第184話 久しぶりの2人組


 宿題はさほど時間がかかるものでもなかったので、すぐに終わらせた。他にも色々とやっておくべき事を片付けてからゲームへとログインしていく。さて、今日中に共生進化を目指していこう!


 そしてログイン場面へとやってきた。そういやいったんが臨時メンテとはなってたけどどうなった? あ、普通にいったんがいた。胴体部分には『臨時メンテナンス終了! でも過度なスクリーンショットはほどほどにね?』とある。……何事もやり過ぎには注意って事だろうね。


「お、こんにちは〜。いつもログインありがとね〜」

「おう。とりあえずいったん、お疲れ様」

「ここの運営はAI使いが荒いから困ったもんだよ! まぁそれは良いとして、スクリーンショットの認証の件は説明したよね〜」

「あー写ってるプレイヤーの承諾がいるってやつだよな」

「そうそう。それが君にも来てますよ〜」

「え、マジで!?」

「うん、ホントだよ〜。はい、これ一覧ね」


 そしていったんから渡される画像の一覧表示がされているウィンドウ。写真の種類を分けているようで、項目が『戦闘』『景色』『記念』『その他』になっている。『戦闘』の方に10枚ほど、『景色』にも10枚くらい送られてきている。後はその中から撮影者の所属群集も表示されていた。


「一応分類はしてるから〜。条件一括で指定も出来るから、その辺は上手く活用してね〜」

「それなら他の群集は一律拒否で、それ以外は許可にしといてくれ」

「はいはい〜。それじゃそう処理しておくね〜。あ、ちなみに欲しいのあったら貰えるからね〜。ただし、猶予期間は初めに見てから3日になってるのでそこは要注意〜」

「あ、欲しいのあれば貰えるのか。そりゃ地味にいいね」


 視界が元になる以上は自分のキャラ自体は自分ではスクリーンショットで撮れないからな。これはこれで良いのかもしれない。お、アルの頭に乗って移動してる最中の光景が斜め下からのアングルであるな。これは海底から撮ったみたいで良い感じだ。これは貰っとこ。他は……まぁ微妙。


「じゃあ、この1枚をくれ」

「はいよ〜。取得通知は出してもいい〜?」

「ん? 何それ?」

「自分の撮ったスクリーンショットを誰かが貰ってくれたっていう通知だね〜」

「お、そんなのあるのか。それくらいなら別にいいぞ」

「それじゃ送っておくね〜」


 思った以上にスクリーンショットの機能が多機能だな。こりゃバグとか処理落ちとか出るよ。無駄に凝ってるだけに処理が複雑化してるだろうし。まぁこの辺の承諾が面倒だと思う人は一括で拒否設定にしてしまえば良いんだろうね。


「連絡事項ってそんなもん?」

「うん、そうなるね〜」

「そうか。んじゃロブスターの方でログインするわ」

「分かったよ〜。はい、これ今日のログインボーナスね〜」

「お、サンキュー」


 本日分のロブスターの方の進化ポイントの実を貰い、ログインしていく。後でコケでもログインしてログインボーナスを貰っておかないと。



 ◇ ◇ ◇



 ゲーム内へと移っていけば、真っ暗闇の海水の中へと辿り着く。そっか、今日は夜の日だよな。一応ぼんやりと周辺が見える程度にはなっているけど、陸地の夜よりちょっと暗い感じのようである。まだ夜目は取得出来ていないから、1時間はこのままでやるしかない。

 とりあえず忘れないうちにログインボーナスを貰っておこう。


<『進化ポイントの実:灰の群集』を使用します>

<アイテム使用により、増強進化ポイント4、融合進化ポイント4、生存進化ポイント7獲得しました>


 よし、これで2枠目の今日の分は確保。これで増強進化ポイント23、融合進化ポイント20、生存進化ポイント23になった。増強進化ポイント10は使うけど、ここで『行動値増加Ⅰ』を取っておこうかな。あ、でも進化したら即座に『魔力制御Ⅰ』は取りたいから温存のほうがいいか……?

