第260話 PTの連結
フラムが2ndに切り替えに行っているのでしばらく待機である。まぁそんなには時間はかからないだろうけど、フラムが戻ってきたら行き先を決めないとね。フラム達が灰の群集へと来るか、俺達が赤の群集のイベントエリアに行くかどっちになるかな。
「サヤさんは2ndはドラゴンにしたんですね?」
「結果的にそうなった感じかな。水月さんは2ndは作ったの?」
「少し海の方に興味がありましたので、ランダムにしてみたらホタテになりましたね。色々あったので海専用ですしまだ殆ど育成も出来ていませんが、こうして色々な共生進化を見ていると良さそうなものですね」
「俺も言ったじゃん! 水月も育てて共生進化させようぜー!」
「こちらの方がLv自体は上がりやすいのですが、あまりフラムやアーサーとLvが離れてしまうのも問題ですね。……ホタテを進化させる必要もあるので、少し検討しておきましょうか」
「水月さんの2ndはまだ成長体かな?」
「いえ、まだ幼生体なんですよ」
「そうなんだよなー!」
「それはまた結構時間がかかりそうかな」
なるほど、水月さんの2ndはホタテか。まだ全然育っていないようで共生進化は無理みたいだね。多分、ちょっと前までのハーレさんとヨッシさんの状態に近いだろう。とりあえずフラムを待っている間はみんなで雑談か。
そしてアル達はガストさんと雑談中のようだ。話題はアルの事みたいだな。
「ぶっちゃけ、クジラってどうなんよ? その巨体は扱いにくくねぇの?」
「癖があるといえば結構癖があるな。初心者向けではない感じだ」
「あーやっぱりか。玄人向け種族って事なんだな」
「まぁ、そうなるな」
「そだね! アルさんは玄人だー!」
「ちなみにハーレ、玄人の意味は分かって言ってる?」
「分かんない! ヨッシ、どういう意味ー?」
「はいはい。玄人はこの場合は上級者とか熟練者って意味だね。まぁ別の意味もあるけど、流石に当てはまらないし」
「おー!? アルさんは上級者なんだねー!」
「まぁ俺に限らず、このPTは全員な気もするけどな」
「わはは、確かにそりゃそうだ! 特にケイさんが初心者であってたまるかってんだよな!」
「そりゃオフライン版は相当やってたしね。……そういうガストさんも同じようなもんだろ」
「まぁな。水月みたいなのが特殊例みたいなもんだからな」
まぁ現時点で強い人は大半がオフライン版をやり込んでいた人だろう。水月さんみたいに初めてやるのにサヤと渡り合えるのは相当珍しいはずだ。とはいえオフライン版とは随分勝手が違うから、慣れたら一気に強くなる人も居そうだよな。
さてと、そろそろフラムが戻ってくる頃か。あいつの2ndは何の種族なんだろうか?
「ただいまっと! 待たせたな!」
「お……う……………………」
「あー、これはあれかな……?」
「あちゃー!? ケイさんがダメなやつだ!?」
「そう来ちゃったんだね。ケイさん、大丈夫?」
「ケイ、大丈夫か」
「え、何、この反応? 俺なんかした?」
「あーケイさんはこれが苦手な人か」
これは見なかった事にしたいな。よし、見なかった事にしよう。そうしよう。今日はフラムはいなかった。いないものは仕方ないから、いる人達だけで出発しようじゃないか。回れ右をして、出発だ!
「よし、そろそろ休憩終わり。水月さん、ガストさん、アーサー、PT連結させて出発するか!」
「ケイが見なかった事にしたぞ!?」
「おーい、ケイ? 俺を無視すんなー?」
いやいや、アル、何を言う。俺は何も見てないからな。見なかった事になんてしていない。今日はフラムはいないんだから、今目の前に回り込んできたものなんか見えてないよ。さてもう一度、回れ右!
「おい、ケイ? ホントにどうしたよ?」
「あはは、気持ちは分からなくもないかな?」
「私もあれだったら同じ事するかも!?」
「ケイさん、確か苦手生物フィルタは詳細から強弱設定が出来たはずだよ」
えーと、何のことやら? あ、詳細設定に細かい設定があるね。詳細設定を使わずにオンオフしただけの標準だと弱設定だったのか。……今までなんで平気だったんだろうな。この前は戦闘中とかだったし、気分的な問題か?
