第122話 調査の結果
地味に日付が変わるまでやった事なかったけど、この時間帯って昼の日から夜の日への切り替わりって徐々に暗くなっていくんだな。夕焼け空が結構綺麗だった。日付の変わる時間帯の特有の演出なんだろう。週末の休みにはこうやって昼と夜が変わっていく景色を堪能するのも良いかもしれないな。
それはともかくとして、寝る前に情報共有板に顔を出そう。ベスタの調査が終わってればいいな。
クジラ : うーん、どこのクエストをやろうかな……。
タコ : まさか海には2箇所も競争クエストがあるとは思わなかった。
マグロ : 海だけは3エリアが固まってるからな。よく考えたら他のエリアとは違う事になるよな……。
海エリアはそんな事になってるのか。基本的にはどこの初期エリアも他の群集の1つと繋がってるけど、海だけは3つだからそういう事になるのか。そうじゃないと競争クエストの存在しない海の群集エリアが出てくるしな。
コケ : 海エリアはちょっと特殊なんだな?
クジラ : あ、コケの人! この時間にいるのは珍しい!
海藻 : 明日が土曜だからじゃない?
コケ : まぁそんなとこ。海エリアも群集拠点種が誕生したんだってな?
クジラ : そうそう、あの特殊演出は凄かった!
海藻 : 森林エリアと森林深部エリアから、特殊演出があるのは分かってたからね! みんなで集まってお祭り騒ぎだったよ!
ネズミ : いーなー。海の群集拠点の特殊演出とか見てみたい。
ハチ : 俺も見てみたいから、運営になんか見れる手段くれって要望を送っておいた!
リス : それいいねー! 私も要望言っておこうー!
木 : お、その手があったか! ……もしかしたら元々準備されてる可能性もあるけど俺も要望送っとこ。
ライオン : ふっ、そんなものに頼らずとも自力で成せばいい事ではないか。
ヒョウ : 珍しいな、お前と意見が合うとはな。
木 : いや、あんたらは草原の主力なんだからもうちょい協力プレイしてくんない?
ライオン : 同点1位で同じPTで討伐など出来るか!
ヒョウ : こいつに雷の進化の輝石は渡さん!
草花 : あーまた始まった……。
木2 : これさえなければ楽なのにねぇ。
リス : 草原エリアの人達も大変なんだね?
草花 : ……もう恒例になりつつあるけどね。
そこからライオンの人とヒョウの人の言い争いが始まった。他の人の反応を見る限り、いつもの事のようで呆れられている。そうか、この2人がトップ争いになっているんだな。……まぁ進化の輝石は便利だからな。でもランキング以外でも入手可能なんだけど、そこまで意固地にならなくてもな……?
コケ : あれ、もしかして草原エリアってランキング報酬の取り合いで時間かかってる?
木 : まぁな……。とはいっても手は打ってあるが。
木2 : あ、多分そろそろだね。
<群集クエスト《地図の作成・灰の群集:『始まりの草原・灰の群集エリア1』》がクリアされました>
<群集クエスト《地図の作成・灰の群集》のクリア率:4/5>
あ、このタイミングで草原エリアのクリアが出たか。手を打ってるってのは他のメンバーで討伐してるって事だったんだな。まぁ、この感じだとその方が早そうだしね。協力し始めるのを待っていたらいつになるか分かったもんじゃないだろうし。
ライオン : なんだと!?
ヒョウ : なにっ!?
リス : 他の人に先を越されたね! 後は荒野エリアだけだね!
カンガルー: うーむ、最後になってしまったか。
カメ : とはいえ、後は特殊ボス残すのみ。なんとか近いうちにいけるだろう。
コケ : 荒野エリアの人達も頑張ってくれ!
カンガルー: おうともさ! 新しいクエストもやりたいしな。
さて残すところは荒野エリアの特殊ボスの回転草でよかったっけ……を残すのみか。そしたら『群集クエスト《地図の作成・灰の群集》』も完全クリアだな。全部終わったらなんかあるのかな……?
木3 : 草原の人達。注意逸しの役目、ご苦労さん。
木 : おう。これくらい問題ないさ。
草花 : そうだね。無事に倒せたんだ?
ライオン2: ちょっと苦戦したけど、進化の軌跡をフル活用でなんとかな。
ヒョウ2 : 喧嘩してたおかげでじっくり準備させてもらえたしな。
ライオン : 謀られたか!?
