第139話 2枠目と新たな進化


<仕様変更の為、緊急メンテナンスを行います。ログイン中の皆様はログアウトをお願いします>


「あ、そういえばバグの修正を含めた仕様変更だったな」

「毎日取得分のポイントがログインボーナスに代わるんだよね!」

「地味に取り忘れたりするから、こっちの方がありがたいかな?」

「取り忘れは私もあったね。あと種族によっては毎日取得分の条件が分からないって人もいたらしいよ」

「あーそりゃ修正が入る訳だ」


 ……個別の取得設定にし過ぎて、複雑化したせいで取得出来ないとか多く取得するとかのバグでもあったんだろうな。……もしかしたら公表してないだけでポイント増殖のバグとかもあったのかもしれないね。オフラインならポイント増殖系のバグは他のプレイヤーに影響はないから問題ないけど、オンラインではその手のバグは致命的だもんね。……まぁあくまで推測でしかないけどさ。


「時間も時間だし、キリがいいから今日はここで解散にするか?」

「それもそうだねー! 明日はどうするー!?」

「何やるかは明日決めるか。ログアウトしなきゃいかんしな」

「じっくり話してる場合でもないから、そうしたほうがいいかな」

「そうだね。それが良さそう」

「んじゃ、急ぎのクエストは終わったし、好きなタイミングでログインって事で!」

「わかった! それじゃ、また明日ねー!」

「また明日ね!」

「うん、また明日」

「ケイ、寝坊すんなよ! 俺は折角の休みなんだからよ!」

「しねぇよ!?」


 そうして明日の予定は明日、みんなが揃ってから決めるという事で帰還の実を使って群集拠点へと戻ってからログアウトしていった。今から1時間は仕様変更の為の臨時メンテナンスである。この時間なのは日付が変わる時に取得ポイントのリセットがあったからなんだろうな。



 ◇ ◇ ◇



 そしてログイン場面へと移動していく。さて、いったんに軽く挨拶したらログアウトするか。いつものようにいったんの胴体を見てみれば『仕様変更の為の臨時メンテナンス中。でもログイン場面だけなら居ても大丈夫!』とある。……ここは大丈夫なのか。


「慌ただしくてごめんね〜。どこの競争クエストの邪魔にならなくて良かったよ〜」

「……もしかしてちょっとずれ込んでたら、競争クエストの真っ只中で強制中断だったのか……?」

「うん、タイミング次第ではね。それまでに終わってくれてホッとしてるとこ〜」


 ……まぁ元々この時間に臨時メンテナンスがある事は通知されてたからな。そうなったらそうなったで仕方なかったのかもしれないけど、そうならなくて良かった。あの真っ最中で中断とかになれば悲惨も悲惨だっただろうし……。


「……メンテナンス中はここには居ても大丈夫なんだよな?」

「うん、臨時メンテナンスだから大丈夫だよ〜。定期メンテナンスの時はここのメンテナンスも含まれるから無理だけどね〜」

「あー、そういう仕様になってるのか」


 なら、ちょうどいいか。Lv20に到達したし、今のうちに2枠目と複合進化について聞いておこう。何とか条件は満たせたしな。……ザリガニの分の経験値は不本意ではあるけど、それでも経験値は経験値である。


「居てもいいなら、2枠目と複合進化について教えてくれ」

「あ、それね〜。ちょっと確認するから待ってね……。うん、条件は大丈夫かな〜。それじゃ説明していくよ〜。まずは2枠目の方からね〜」


 そうしていったんが説明を始めていく。さて、具体的にどうなっているのやら。一応2枠目についてはベスタから聞いてはいるけど改めてしっかりと聞いておこう。


「2枠目の種族の選択基準は2種類あるよ〜。1つは今まで君が遭遇したモンスターの中から選ぶ事だね〜。もう1つは初期エリアを指定してのランダム決定になるよ〜」

「その種族の一覧って2枠目を作る時以外でも見れる?」

「それはもちろんさ〜。折角だし見とく〜?」

「そうだな。頼むよ」

「はいはい、それではこちらをどうぞ〜」


 そうして俺の前に選択可能な種族の一覧のウィンドウが現れてきた。どれどれ、どんなもんだろう。お、初期エリア毎に項目が分けられているんだな。森林深部エリアで選べる種族が一番多くて、次に森林エリア、荒野エリアが地味にいくつかある……? ヘビ、トカゲ、草花、木とかあるな。


