第259話 お互いの現状把握
とりあえずフラムを1発ぶん殴ってスッキリしたところで、共闘の為の話し合い開始である。とりあえずメンバーとしてはルアー、ガストさん、フラム、水月さん、アーサー、そして俺達のPTだな。フラムの杉の木を中心に赤の群集のメンバーが集まり、俺達はアルを下ろして河原で適度に落ち着いている。
共闘イベントを行うに当たってまずは互いの群集の現状把握といこうか。
「赤の群集……というよりはフラム達はどこまで今回のイベントの状況を把握してるんだ?」
灰の群集としては個別の自由行動という方針なので、赤の群集全体としてではなく赤の群集所属の個人として対応しておくべきだろう。とりあえず1番初め聞いておくべき事はこれだ。状況の把握具合によって、共有すべき情報が変わってくるしね。
「あー、フラム。ここは任せた」
「え、俺かよ!? ルアーがやるって話じゃ!?」
「リアルでの知り合い同士ならそっちの方が気楽だろ。赤の群集の代表としてじゃなくて、個人として対応するなら尚更な」
「そりゃそうだけど!? え、マジで俺が話すの!?」
いきなり脱線してどうするよ、おい。話し合いはどうした、話し合いは! ……もしかしてルアーって地味にこういうところが原因でまとめ役として機能してなかったとか言わないよな? まぁ、一応まとめ役として動こうとしているのであれば、こっちの自由行動って方針に合わせて来ている感じか?
「……仕方ないですね。フラムに任すと時間がかかりそうなので、ここは私が説明します」
「フラムが当てにならなさそうだから、水月さんにお願いするよ」
「ちょ!? 水月もケイも酷ぇ!?」
辛辣な言葉を受けているフラムは放っておくとして、水月さんが説明してくれるようなのでお任せしよう。地味に水月さんって身内には厳しいのかな? ま、それはいいや。リアル知り合いでなければもっと丁寧に対応するけど、相手はフラムだし状況把握の方が重要だ。
「まず私達で把握している範囲では、半覚醒の黒の暴走種と黒の瘴気強化種が各地の調査クエストのエリアに出現したという事ですね。半覚醒は暴発を使用しての撃破が可能なのは確認済みですが、これは非常に効率が悪いと認識しています」
「大体こっちと同じだね! 暴発で半覚醒を弱らせれるのも分かってたんだね!?」
「えぇ、それは競争クエストの時には判明していましたからね」
「……あの時は暴発で倒せる可能性を検討してた最中に動き出されたから焦ったもんだ。ま、妨害に行ったら返り討ちだったがな」
「え、あの時ってそんなタイミングだったのか?」
まさかの競争クエストでのルアー達の妨害があったあの1戦の直前まで、赤の群集は作戦会議の真っ最中だったらしい。……あの時の俺らは半覚醒を暴発で倒すという手段は考えてなかったから、タイミングがズレてたら少し危なかったのかもしれない。そう考えると意外と薄氷の勝利だったのかも。
「コケのアニキ! あの暴発を見つけたの俺だよ! 『無自覚な討伐』って称号でさ!」
「あー、確かにイメージぴったりだな」
「アル、何で俺を見ながら言う?」
「そんなのはケイが1番分かってるだろ?」
「うっ! 否定できないのが何とも……」
「……そっちはケイが暴発持ちなんだな。ちっ、最優先に止めるべきはケイだったのか」
「あ、あの時は躊躇なくザリガニを仕留めてくれてありがとな、ルアー! あれがヒントになったからな」
「はぁ!? ちょ、それじゃどうやって半覚醒を倒す気だったんだよ!? ……って、そういう事か!」
「……あのザリガニはそういう事でしたか。なるほど、手段は他にもあったという事ですね」
「水月、どういう事?」
「ええとですね、おそらくダメージ減衰が起きないであろう水砲ザリガニの攻撃を利用して半覚醒を倒そうとしたのではないかと。……ですよね、ケイさん?」
「その通り。いやー、ルアーにザリガニを倒されて焦ったんだぞ、こっちもさ」
今だから話せる競争クエストで互いの見えないところで何があったかという話だな。まさかザリガニを利用する方は考えついていなかったとはね。