ヒョウ : げっ!? 1位も取られてる!?
トリ : 悪いね、雷は僕が貰っていくから。
ライオン : ヒョウめ、貴様が邪魔をしたせいで!
ヒョウ : それはこっちの台詞だ!
ライオン2: ……放っておいて、特殊演出を見に行こうか。
ヒョウ2 : ……そうだな。
あーまた喧嘩が始まった。発言を見た感じではトリの人が1位か。まぁ早いもの勝ちだし、これは自業自得だろう。おとなしく諦めて情報ポイント貯めて、それで交換すればいいんじゃないかな。
そして他の草原エリアの人達は2人を放置して、特殊演出を見に行ったようだ。折角の演出なのに喧嘩せず見に行けばいいのに、勿体無いな。……俺も他のエリアの特殊演出も見てみたいからログアウトする時にいったんに要望出しておこうっと。
コケ2 : なんだ、結局その2人は争い合った上に欲しかった物をどっちも取れずか。
コケ : お、調査終わった?
クジラ : コケの人が増えたー!? え、あれ?
リス : コケの人の増殖だー! いつもいる人の2枠目だよー!
マグロ : いや、別にユニーク種族なんかいないっぽいし、他にコケの人がいてもおかしくないだろ。てか、2枠目なのか!?
クジラ : え、2枠目の情報出たの!? 誰の2枠目ですか!?
海藻 : そういえば掲示板の方でそういう情報は見たね。
コケ2 : あぁ、そうか。こっちでログインしてるから表記はコケになるんだな。あれだ、いつものオオカミと言えば分かるか?
クジラ : あー! あの人なら納得!
ライオン : なるほどな。あの者であれば納得というものだ。
ヒョウ : 確かにな。で、調査ってのは?
木 : 当たり前のように書き込みしながら喧嘩してんじゃねぇよ、お前ら!? よく書き込みながら戦えるな!?
コケ2 : あー紛らわしいから、オオカミの方でログインし直してくる。少し待っててくれ。
……いや、ほんとその器用さがあれば充分にボス倒せたんじゃないか? ……うん、あんまり深く関わりたくもないから草原エリアの現地の人達に任せよう。それでベスタはオオカミでログインし直しか。まぁいつもの表記の方がみんなも分かりやすいだろうしね。
そんなに時間もかからないから『無自覚な討伐』と『地形を弄るモノ』の情報を話しておくか。
コケ : 今のうちに新称号の情報を話すけど聞く?
クジラ : オオカミの人はいいの?
コケ : すでに知ってるから問題なし。
海藻 : それならいいのかな? 教えてくださいな。
という事で軽く両方の取得状況を説明していく。こういうのももう慣れてきたもんだ。
クジラ : あ、『無自覚な討伐』って俺も持ってる……。
マグロ : うん。多分そうだと思った。
カツオ : むしろ持ってないと言われた方が疑問だったくらいだな。
クジラ : 微妙な内容だったから言わなくてもいいかなーって気になってた。
海藻 : 取得してないからよく分かんないけど『暴発』の使い勝手は微妙っぽいし、その気持ちは分かるかな。でも『地形を弄るモノ』の『行動値増加Ⅰ』は魅力的。
サル : 確かにな。あれの称号取得って可能だった上に、スキルが統合されるとはね。……後で試してみるとして、何をすれば取れるかな?
トカゲ : ……赤の群集相手に土の操作で落とし穴でも作ってみるとか……?
草花2 : あ、それ有りかも。試してみようっと。
サル : 自分達が落ちないように気をつけないといけないけど、それはいいかもな。
コケ : それは確かにありかも。でもどの程度を掘ればいいかは分からないぞ?
草花2 : その辺はやってみるから大丈夫。取得できるって情報があれば土の操作の熟練度上げのやる気も出るしね。
ネズミ : ま、その辺は試してみるしかないって事で。
クジラ : 海流の操作で岩場を攻撃したら取得出来るかな……?
マグロ : クジラの人、早まるな!?
タコ : あーせめてやる時は周りのプレイヤーの確認をしてくれな?