「なぁ、荒野エリアのプレイヤーとか黒の暴走種に遭った覚えってないんだけど?」

「あ、それは開始エリアが違うだけで初期種族が同じ種族かな? 選択肢に出てるのはヘビとかトカゲ、もしくは植物系じゃないかな?」

「あ、確かにそうなってるな。この場合って同じ種族でもスタートするエリアが選べるのか?」

「うん、初期エリアの項目から選んだ種族はその場所からスタート出来るよ〜。ちょ〜っとだけ、エリア固有の特色は出るけどね」

「なるほどね」


 つまり植物系とかの他のエリアと共通する種族なら何処からでもスタート出来るって感じか。海だけは異質感が凄いけど、性質上仕方ないか。……でも海にもいて陸にもいる種族ならもしかして作れる可能性あり……?

 草原エリアも荒野エリアと似たようなものだな。少しシカとかイノシシとかが増える程度か。そして海エリアは……イカ、アンコウ……あ、カニがあるな。あの赤の群集の森林エリアでの川のヤツだな。……そしてなんでロブスター……? あ、ザリガニの一種だから? この感じなら、海水と淡水を行き来するウナギとかサケとかを川で見つけたら海にも行けそうか……?

 うーむ、これは悩むな……。確実性を取るなら常闇の洞窟を踏破して選びたい種族を見つけるべきか。


「あ、すぐに決めなきゃいけないわけじゃないからね〜。2枠目は使わないって選択もありだし、悩み過ぎて決められないならランダム決定もあるからね〜」

「……うん、とりあえず保留にしとくわ」

「はいはい、保留ね〜」


 保留も選択肢の内だろう。何も今すぐ決める必要はないし、そもそもみんなも海には興味を示していたけど、まだ海に行くとも確定した訳じゃない。それにまだ聞いていない情報もあるからそっちも聞いておく必要がある。


「よし、それじゃ次は複合進化について教えてくれ」

「はいはい、『複合進化』だね〜。まず『複合進化』という名称そのものの進化はなくて、複数の枠を使用して行う進化の総称だよ〜! 『複合進化』っていう進化そのものはないから、ご注意を〜」


 総称って事は複合進化に分類される進化は何種類か存在する……? もしかしてベスタが行っていたあの進化はその1つ?


「……その1種類が融合進化か?」

「あ、それはもう知ってるんだね〜。うん、そうだよ〜。だけど、ここで案内出来る範囲は基本となる『共生進化』だけかな〜?」

「基本になる『共生進化』って事は、いくつか種類があるのか?」

「何種類かは教えられないけど、そうなるね〜。そこら辺は基本的にプレイヤー達で探してもらうって方針だからさ〜」

「なるほどね。……で、情報が停滞したら?」

「うん、強制情報開示だね〜。一時は青の群集が危なかったけど、今は必要はなさそうだね〜」


 基本的には自分達で探せと言う事か。それでもベスタが進化情報を公表していないのは、まだ早いからか、もしくは自分で見るべき情報だからか、そんな所かな。進化に関してはやり直しが効かないからホイホイとまだ自分も実行してない情報は出せなかったのかもしれない。


「それじゃ『共生進化』について説明するよ〜。まず、大前提として大型動物系の種族同士では『共生進化』は出来ません〜。だから『共生進化』をしたければ2枠目は慎重に選んでね〜?」

「あー、うん、それは何となく分かる」


 例えばクマとオオカミがどうやって共生状態になるんだという話になるもんな。……大きくても植物系同士なら可能ではあるのか……。共生って事は、扱いやすい組み合わせとかもありそうだな。……俺のコケは結構色んな種類と組み合わせ出来そうだ。


「そして、共生進化についてはここで行います〜!」

「え、ここでなのか!?」

「うん、そうだよ。『共生進化』したい2キャラをゲーム内の同エリアに移動してもらって、同じ進化階位同士なら僕が『共生進化』させるんだ〜! ちなみに同じ進化階位じゃないと出来ないし、進化しても進化階位も上がらないからね〜」