まぁ暴発の方があるならそれ以上の可能性は模索しないだろうし、そういう事もあるか。俺達としてもザリガニで成功していれば暴発は気付かなかった可能性はあるしな。うん、色んな視点ってのは大事だね。
「あー、俺はその競争クエストには時間的な都合で参加してないから何とも言えんが、いくら何でも脱線し過ぎじゃねぇか? 今は共闘イベントの話だろ?」
「あっ、そういやそうだった」
「……それもそうですね。失礼しました」
今まで知らなかった側面が見えてきたのでついうっかり盛大に脱線しまくっていた。ガストさんがいなければ脱線したままだった可能性もあるな。危ない危ない。
とはいえ全く無意味って話でもなかったね。話してて気付いてけど、この戦法は敵の強さによっては活用出来るかもしれない。
「多分、現時点では黒の暴走種と瘴気強化種を戦わせるのは無理だろうな」
「可能ならやる気かよ。……無理な理由は寄生か。瘴気強化種に瘴気吸収という特性も確認は出来ているぞ」
「そういう事。あれ、寄生が原因で半覚醒になってるみたいだしな」
「……でも、何故『現時点では』なのですか?」
「多分、ボスが出てくるだろ。それの特徴次第だけど、半覚醒はボスの攻撃に巻き込ませればいいんだよ」
ボスの種類にもよるけど、場合によってはありだろう。ボスが瘴気強化種の場合に限るし、囮が必要になってくるから結構リスキーでもある。まぁこれは状況次第か。
「……手段としては有りだとは思うが、現時点では不確定要素が多過ぎるな」
「ま、確かにね。あくまで案の1つって事で軽く流しといてくれていいよ」
ボスが半覚醒だったら多分意味ないしな。……判断を下すには早計すぎるし、前後編の前編が始まったばかりである。少なくともボスが出現してから考えれば良い話だ。
そしてしばらく話し合った結果としては、現状では情報不足なので実際に他の群集の半覚醒を倒してみるしかないという事になった。まぁ、その為にこっちまで出向いて来たんだし当然の事ではあるけどもね。
「……そういや、半覚醒がどこの所属か見分ける方法は? 灰の群集では見つけてないけど」
「赤の群集でも同じだな。今のところ、ダメージが通るかどうかだけが基準だ。……話しかけたら分かる可能性もありそうだがな」
「場合によったら青の群集の半覚醒が混じってる可能性もあるかもね!」
「……有り得そうなのがなんともね」
「ハーレさん、アル、その辺の追加情報がないか確認してもらえるか?」
「分かったよー!」
「ついでに赤の群集と話し合い中ってのも報告しとくぞ」
「おう、よろしく!」
「ガスト、少し任せていいか? 俺も同じ情報を確認してくる」
「ほいよ。とっとと行ってこい、まとめ役!」
「……なし崩し的に押し付けられてるだけだがな」
青の群集の半覚醒が紛れてたらあっさり倒せて楽なんだけどな。っていうか、ルアーは自発的にまとめ役を買って出ている訳ではないのか。
まぁそれを言えば灰の群集でも結果的にはまとめ役にはなってるけど、ベスタも積極的にリーダーをやろうとはしてなかったっけ。……でも誰もが認めるリーダーにはなってるけどね。
その辺の違いはなんだろう? ルアーに人望がないって訳ではなさそうだし、嬉々として荒らしたがる奴がいたかどうかの差なのかもしれないね。そういう面では灰の群集は運は良かったのかも。
「ケイさん、報告が上がってたよー! 時々、灰の群集以外の半覚醒が混ざってるって!」
「どうも初期の討伐の半分くらいはこれだったらしいな。イベントを進める為に少数だけど紛れ込ませてるような感じか」
「え、マジで?」
普通に……というには無茶な手段は使ったけど、俺らのあの倒し方は普通じゃなかった? 意外に倒せてる人がいるとは思ってたけど、そういう事だったのか。いや、他にも暴発で倒してる人もいるにはいたよね。うん、いたはず。
「こっちも確認取れたぜ。暴発以外でも普通にダメージが通ってあっさり倒せるやつはいたらしい」
「ですがそれは例外と考えた方が良い気もしますね」