「おーい、ケイ! 無視すんなよ? あ、そういえば……」
あー、何となく思い出してきた。こいつには前に話した事があったんだっけ。そして余計な事をしてきた事があったような覚えがある。……まぁ、忘れてしまっていると言うのなら悪意もなさそうだし強設定に切り替えて、何とか我慢を……。
「……そういや、前に悪ふざけでケイにヘビを見せた時にブチ切れられたんだった!?」
「覚えてんのかよ!? なら、ぶっ飛ばす!」
「ケイ!? ストップかな!?」
「サヤ、放せ! 去年、こいつが俺の下駄箱にヘビを入れやがったのを思い出して腹が立ってきた!」
「……フラム兄、何やってんの……?」
「……何をやってるんですか、フラム……」
ちっ、フラムを仕留める前にサヤにハサミを掴まれて抑え込まれてしまった。サヤ相手に振り払うのは厳しいか。いや、昇華魔法なら……サヤの目が怖いので流石に自粛しておこう……。
それにしても、そうか、こいつがヘビだからこそ不快感が増しているんだな。俺がヘビが苦手と知ってから数日後、悪ふざけで余計な事をしやがったのが確か去年の夏休み前だった筈。……その時は夏休みを挟んでたから怒りが薄れていたけど、今ここに来てその怒りが再燃し始めた訳か。
「……おい、フラム」
「……ひっ!? ケ、ケイ、これはわざとじゃなくてだな!?」
「ツチノコに変えてやるから、ぶっ飛ばされろ?」
「ツチノコって確か体当たりが条件だったよな!? もしかして投げる気か!?」
「触るのは嫌だから、魔法で弾き飛ばすだけだけど?」
「淡々と答えるのが怖いんだけど!?」
PT連結したら違う群集でもダメージは無いからな。ふっ飛ばして弾代わりにして使おうじゃないか。よしよし、これこそ共闘だな。ツチノコならなんとなく平気ってのは分かっているし、一石二鳥である。
「だ、誰か、ヘルプ!?」
「……ただケイさんが苦手なだけなら流石に止めるが……その悪ふざけはな?」
「うぐっ!? アーサー、水月、何とかしてくれ!?」
「フラム兄、俺は悪い事をしたら反省も大事だと思うんだ。それをコケのアニキに教わった」
「……流石に悪ふざけの度合いが過ぎますね。フラムは確かムカデが苦手でしたね? 今度親戚で集まった時にでも、ムカデ見てみますか?」
「はい! 俺が悪かったです! だからそれはご勘弁を!?」
「あなたがした事はそういう事ですからね。反省してください」
お、アーサーと水月さんから白い目で見られている。その様子を見れば少し気分が晴れて来た。
「サヤ、ちょっと落ち着いたからもう大丈夫だぞ」
「……みたいかな? それなら離すけど、攻撃したら駄目だからね」
とりあえずサヤが掴んでいた俺のハサミを離してくれた。……とにかく苦手生物フィルタを強に切り替えてっと。お、イラスト調にデフォルメされたヘビから曲がりくねった木の枝が動いているように見え方が変わった。
これなら何とか大丈夫かもしれない。……フラム相手でなければ弱のデフォルメでも大丈夫だったんだけどな。
「……すまん、ケイ。ところでツチノコは平気なのか?」
「あー何でか知らないけど平気っぽいな」
「それなら興味がない訳でもないし、ツチノコに育ててみるわ。……それで去年の事もチャラにしてくれると助かる。あと、ぶっ飛ばすのは無しで!」
「……次はないからな?」
「もうやらねぇよ!? キレた時のケイって怖いんだよ!?」
そんなもん知るか。まぁ苦手生物フィルタでどうにかなったから大丈夫だけど、ツチノコにするのならその方が俺としてはありがたい。……基本的に人の進化先に口出しするつもりはないのに、ついかっとなってやってしまった。
「あー、もう大丈夫そうだな?」
「ガストさん……なんか色々とすみません」
「……何となくケイさんの気持ちは分かるからな。まぁそれは良いとしてだ、とりあえずPT連結を試してみねぇか?」
「はい! 良いと思います!」