「……それで具体的にはどうなるんだ?」

「2キャラがくっついた状態になるけど、どっちのキャラでもログインは可能だよ〜。その状態でもう片方のキャラのスキルを使用する事も可能だけど、それには専用スキルが必要だから要注意ね〜!」


 ふむ、共生進化用の専用スキルもあるんだな。どんなもんだろう? 直接2キャラ操作ってのは無理なのかな。……流石に操作が複雑になり過ぎるか。


「ちなみにどんなスキルかは教えてもらえるのか?」

「それは大丈夫な範囲だね〜。えっとログイン中のキャラで使うのが『共生指示』ってスキルで、ログインしてない方のキャラがその『共生指示』を受け取る為に使うのが『半自動制御』ってスキルだよ〜。細かい事は実際に使って試してみてね〜」

「……移動とかはどうなんの?」

「そこは『共生進化』状態なら移動に関してはどっちからでも普通に操作出来るから安心してね」


 えーと、ログインしてる側の方で使うのが『共生指示』で、ログインしてない側の方が『半自動制御』か。……どんなスキルだ? 『共生指示』はログインしてない側の何のスキルを使うかを指定するんだろうけど、『半自動制御』ってどう使うんだろう。事前にスキルを登録しておくとか……? それだとまるで一発芸スキルだな。……いや、同じゲームなんだし同系統のスキルの可能性は充分あるのか。これは要確認だな。


 ここまでの情報でベスタが何をしていたのかなんとなく分かってきた。『融合進化』の詳細は分からないけど、それの前にも姿が既に変わっていたのは多分2ndのコケと1stのオオカミを『共生進化』させた状態だったんだろう。ベスタは多分オオカミ側でログインして、その『共生指示』とやらでコケの操作も同時にしていたって感じか。……ベスタの戦闘が見たかったな。

 ……そこから何かの条件を満たせば『融合進化』が発生するのか……? これはいったんに聞いても教えてくれそうにない気がする。


「他に何か質問あるかな〜?」

「……経験値とか、アイテムとかはどうなるんだ?」

「経験値は2キャラで半分ずつに分割になるよ〜。どっちかが上限レベルになってても分割はされたままだから、そこは要注意〜! 『共生進化』については僕に言ってくれればいつでも解除は可能だから、その辺も上手く活用してね〜。アイテムというかインベントリは選択式でそれぞれに開けるようになってるよ〜。『共生進化』中なら、どっちのキャラのインベントリのアイテムも出し入れは自由だからね〜」

「え、って事は共生進化を使って進化の輝石とか他のキャラに移せるのか!?」

「うん、出来るよ〜! あ、でも『帰還の実』とかの所持制限のあるアイテムや、イベント限定のアイテムは移動出来ないから注意してね〜!」


 これは地味に良い情報だな。アイテムの移動の為に一時的に共生進化をするという使い方もあるって事だ。ふむふむ、これはやれる事の幅がかなり広がるな。……ついでに進化の輝石の事も聞いておこう。どういう風になるかで、アイテムとしての重要性が変わってくるし。


「『共生進化』状態で纏属進化したらどうなるんだ?」

「2キャラ分が纏めて進化だよ〜。まぁその辺は実際に試してみてね。種族や属性によっては変化が大きいからさ〜」

「まぁコケが纏樹でコケ玉になるもんな……」

「あれは特に変化の大きい場合だね〜。ん〜ほんの少しだけ情報をサービスするよ〜。草花系とコケの『共生進化』はあんな感じ〜」


 よし、共生進化中でも纏属進化も可能か! そして共生進化の実例を1つ上げてくれた。そうか、草花系との共生進化はあんな感じになるのか。うん、イメージがつきやすい。共生進化は色んな種族であんな感じの進化になるんだな。


「まぁ複合進化を使いたい場合は基本的には2枠分のキャラが必要になるからね〜。まずはそこを用意するとこからやっていくべきかな〜?」

「……基本的には?」

「うん、基本的には!」

「……つまり基本的以外にも何かあると……?」

「そこは自分達で調べてね〜!」


 有るって言ってるようなもんだよな、これ!? ……思った以上に2枠目が解放された事で出来る事が増えてるっぽいな。……だから、ベスタはネタバレって言ったのか。当たり前のように広まってからなら別かもしれないけど、これは自分で到達して自分で確認した方が良い情報だな。