「だろうな。それだけでどうにかなる訳じゃないだろう。……アルマース、灰の群集へ伝言を頼めるか?」
「おう、いいぞ。どんな内容だ?」
「『赤の群集として共闘の意志は有り。活動基準は灰の群集の方針に合わせて自由行動にするので、個別対応でPTを組んで欲しい』と伝えておいてくれ」
「灰の群集の動きに合わせてくれるのか。よし、伝えておく」
なるほど、赤の群集はとりあえずは灰の群集に合わせる動きをしてくれるのか。まぁその方が動きやすいからありがたいかな。
「……さて、俺はその辺の行動方針の通知とまとめの作業でもやるか」
「なんだ、ルアーは戦わねぇのか?」
「なら、色々な面倒事を変わってくれ、ガスト」
「そりゃ勘弁だ! そういうのが面倒だから表に出てきてなかったんだしな」
ルアーは群集のまとめ役として色々とやる事があるらしい。まとめ機能の実装とイベントの開始日時が重なったのもあるから、その辺も大変なのだろう。……そういや聞いていなかったけど今日のベスタの活動内容は不明瞭だったし、ベスタも色々とやっているのかもしれないね。
「これ以上は実際に共闘して確かめてみるしかないですね。どうします、フラム、アーサー?」
「俺、コケのアニキ達と一緒に戦いたい!」
「俺もケイ達さえ良ければ共闘したいとこだな。ケイ、良いか?」
「元々そのつもりで来てるから問題ないぞ」
そもそも共闘の意思があるからこそ、ここまでやってきてる訳だしな。赤の群集が予想以上に険悪な状況であれば辞退したかもしれないけど、今のところはそんな雰囲気はない。……悪影響の傷跡がない訳ではなさそうだけど、そこから脱却しようという意思は見えるしね。
ガストさんとかはその代表格だろう。本来なら表に出てくる気はなかったようなのに、立て直す為に表に出てきたって感じだしね。
「フラムさんは戦闘はどうするのー!? 不動種で纏樹!?」
「いや、2ndの方を出すぜ?」
「そういや結局フラムの2ndって何なんだ? 俺のは見せたんだから教えろよ?」
「ふっふっふ! ケイ、それは見てのお楽しみだ!」
「もう1発、殴っといてもいい? 次はもっと高威力にするから」
「それは勘弁してくれ!? 何が出てくるか分からなくて怖いんだよ、ケイの攻撃!」
まぁ冗談はこれくらいにしておくか。こんなとこで無意味に手札を晒しても意味ないしね。それに高威力を出すのであれば、俺のスキルの育ち具合的には殴るより他の手段だよな。木だし、昼間だから光の操作で放火するとか。
「フラム、折角だから俺も同行して良いか?」
「おう、良いぞ! ケイ、良いよな?」
「俺は問題ないぞ。みんなは?」
「俺は異議なしだな」
「私も良いと思うかな」
「私も良いよ」
「私も賛成です!」
「って事だ。よろしくな、ガストさん」
「おう! 改めて、よろしくな!」
これでとりあえず共闘メンバーは決まりかな。フラム、アーサー、水月さん、ガストさんと俺達のPTで共闘である。これは人数的にもPT連結機能とやらを試す必要がありそうだ。
「なんか分かったら報告頼むぞ!」
「おう、ルアー! 任せとけ!」
そしてルアーは別行動となった。さて、このメンバーで共闘は良いとして赤の群集と灰の群集のどっちに行くかという事を決めていかないとね。
「とりあえず俺は2ndに切り替えてくるわ!」
「おう、さっさと行ってこい!」
「なんかケイってゲーム内じゃ俺に厳しくないか!?」
「そりゃ気のせい。さっさと行ってこい」
「……やっぱり気のせいじゃないよな?」
何ともブツブツ言いながらログアウトしていくフラムであった。……ぶっちゃけ、変な口調をからかってやろうかと思ってたのに普通の口調に戻ってて、何となくイラッとしたのはあるけどそれは口には出さないけどね。
とりあえずどっちのエリアに行くかはフラムが戻ってきてから考えよう。赤の群集の調査エリアってのも気になるからね。
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