 ここはちょっと節約にしておこう。ロブスターはコケと違って行動値がなくて移動出来ないって事にはならないし。


 気を取り直して、今は誰かいるか確認しよう。お、フレンド登録している人は半分くらいはログイン中。みんなは……サヤがログインしているみたいだな。しかもすぐ近くにいるようだ。って、同じ場所でログアウトしたんだから当たり前か。


「あ、ケイ。ログインしたんだね」

「おう。サヤもログインしたとこか?」

「そんなとこかな。ヨッシはさっき私の家から泊まってた時の荷物持って帰ったから、しばらくしたら来ると思うよ」

「あー、そういや昨日も泊まったとか言ってたもんな」

「うん、色々と楽しかったよ。ハーレから送ってもらった庭の池の写真とか見てたりね?」

「……そういやよく庭の写真とか撮ってたっけ」


 晴香は地味に風景写真とか好きだっけ。……あ、だからサファリ系プレイヤーなのか。リアルじゃ見に行けない様な景色とか、現実じゃあり得ない景色とか色々あるもんな、このゲーム。


「それでケイはこれからどうするのかな?」

「進化まであとLv1だから今のうちにやっておこうかと」

「それなら一緒にやる?」

「そうするか。本当なら土の操作も狙いたいけど……」

「流石に厳しそうかな? ウツボで取れなかったのが痛かったね」

「そうなんだよな」


 海水の操作は取れたから良いとはしておくけどね。同族の命を脅かすモノや成長体の黒の暴走種の討伐称号も幼生体ではちょっと狙いにくそうだからな。もう少し攻撃系スキルを鍛えてみて進化先が出なければ成長体へは単純強化の進化で、成長体から称号取得を狙っていっても問題ないだろう。

 みんな揃ってからでも良いんだけど、ヨッシさんとハーレさんは昨日のボス1体分ずつ経験値がズレてるから、先に成長体に進化しておいて後から引っ張り上げる方が良い気もする。


「それじゃ、みんな来るまでは進化の準備かな?」

「その後はお互い成長体に進化までやっとくか」

「うん、そうしよう。あ、そうそう、ハーレは今日は少し遅れるって言ってたよ」

「ん? 今日はなんかあったっけ?」

「『お気に入りの傘が盗まれたー!? 犯人を見つけ出す!』ってメッセージで大騒ぎしてたかな」

「あの傘か。……ん? 家にあったような気もするぞ」

「え? もしかして、勘違いなのかな?」

「あー、ちょっと確認してくる。今朝は雨降ってなかったから、その辺が原因かも」

「うん、そうしてあげて」


 まぁ放っておいてもそのうち諦めて帰ってくるだろうけど、流石にそれも可哀想だしな。ものすごい手間って訳でもないし、このくらいはしても問題ないか。



 ◇ ◇ ◇



 一旦ログアウトして、玄関へと確認しに行けばそこには晴香のお気に入りの傘があった。やっぱり持っていったと思って、盗まれたと勘違いしている様である。


「晴香にメッセージ送っとくか」


 状況が分かった以上は教えておいてやるべきだろう。携帯端末を開いてメッセージを入力していく。内容は『サヤから事情は聞いた。傘なら家に置き忘れてるぞ』っと、これで良いか。よし、送信。これで探し回らずに帰ってくるだろう。

 お、返信が来た。『ホントに!? 良かったー! 兄貴、ありがと! すぐ帰るね!』との事。んじゃ用事も済んだからログインし直すか。



 ◇ ◇ ◇



 戻ってきても、暗さが変わるわけでもなく暗いままである。早めに夜目が欲しいところだけど、これは時間経過で手に入るからそれまで我慢だな。


「ただいま」

「ケイ、おかえり。どうだったかな?」

「普通に家にあったよ。本人にも伝えたから、これから帰るってさ」

「それならよかったよ」

「そんじゃ2人で、狩りでも行きますか」

「そうだね。2人だけで動くのも久しぶりな気もするかな」

「確かにな。それほど前のことでも無いはずだけど懐かしい気がするな」


 思えばゲーム内で出会った初めてのプレイヤーがサヤだったんだよな。2人だけで動くのはあの時以来か。



 久しぶりのサヤとの2人での戦闘でLv上げを開始していく。以前とはキャラが違うというのは不思議な感じだけどね。


「索敵行くぞ!」

「うん!」


<行動値を2消費して『獲物察知Lv2』を発動します>  行動値 16/18


 Lv2になった獲物察知は少しだけ範囲と効果時間が広がった。一般生物は普通に見えてるから、とりあえずスルー。残滓が2体ほど察知に引っ掛かった。1体は岩の隙間、1体は海底。隙間の奴は正体が分からないので後回し、海底のは多分だけど貝だ!