「あ、あとは『複合進化』で全体的に言える注意点ね〜」

「ん? なんか注意点があるの?」

「まぁ言わなくても分かる人は分かるんだろうけど、一応ね〜。2枠の性質の違うキャラを纏めて使うから色々と手間がかかる分だけ強くはなるんだけど、それだけ操作が複雑になったり、スキル数が増えて器用貧乏になったりする可能性もあるから気を付けてね。あと、種族ごとの相性もあるから必ずしも強くなる場合ばかりじゃない事も要注意!」

「当たり前といえば当たり前の話だな。……メリットばかりじゃ無いって訳か」

「そういう事〜! 1つの方向性をハッキリ決めていたりするなら、『複合進化』は使わずに『変異進化』や『転生進化』で強化していく方が強い場合も多いからね〜。全部を適度に混ぜ合わせていくのもありかな〜」


 あくまでも選択肢が増えるだけであって、それだけが全てじゃないって事か。あ、ベスタが言わなかった理由はここか! 迂闊に複合進化の話をすれば、伝聞情報が伝わっていく上でこの注意点が抜けてくる可能性がある! だからここはいったんに聞くべきなんだな。……とは言っても失敗する人も出るんだろうな……。


「あ、ちなみに『複合解除薬』は課金アイテムとして500円で買えるからね〜。ちなみに『複合解除薬』は進化前の状態に巻き戻るから、要注意!」

「そこは課金アイテムなのか!?」

「そりゃこっちも商売ですから〜! 注意点はちゃんと伝えたし、それで失敗した場合は無条件で救済とはいきませんとも〜! 相性が悪くても次の進化まで頑張るって手段もあるからね〜」

「……そりゃそうだ」


 むしろここは課金アイテムでも、失敗した際に元に戻せる手段があるだけマシというべきだろうか。ぼったくり価格っていうほどの値段でもないし。……ん? そういや共生進化って同じエリアにいる必要があるんだよな……? もしかして……。


「なぁ、『仲間の呼び声』って自分の別枠キャラにも使えるのか?」

「もちろん、使えるよ〜。っていうか、本来は『複合解除薬』と一緒に販売開始予定だった課金アイテムだからね〜!」

「あ、そうですか」


 あの『仲間の呼び声』って本来の用途はこっちがメインか!? まぁ1個は全員に無料配布されてるし、文句言う事でもないな。ここは太っ腹対応と考えておこう。あ、そういや追憶の実ってどうなったんだろうか。


「そういや追憶の実ってのがログイン場面で使えるってなってたけど……」

「あ、あれね〜。ちゃんと届いてるよ〜。使いたかったら、いつでも僕に言ってね?」

「ちゃんとあるんだな」

「使ってみる〜?」

「見れる場面って何がある?」

「えっと、『群集拠点種:エンの誕生』と、『群集支援種:ミズキの誕生』と、各クエストの開始演出と、終了演出だね〜。あ、これ君は全部直接見てるのばっかりだ〜」

「なんだ、そうなのか……」


 見たことあるのばかりだと、今無理に見ようとは思わないな。……そのうち見たい時に見返すけど、とりあえず今は良いや。これは他のエリア毎の追憶の実を貰う必要があるっぽいな。


「ちなみに『複合進化』に関する情報は喋ってもいいけど、『複合解除薬』の宣伝までは必ず話す事〜!」

「え……マジで?」

「……そうしないと僕ら運営側も、プレイヤー側も困る事態が起きるからね……? 面倒なら『ネタバレになるからいったんに聞け』で通して良いよ〜」

「そういう事か、ベスタ!?」

「まぁそういう人が多いみたいだからね〜」


 どうやらベスタが話さなかった1番の理由はこれのようである。……まぁ俺も同じ事をしそうなので人の事は言えないかもしれないけども。

 まだメンテナンスが終わるまで時間もあるし、メンテナンスが終わっても夜中の1時なので今日はここで終わりにしよう。


「それじゃこれで終わりにするよ」

「はいはい〜。お疲れ様〜。またのログインをお待ちしております〜」

「おう!」


 そして今日はログアウトして終わり。説明聞いているうちに日付変わってたけどね。今日は寝落ちしないように気をつけて、色々片付けて寝るとしますか。

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