定量超えるかどうかが重要だもんね。クエストの詳細表示っと。
【共闘イベント『瘴気との邂逅』】
ワールドクエスト《地の底にいるモノ》の進行状況
【赤の群集】
黒の暴走種、半覚醒の解放 468/500
黒の瘴気強化種の撃破 4478/5000
ボスの撃破 2/10
【青の群集】
黒の暴走種、半覚醒の解放 481/500
黒の瘴気強化種の撃破 4921/5000
ボスの撃破 3/10
【灰の群集】
黒の暴走種、半覚醒の解放 476/500
黒の瘴気強化種の撃破 4872/5000
ボスの撃破 2/10
ボス戦への参加回数:4
えーと、さっきのウサギの討伐は青の群集のカウントで良いんだよな。あれって青の群集の群集支援種が元になってる訳だし。……灰の群集のペースより青の群集のペースが早いのは何でだろ。あ、強い人達が意外と青の群集との共闘に行ってるからか。
これを見た感じでは他のエリアでも雑魚はどんどん倒されてるみたいだし、そう時間も掛からないはず。倒し切ればこのカタツムリにも何か変化があって戦いやすくなるかな。
「ケイさん、どうですか!?」
「半覚醒は残り19、瘴気強化種は残り79だ!」
「はっ! あと少しじゃねぇか! おらぁ、死にさらせ!」
「ちょ!? 巻き込むなー!?」
「おいこら、斬雨!?」
「ぎゃー!?」
「軌道を読んで跳ぶかしゃがんで回避しろ!」
「ま、来るとは思ってた」
「いきなりじゃないだけマシだよな」
そしてチャージを終えた斬雨さんが薙ぎ払うように斬りつける。……青の群集の人と共に。うん、盛大に巻き込まれてはいるけども、一気に大量に倒せたのは間違いなさそうだ。ボスのカタツムリに瘴気を吸われて回復に使われて消えるよりかは良いだろうね。
それにしてもなんで灰の群集の人達は冷静に避けてたり、攻撃の延長線上から離れてるんだろうか。いや、みんな盛大に攻撃した後だから回復に動いてただけだよね。
「ホホウ、灰の群集の方々は見事な回避ぶりですな」
「……普段から慣れているようにしか見えませんね。一体普段はどの様な状況なのやら」
「その辺は青の群集もたまにはあるんじゃないか? 応用スキルの試し打ちでの被害とかさ」
「……ない訳ではないですが、ここまでスムーズな避難は出来ませんよ?」
「ま、その辺は慣れだな」
「そうそう。色んな情報の再現とか実験をやってるとどうしてもねー」
「レナさんは重脚撃の試し蹴りで、木を数本へし折って他のプレイヤーをふっ飛ばしたとか聞いたぞ?」
「ダイクだってケイさんの水のカーペットを真似ようとして失敗で落下して、湖の中に転げ落ちていったとか聞いたけど?」
「……よし、レナさんこの話はもうやめよう」
「……そだね。お互いに傷を抉りそう……」
どうやら俺の知らないところでも色々とあったらしい。この感じだとやらかしたのは少人数じゃないし、もっと大規模なやつもあるな。そりゃみんな回避にも慣れるわ。……まぁ俺が言える事でも無いけども。
「……まぁ非常に気になりますが、それは今は聞かなかった事にしましょう。斬雨、スリム、少しの間任せても宜しいですか?」
「あ? そりゃ別に良いが、ジェイはどうすんだ?」
「少し共闘戦略板で情報交換をしてきます。他のエリアの状況も知りたいですので」
「ホホウ、それは重要ですな」
「なるほどな、その手の事は任すぜ。おら、青の群集! 灰の群集に負けてらんねぇぞ!」
「だからって巻き込むな!?」
「……灰の群集の回避が凄まじかった。さっきのでフレンドリーファイアが皆無とかどういう事?」
「……その割には味方のはちょいちょい食らってるような……?」
「挙動がおかしい奴がちょいちょいいるよな。いやまぁ、あのくらいのプレイヤースキルの奴はこっちにもいるけど、慣れてる感じ?」
「ちょっと前に見た掲示板で今更って発言の真相がこれなのか」
「ホホウ、気持ちは分かりますがボス戦の最中ですぞ」
「……そうだな。半覚醒だけは任すしかないけど、それ以外は俺らでぶっ倒す気で行くぜ!」
「おう! 斬雨への文句は後でいいとして、今は雑魚の殲滅が優先だ!」
「灰の群集も頑張るよ! 『ビックリ情報箱』のPTがあれだけやったんだし、私達だって!」
「半覚醒をぶっ倒せー!」
「「「「「おー!」」」」」
新たな敵の出現も少なくなってきたようではあるけども、青の群集も灰の群集も士気は高いみたいだ。ここは任せておいても大丈夫だろう。
それにしてもあのカタツムリは瘴気の塊を撃ち出すように攻撃しているね。……もしかしてあれって魔法か? うーん、瘴気の魔法か……。敵専用とかかな?
「ケイさん達もご一緒願えますか?」
「そりゃもちろんだ!」
「あー、ケイ。俺は警戒に残るぞ。流石にこの巨体で、ボス戦中によそ見も出来んからな」
「私もかな。そういうのは任せるね」
「サヤに同意。ケイさん達に任せるよ」
「そっか。そんじゃ行ってくる」
アルは状況的に仕方ないし、サヤとヨッシさんはあまりこの手の事には積極的ではないのはいつもの事だ。灰の群集として俺とハーレさん、それにレナさんとダイクさんが参加するのなら人数的には充分だろう。
さてと共闘戦略板の『全体』で他のエリアの状況を確認だな。情報があればよし、なければ自分達で探るまで!
<ワールドクエスト《地の底にいるモノ》の条件を一部達成しました> 【青の群集】黒の暴走種、半覚醒の解放 500/500
うぉっと!? 確認の前に条件が1つ達成になった。これで雑魚の討伐系の条件は1つクリア! これでどんな変化が出た?
「……条件の1つが終わりましたか。斬雨、変化は何かありますか?」
「……今んとこ特にはねぇが。おい、誰か異変に気付いた奴とかいるか!?」
「こっちは変化なし!」
「こっちもだ!」
「……ん? あ、半覚醒が瘴気強化種に倒された!?」
「うおっ!? こっちもだ!」
「……なるほど、半覚醒はこれで退場という訳ですか」
「どうもそんな感じみたいだな」
半覚醒の解放の条件数をクリアすれば雑魚敵から半覚醒がいなくなる訳か。そうなると瘴気強化種を倒し切ればそっちもいなくなって、カタツムリの異常な回復速度も落ちるのか? そうなれば討伐は楽にはなりそうだけど、こればっかりは実際やってみないと分からないか。
ぶっ続けで戦って、そろそろ11時ってとこだけど雑魚系の討伐完了くらいは今日中にいけるかもしれない。……流石に瘴気強化種のボス戦が半覚醒のボスより遥かに弱いって事はないだろうし、こっちの討伐は明日に回した方が良いのかもしれないね。
まぁ、何はともあれまだまだボス戦は残っている。急がば回れだ。焦らずに情報収集をしっかりしてから、クエストを進めよう。なにせまだ前半のボスの半分も倒せてないんだしね。
とりあえず戦況だが、カタツムリを弱らせる事はほぼ出来ていないけど、雑魚の討伐完了は目前だ。他のエリアで瘴気強化種と戦闘になっている場所もあるだろう。何らかの有益な情報があればいいけど、とにかく情報交換だ。今はまだ行動値も魔力値も回復しきってないからね。
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