「サヤ、海底に貝だ!」

「それなら『尾伸ばし』!」


 サヤがタツノオトシゴの尾を伸ばして、鞭のようにしならせて海底へと叩きつける。その攻撃に警戒態勢へと移動した貝が姿を表した。……やっぱりホタテっぽい貝である。


「『巻きつき』!」

「サヤ、ナイス!」


<行動値を2消費して『殴打Lv2』を発動します>  行動値 14/18

<熟練度が規定値に到達したため、スキル『殴打Lv2』が『殴打Lv3』になりました>

<規定の条件を満たしたため、スキル『鋏強打』を取得しました>


 お、派生スキルの取得だな。ただの殴打よりも鋏専用の打撃スキルのようである。殴打Lv2でも残滓相手には結構なダメージが出るようになったけど、それと比べたらどうだろう?


「新スキル出たから、実験行くぞ!」

「お、どんなのかな?」


<行動値を1消費して『鋏強打Lv1』を発動します>  行動値 13/18


 スキルを発動してみれば、攻撃方向の指定が出てくる。殴打と違ってどこからどういう風にでも殴れる訳じゃないのか。攻撃の初動の角度指定をして、後はシステムアシストによる自動攻撃になっているようだ。

 魔法の発動の感覚に近いけど、それよりは自由度は高い感じだな。とりあえず右側のハサミを右斜め上から叩きつける方向に指定しよう。


 そして発動した鋏強打によって、大きく振り上げたハサミを指定した角度に沿って標的の貝へと叩きつけていく。殴打より大振りだけど威力は高め、操作の自由度は殴打に比べると低めか。これは如何に指定の時間の無駄を無くすかが重要っぽいね。

 もっと操作が細かったオフライン版に比べると扱いやすくはなっている。物理攻撃は少し仕様変更というか微調整な感じか。まぁ極端な差でもないから、少しやれば慣れるだろう。


 それにしても鋏強打はまだ覚えたてのLv1だけど結構な威力。貝殻が砕け散って、貝のHPも残りあと僅か。これはもうスキルは必要ないから、通常攻撃でとどめを刺せば貝はポリゴンとなって砕け散っていった。まぁ進化目前のLvになれば幼生体の残滓はこんなもんか。


「さてと、この調子でサクサク倒して行こうぜ!」

「それにしても前とは役割が逆になってるよね?」

「そういや前は俺が足止めで、サヤが攻撃だったっけ。種族によって役割も変わってくるんだな」

「そうだね。これなら、クマの補助には良さそうな感じかな」

「尻尾が鞭みたいに使えてたし、使い方次第で色々化けそうだ」

「うん、私もそう思うよ」


 あ、でもタツノオトシゴの尾でクマに巻きつく予定だし、鞭みたいに出来るかどうか微妙……? この辺は想像でしかないから、実際に共生進化させてみないとなんとも言えないか。その為にも成長体に進化させるのが最優先。成長体に進化さえすれば、Lv差はともかくどんな状態になるかだけは分かるしね。

 そんな風にサヤと雑談しながら、何体かの残滓を仕留めたところでLv10に到達した。次は成長体への進化と共生進化の実験だ!



【ステータス】


 名前:ケイ2nd

 種族:ロブスター

 所属:灰の群集


 レベル 9 → 10

 進化階位:幼生体


 HP 1460/1460 → 1460/1580

 行動値 18/18 → 18/19


 攻撃 20 → 22

 防御 20 → 22

 俊敏 19 → 21

 知識 9 → 10

 器用 9 → 10

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る