「そうだな。そうするか」
えーと、PT連結ってどうやるんだろうか。PT申請の欄にあったり……あ、あった。PT連結申請ってやつだな。申請の対象相手はPTのリーダーになるのか。今はガストさんと俺がそれぞれのPTリーダーになっているので俺から申請してみよう。
<ガスト様のPTと連結しました>
よし、PT連結完了っと。お、視界内にガストさん達のPTメンバーのHP表示が追加された。今までは自分のPTメンバー達のHPが右下の方に邪魔にならないように表示されてたけど、PT毎のタブの切り替え式に変わったみたいだね。
あ、簡易一覧表示も可能なのか。1人辺りの表示は小さくはなるけど一覧にしとくかな。
「これって何PTまで連結出来るんだ?」
「どうも3PTまでみたいだな。今情報が上がってきてたぞ」
「アルさん、情報収集してたんだね!?」
「まぁ、時間も無駄にする訳にもいかんしな」
途中からアルが静かだと思ってたら、俺らが騒いでる間にしっかりと情報収集をしていてくれたらしい。いや、なんかほんとすみませんでした。
「ま、既に出遅れてるみたいだけどな。青の群集との共同で効率よく討伐が可能なのが確認されたとさ」
「あー!? 先に行かれたー!?」
「まぁ青の群集とは初めから話が通ってたもんね」
「でもうまく行くのが分かったのは良いんじゃないかな? どっちにしても沢山倒さないといけないもんね」
「サヤの言う通りだな。別に競い合い要素も今のところは無いようだし、各自好きな様に倒していけば良いだけだ。今のところは成長体ばっかだって話だから、経験値自体は微妙らしいしな」
ごちゃごちゃと揉めている間にも色々と判明しているようである。まぁとりあえず今は数を倒しまくる内容だし、次の段階に進むまではひたすら倒せばいいだけか。
「それじゃとりあえず倒しに行きますか!」
「ケイ、ちょっと待った。まだ行き先を決めてないぞ」
「あ、そういやそうだった」
フラムが来てから決める予定がゴタゴタしたせいですっかり忘れてた。……もう位置的には赤の群集の方が近そうだしそっちでも良いんじゃないかな。
「そういや、赤の群集の調査エリアって何?」
「あー、それなら平原エリアだぞ。ちょっとした竹林が出てくる手前までが調査クエストの対象エリアだな」
「おー! 平原エリアなんだー!? 昨日は行きそびれたし、平原に行こうよ!」
「ハーレ、多分イベント中は良い景色はないと思うよ?」
「あ、そういやそうだった!? でも別にいいさー! どっちかには行くんだし、行ってない方に行きたい!」
「そういう意見が出てるんだけど、良いかな?」
今回は赤の群集のメンバーもいるから、俺達だけで決める訳にもいかないしね。この辺の確認は大事だろう。
「そっちが良いなら、俺は別にいいぜ」
「私もそれで構いませんよ」
「俺はコケのアニキに付いていくだけ!」
「とのことなので、問題ないぞ」
全員問題なしという事のようなので、今回は赤の群集の調査クエストのエリア行きで決定だな。さて、初めて行く場所だけどどんな感じだろうか。……まぁ普段の光景とはまるで別物ではあるんだろうけどね。
「ボスもいますので、まずはこのエリアの北側へ向かいましょうか」
「そういえばボスは何ー!?」
「飛ウナギですね。ヌルヌルして近接では滑らせてくるのでご注意下さいね」
「ウナギ!? じゅるり……」
「ハーレさん、食えないからな?」
「うー!? なんで黒の暴走種とかは食べれないの!?」
「……さぁ?」
まぁ食べられたら食べられたで、攻撃とかしにくそうだしその辺の都合じゃないかな。……それにしても滑らせてくるというのは少し気になるね。コケ以外にもスリップ持ちがいるのかもしれないのか。ちょっと興味深いところではあるかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます