第186話 共生進化の実行


「ケイの方はどうなのかな?」

「俺も進化直後だからまだ詳細は確認は出来てないな」

「あ、そうなんだ。私が来てタイミングがズレちゃったのかな?」

「そうなるといえばそうなるけど、まぁサヤの適応進化も興味深かったし気にしなくていいぞ。サヤもまだ成長体への進化もあるもんな」

「そうだね。適応進化じゃ進化階位は上がってないから、どこかで倒されてこないといけないかな」

「よーし、それじゃその時にまた実況でもやろう! ね、ケイさん!?」

「サヤは何か成長体への進化先は出た?」

「えっと、『尾長カゼノオトシゴ』って転生進化が出てるかな」

「尻尾で巻き付いたりしてたし、その関係?」

「条件が『尾伸ばし』と『尾巻き』がそれぞれLv2以上だからそうなるかな。説明にも尾が長くなり、より巻きつきやすくなるとか出てるしね」

「あれ!? サヤとヨッシに盛大にスルーされたよ!?」


 思いっきりサヤとヨッシさんにスルーされたハーレさんであった。まぁここは空気を読んで、サヤとヨッシさんに合わせておこうか。多分実況されたくないんだろうし。アルがいれば強引に実況を進めた可能性もあるだろうけどね。

 

「まぁ実況なら今度どっかの競争クエストの中継でも見ながらやればいいんじゃないか?」

「あっ、それ面白そう! でもそれなら普通に競争クエストに参加したい気もする!?」

「ケイさんは結局どんな感じになってるの?」

「あ、そういやそうだったな。今確認するよ」


 ハーレさんが実況とか言い出すから話題が逸れた。気を取り直して進化後の確認をしていこう。なんか既に進化先が光ってるのが気になるけど、まずは進化してどういう変化をしているかを確認しておかないと。ステータスを開いて現状の詳細を表示してっと。


【ステータス】


 名前:ケイ2nd

 種族:殴りロブスター

 所属:灰の群集


 レベル 1

 進化階位:成長体・殴打種

 属性:なし

 特性:打撃、堅牢


 HP 1400/1400

 魔力値 10/10

 行動値 19/19


 攻撃 13

 防御 11

 俊敏 9

 知識 4

 器用 4

 魔力 3


 進化したては少しステータスが下がっているけど、これはコケの時もそうだったのでそういう仕様なのだろう。どうせレベルアップでのステータス上昇量も上がっているからすぐに追い抜くだろうし、問題ないか。それにステータス以外にも進化階位が違うだけでもなんだか補正が掛かってるみたいだしね。まぁ下位の進化階位では勝てない様にバランス調整されているんだろう。

 

 レベルアップでのステータスの正確な上昇値はやってみないと分からないけど、この感じだと攻撃と防御が高くて、俊敏はそこそこ、知識と器用と魔力は微妙って感じか。そして属性はなしで、特性が打撃と堅牢か。成長体・殴打種ってなってるし、魔力は低い物理攻撃型の種族みたいだね。


「攻撃と防御が高めの物理型って感じか。種族は『殴りロブスター』で属性はなし、特性が打撃と堅牢だな」

「ロブスターは完全に物理型なんだね! 打撃系かー!」

「魔法のコケと、物理のロブスターになるんだね。共生進化の相性も良さそう」

「属性はなしなんだ。共生進化はどうなるのかな?」

「既に進化先が出てるから、多分これが共生進化だろうな」

「おー! 早く見てみたい!」

「進化情報を確認したらやってくるから、ちょっと待ってくれ」


 共生進化が気になってるのは俺も同じだからね。興味津々なのはいいけど、少し確認する時間を下さいな。って事で確認の為にさっきから光っている進化項目を表示しよう。


【進化】


 増強進化ポイント 25P

 融合進化ポイント 25P

 生存進化ポイント 24P 


《変異進化》

 現在、進化可能の経路は存在しません。


《転生進化》

 現在、進化可能の経路は存在しません。


《複合進化》

 【共生進化】

 共生相手:水陸コケ(1st)

 進化階位:成長体

 進化条件:同じ成長体である事。

 同じ進化階位同士の他の種族と共生を行う進化。互いに生存エリアが違っても、特定のアイテムの使用により互いの生存圏に適応が可能になる。

 相性がある為、必ずしも共生に適しているとは限らない。この場では進化不可能。



 よし、予想通りに複合進化の中に共生進化が発生している。これでいったんの所に行けば共生進化が実行されるのだろう。共生進化には進化ポイントの消費なしなのはありがたいね。

 あ、そういや特性の種をもらってこないと海への適応が出来ないのか。エンかヨシミのとこにも行ってこないと。


「思った通りに共生進化が出てるから、ちょっとやってくる」

「うん、分かったかな」

「いってらっしゃい!」

「ケイさん、すぐに終わる?」

「あーちょっと特性の種の交換までしてくるから、少しかかるかもしれないな」

「それならケイさんを待ってる間に、近場で経験値稼ごうか。あとサヤの進化もね」

「そだね! そうしよっか!」

「おう、そうしててくれ」


 無駄に待たせるというのもなんだから、時間は有効活用しないとね。まずは……ロブスターの方からだと少しヨシミのとこまで距離があるから、コケの方で特性の種を交換してこよう。情報ポイントは共通の様なので、どっちで交換しに行っても問題ないしね。


「それじゃ行ってくる!」


 みんなに声をかけて見送られながら一旦ログアウトする。コケはヨシミのすぐ近くって訳でもないけど、比較的近くにいるからすぐに纏海して移動すれば問題ない。



 ◇ ◇ ◇



 そしてログイン場面へと移動してきた。いつもの様にいったんがいて、その胴体には『海鮮丼食いたいなぁ……』って知るか! 勝手に食べてろよ!? 真面目な告知も結構あるのに、時々ある全く関係のない内容は何なんだ……?


「お〜、時間帯的にはキャラの切り替えかな〜? それとも共生進化〜?」

「とりあえず切り替え。後で共生進化しにくるけどな」

「そっか〜。あ、そうそう。条件的に君には必要になる情報だから案内ね〜。共生進化でどんな種類でも良いから『特性の種』を持ってきたら、『共生適応』っていう特殊効果が発生するから〜」

「あ、それは人伝に聞いた。『特性の種』を使えば共生進化中は両方の生存圏に適応出来るんで合ってるよな?」

「あ、聞いてたんだね〜。うん、それで間違ってないよ〜」

「よし、間違ってないならそれでいいよ」

「って事はこれから交換しに行くのかな〜?」

「まぁ、そうなるな」

「はい、わかったよ〜。それじゃ共生進化をしに来るのを待ってるね〜」

「おう。って事でコケの方でログイン頼む」

「はいよ〜。あ、これコケの方のログインボーナス〜」

「あ、そういやそうだった」


 コケの方でも貰えるんだった。そしていったんのログインボーナスを受け取って、コケでログインしていく。さてとログアウトしたのが海水の中だった筈だから、即座に纏海して……いやいっそ死んで帰還の実で戻るか? いや、やっぱり普通にヨシミのとこまで行こう。



 ◇ ◇ ◇



 そしてログインして、海水の中へと現れる。真っ暗な海水の中で思いっきり弱ってるけど、即座に纏海を使えば……あ、ここでアイテム使うなら、別に普通に帰還の実でエンのとこに行けば良いんじゃないか。……というか、俺はなんでこんなとこでログアウトしたんだよ……。


<『帰還の実:始まりの森林深部・灰の群集エリア2』を使用します>

<『始まりの海原・灰の群集エリア5』から『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』に移動しました>


 よし、これでエンの元へとやってきた。別にエンと会話はしてもいいけど、時間短縮でマップから交換情報へとアクセスしていこう。情報ポイントは973あるから、特性の種の交換には問題なし。

 どの種類でも良いとは言ってたけど、ここはヨシミのとこで海水適応を交換しておこうかな。共生進化を解除した状態でも使える様にしておきたいし。……その状態で使うかどうかは分からないけど。

 とりあえずエンからは新しいこっちの帰還の実を貰って、転移で海エリアへと移動。それでヨシミから海水適応の特性の種を貰ってもう一度ログアウトして共生進化だ。その前にログインボーナスを使っておくか。


<『進化ポイントの実:灰の群集』を使用します>

<アイテム使用により、増強進化ポイント4、融合進化ポイント4、生存進化ポイント7獲得しました>


 よし、これで問題なし。それじゃ海エリアに戻ろう! すぐにログアウトするし、全く見えない訳じゃないから夜目の発動はしなくて良い。


<『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』から『始まりの海原・灰の群集エリア5』に移動しました>


 そして問題なくヨシミの元へとやってきた。ちゃんと陸地のプレイヤー用に用意された空気のある空間に転移されてるね。エンのとこにも大きな海水の水球もあったしな。追憶の実で見た通りの様子だった。