海藻 : っていうか競争クエストで他の群集相手にやって欲しい。
クジラ : ……そうだね。ここでは自重します……。
穴を掘るのはスキル取得の為にしか考えてなかったけど、競争クエストになってる森林エリアの方が穴は掘りやすそうだし落とし穴も有効かもしれない。っていうかクジラの人はやればすぐに取れそうだけど、周りの人達に止められてるな。うん、周囲には気を付けないとね。……人のこと言えないし、気を付けよう……。
オオカミ : おう、戻ったぞ。なんだ、あれの話をしてたのか。
コケ : オオカミの人、おかえりー。まぁ大体終わったとこだな。
リス : おかえりー!
クジラ : おー! ほんとにオオカミの人だ! おかえりー!
オオカミ : とりあえず2枠目の条件から話していくぞ。ここで教えた事は他の連中にも教えてやってくれ。
そしてコケからオオカミにログインし直して戻ってきたベスタが知っている2枠目の開放条件や、種族選択の条件、『常闇の洞窟』の重要性などを話していく。この辺は先に聞いていたから俺にとっては再確認だな。
クジラ : 2枠目ってそんな条件なんだ。早く作ってみたくなってきた!
海藻 : 確かに。でも別エリアだとほぼランダムかー。
リス : 悩みどころだよねー!
海藻 : うん。悩むね、これは……。
イノシシ : うお!? そろそろ終わろうと思って拠点に戻ってきたら興味深い話になってる!?
トカゲ : 2枠目の条件、マジか……。いや、俺はしばらくはまだこのキャラを育てるぜ! ……水龍も捨てがたいが、今は競争クエストに集中だな。
オオカミ : まぁ言った通り、他のエリアのキャラはまだ制限があるから狙ったものがあるやつは時間かけてもいいと思うぜ。それに伴い『常闇の洞窟』の本格的な調査をしてきた。
コケ : その時に俺のPTでちょこっと手伝いをしてたからな。
リス : コケで入るためにヒノノコの残滓をちょちょいとね!
クジラ : なるほど、そういう事かー! でもなんでオオカミじゃなくてコケで行ったの?
オオカミ : コケの慣らしと、見つかりにくいっていう特徴を活かす為だな。あと適応進化狙いだ。
サル : ほうほう。
トカゲ : 競争クエスト以外にも色々やってんだな、コケの人のオリジナル。
コケ : オリジナル!? ……ま、PTメンバー揃うまでは競争クエスト以外で色々やってるけどな。
クマ : この間の火の玉検証は色々役立ったもんね。
草花2 : 火の玉検証ね。あれは役に立ったよね!
リス : 何で火の玉なの? 水の玉じゃないの!?
クマ : あ、『火の玉検証』って通称だよ。突然火の玉っぽいのが現れたのが切っ掛けって事でそう呼んでる人が多いからね。
リス : なるほど! 分かったよ!
トカゲ : あーあれはいきなり……。まぁあれで色んな移動手段が確立出来たもんな。
あ、この前の発光+水球での移動のあれか! そういやあの後に検証会が行われてたんだっけ。この感じだと、結構な成果があったようだ。どういう形であれ役に立ったのであれば良かったよ。うん、あの時は急に驚かしてすみません。っていうか通称が出来てるんかい!
オオカミ : ……本題に戻していいか?
トカゲ : あぁ、すまん。続きを頼む。
オオカミ : とにかくだ、森林深部から入った『常闇の洞窟』が森林エリアに続いているのは確認出来た。おそらくは他の初期エリアにも通じているだろう。ただし、海エリアに関しては移動に懸念があったから黒の暴走種の出現分布もある程度は確認してきた。
コケ : お、その情報待ってました!
サル : 海にはそのままじゃ行けないもんな。
リス : 長時間、素潜りとかは無理だもんね!
海藻 : あ、そっか。そうなるよね。こっちは海水の球での地上移動は確立出来たけど、地上から海の中は厳しいもんね。
オオカミ : そういう事だ。識別を使って属性に海を持つ黒の暴走種が多くいる場所も発見した。基本的には出てくるのはほぼ成長体ばかりだな。
コケ : ほぼって事は例外も有り?
オオカミ : まぁな。未成体も確認はした。だが、未成体が出るのは行き止まりの奥だけで、こちらから手を出さなければ何もしてこないぜ。おそらくは未成体用の『進化の軌跡』を獲得する為の敵だろう。確認した未成体は全て海の属性を持っていたからな。
サル : って事は、海に行きたい場合は自分が成長体なら成長体の黒の暴走種を、未成体なら未成体の黒の暴走種から『進化の軌跡』を拾って、纏属進化で進めって事か?