 さっき転移してくる時に気付いた事があった。地味に全部の群集拠点種への転移先が出てたんだけど、昨日の深夜から今日の昼間までの間で全部の経路確立が済んだっぽい? まぁマップ情報はないから海エリアにしか転移出来なかったけど。この辺も共生進化が終わったら確認しないといけないね。


 とりあえずさっさと交換していこう。ヨシミに情報ポイント500を渡して、『特性の種:海水適応』を手に入れた。残りの情報ポイントは473。少し足せば進化の輝石も手に入るだけのポイントはあるな。出来れば何処かの競争クエストに参加して補充もしたいとこだけど。

 ともかくこれで準備は完了。ログアウトしていったんのところへ行こう。



 ◇ ◇ ◇



 そして大して時間も経ってはいないけど再びログイン場面へとやってきた。さて、準備はこれで良いはずだ。コケもロブスターも海の同じエリアに置いてきたしね。


「おかえり〜。早速、共生進化やっちゃう〜?」

「おう、頼む」

「はいよ〜。一応条件を満たしているか確認をするから待ってね〜。……うん、問題なしだね。『共生適応』に使う特性の種は『特性の種:海水適応』で良いかな〜?」

「それ以外持ってないし、それで良いよ」


 その為にわざわざ交換してきたんだから問題があるはずがない。


「はい、条件は全て整ったかな〜。それじゃ共生進化を始めるよ〜」

「おう」


 そして、ログイン場面に空中投影されているコケとロブスターの立体映像が光り輝いていき、それぞれから光の糸が現れてくる。その中間点に特性の種が浮かび上がっていき、2本の光の糸が種に絡みついていく。何重にも絡み合い、その2本の光の糸と種が全て混ざり合い、そして1本の太い糸へと変わっていった。


「はい、これで共生進化は完了だよ〜。この共生進化の組み合わせなら、陸地、淡水内、海水内は適応してるからね〜」

「あ、その3つもいけるのか。え、それだけあれば充分じゃない?」

「それは甘いよ〜。オフライン版もやったんでしょ〜?」

「あー雪山とか砂漠とか火山とかか……」

「僕からは詳細は言えないけどね〜」

「ま、その辺はいいや。これ、どっちでもログイン出来るんだよな?」

「もちろんさ〜。あ、共生進化後に初めてログインした時には『共生指示』と『半自動操作』のスキル取得があるからね〜」

「おう、分かった」


 『共生指示』と『半自動操作』の取得条件は気になっていたけど、共生進化すれば自動取得なんだ。それはありがたいね。さてと、とりあえずコケの方でログインしてみようかな。


「それじゃコケの方でログインを頼む」

「説明が1つ残ってるからまだちょっと待ってね〜」

「まだあったのか」

「うん、あったのさ〜。共生進化の時の死亡判定の話だね〜」

「あ、そういやそれはどうなるんだ?」


 すっかり失念していたけど、確かにこれは必要な説明だ。どっちがどうなれば死ぬ事になるのかという情報は重要である。


「基本的にログインしているほうが死ねばどちらのキャラも死亡判定だね〜。ログインしてない共生相手の方が死ねば、共生進化は一度解除されるよ〜。その場合は再度ここで共生進化の必要があるからね〜」

「ほうほう。つまり共生進化の相手なら、ログインしてる方を潰せって事か」

「まぁそうなるね〜。ちなみに死亡した場合は共生進化が解除された状態でそれぞれのリスポーン位置から再開になるよ〜」

「あ、一緒の場所で復活にはならないんだな」

「死んだ時点で共生進化が解除されるからそうなるね〜」

「その場合って特性の種はどうなるんだ?」

「インベントリに戻るだけで、消滅はしないから安心してね〜。普通に僕のところで共生進化を解除した時も同じになるよ〜」


 そういう仕様なら共生進化中に死ねば即座に戦線復帰は無理と考えておいたほうがいいか。そして、特性の実も共生進化で無くなることはないんだな。なかなか面白い仕様になってるじゃないか、共生進化! さて、共生進化で試す事は色々あるぞ!


「それで説明は終わりか? 終わりならコケでログインしたいんだけど」

「終わりだよ〜! ログインはコケの方だね〜。あ、ログインの位置はどっちかのいた位置から選べるけど、どっちが良い〜?」

「ロブスターのいた方でよろしく!」

「了解〜。それじゃ楽しんできてね〜」


 いったんに見送られながら、共生進化を終えて再度ログインしていく。さぁ、どんな風になっているものやら。色々と楽しみになってきた!

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