トカゲ : それ以上先の進化階位なら陸地から行けとか言われてそうな感じだな。まぁ『常闇の洞窟』は2枠目の為のエリアってとこか。
海藻 : みたいな感じだね。これは他のエリアにも是非とも行ってみたいかな!
クジラ : クエストそっちのけで、『常闇の洞窟』に行ってみようかな?
オオカミ : そこら辺は個人の自由でやってくれ。
クジラ : あ、クジラが通れないような場所はあった!?
オオカミ : いや、見た限りではどこも充分に広かったぞ。ぎりぎりな所はあるかもしれんが一切通れないという事はおそらく無いはずだ。
マグロ : クジラの人、『常闇の洞窟』の方に行くのか……。競争クエストの主戦力が……。
海藻 : それは仕方ないよ。強制するもんじゃないって。
クジラ : あー! そっか、クエストもあるんだよね。うー悩む……。
オオカミ : 俺は一先ずの目処はついたから、競争クエストの方に参加するぞ。
トカゲ : お!? オオカミの人、こっちに参戦すんのか!
オオカミ : まぁな。調査クエストはまだ半分ってとこだが、あっちには時間制限がないからな。競争クエストはそうでもないんだろう?
トカゲ : おう。色々と大変な感じだから、人手があると助かる!
ヘビ : 整備クエストはのんびりでも問題ないけど、そっちが終わったら人手が欲しい感じ。
オオカミ : 優先順位は競争クエスト>整備クエスト>調査クエストって感じか。
サル : 多分そうだろうな。相手がいないとこは後回しでもいいだろう。まぁ対人戦が好みでない奴は競争クエストは避けた方が良さそうだけどな。
ふむふむ、となると競争クエストを終わらせてから『常闇の洞窟』の本格的な踏破をしようかな。ベスタの情報から海に行くのにも手段はちゃんとあるようだし、海まで行って海の種族を選択肢に加えて2枠目作成としますかね。
話題は競争クエストの現状の説明になってきた。そろそろ眠くなってきたし、この辺はトカゲの人っていうか紅焔さんに任せようかな。という事で、みんなに断りを入れて今日はログアウトする事にした。
さてと明日は軽く掲示板を確認してからLv上げを頑張りますか!
◇ ◇ ◇
さてログアウトして、いつものようにいったんの所にやってきた。胴体部には『眠い……』だけ。いや、12時回ってるから気持ちは分かるけど、そこは表示しないでおこうよ……。ほんと、この文字はどういう意図でやってるんだろうか。まぁ時々運営の人の人間らしさは垣間見えるけどさ。
「お疲れ様〜。今日は終わりかな?」
「おう。あ、そうだ」
「ん〜? 何かあったかな〜?」
「いや、なんかあった訳じゃないけど、ちょっとした要望をな」
「あ〜、もしかして君もかな? 特殊演出を後からでも見たいって要望かな?」
「大当たり。もしかして結構要望出てる?」
「まぁね〜。という事で、お答えします。ぶっちゃけその辺は実装済みなんだよね〜」
「……はい?」
「要望多いから情報の開示許可が出てるんだ〜。『群集クエスト《地図の作成》』のクリア報酬なんだよね〜」
「あーなるほど、そういう事か……」
まだ見る為の条件を満たしていないだけで、元々後からでも見れるようにはなっているのか。あーこれは下手に聞かないほうが良かったかもしれない。完全にネタバレじゃん。
「そういう事だから、その要望はクリアをお待ちくださいって事で〜。内容が内容だからお知らせには出さないからね〜」
「そりゃお知らせに盛大なネタバレは出せないもんな……」
「あ、ただスクリーンショットが撮りたいっていう要望は実装に向けて検討中だよ〜」
「お、そうなんだ」
「というかこっちは元々実装予定だったのが発売直前で変なバグが見つかって修正してただけなんだけどね〜」
「……バグなんかい」
それは果たして、言っていいことなんだろうか? あ、いったんの胴体の文字が変わった。『何をバラしてんだ、このAI!?』って、やっぱりバラしたら駄目な類の情報か。
「……あ、ヤバッ!? それじゃお疲れ様〜!」
「……まぁ、頑張れ管理AI!」
おそらくログアウトしたら、いったんはまた閲覧不可のログが増えるんだろうなぁ。なぜ言わなくていい開発事情まで喋ってしまうのか……。まぁ今回聞いたことは俺の心の内に秘めておくとしよう。
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