第107話 競争クエストの情報


「新エリアに入って早々にこんな激戦になるとは……。思った以上にルアーが強かった……」

「向こうもそう思ってそうだけどな」

「いきなりだけど、ちょっと休憩にしないかな?」

「賛成ー!」

「確かにちょっと休憩は欲しいかもね。……とりあえずケイさん、もう火は良いんじゃない?」

「あ、それもそうだな」


 ルアー達を焼いた後も、火の操作をしたままだった。うん、操作解除っと。魔法の火だからそれで全部鎮火した。

 でも周辺の木や草花は完全に燃え落ちてしまっている。群体化していたコケだけは見事に無事だけど。というか群体化してるコケは赤くなって火花が散ってるしね。ちょっとやり過ぎた。まぁ、どうも魔法の影響は回復しやすいみたいだし、そのうち回復するだろ。とにかく一旦休憩!


 あ、折角だから『発火』の確認しておこう。纏火の方は進化の軌跡で使い捨てだからな。進化してる間に性能確認しとかないと。


『発火Lv2』

 魔法の火を発生させ身に纏い、その火に触れた者に確率で火傷の状態異常を与える。発動中は行動値上限を3使用とLv分の魔力値を消費。火傷確率はLvに依存。任意でオンオフ可能。


 火傷の状態異常か。確かオフライン版では火傷は継続ダメージとHP回復阻害だったっけ。毒が効かない相手にも効いたんだよな。これは体当たりで突っ込むとか、攻撃された時のカウンターに使えそうだな。でも纏火は水との相性問題で威力の減衰があるんだよな……。それでも火魔法は結構な威力はあった気はするけど。

 うーん、火属性の攻撃が欲しい時は纏火は俺以外が使うほうがいいのか? この辺はケースバイケースで行くしかないか。



「うわっ!? なんだ、この惨状!?」

「見事に焼けていますね。紅焔以外にも火を使う人が既にいたとは驚きですね」

「お、紅焔さんとそのPTの人達か」


 色々考えながら休憩していたら誰か来た。誰が来たのか見てみればトカゲの紅焔さんと、小鳥の人とカブトムシの人か。小鳥の人がライルさんで、カブトムシの人がカステラさんだったっけ。うん、プレイヤー名を確認したら合っている。紅焔さん達は不動桜を倒した後はそのままこっちの森林を選んだのだろうな。


「って、ケイさんじゃないか? どしたの、この状況? ……見た目的に火の纏属進化を使ってるのか?」

「大正解。ちなみについさっき赤の群集のPTと1戦やった後だ。あー強かった」

「ホントだねー! イカの煙幕は戸惑ったよ!」

「ケイが空中戦を始めた時もどうなるかと思ったかな」

「それにしても相手に使われたら厄介だけど、纏属進化って便利だね」

「ま、なんにしても俺らの勝ちだったぜ」


 決して弱い相手ではなかった。ヒノノコ相手と戦っていなければ、暗視を取得していなければ、なす術もなく一方的に倒されていた可能性もある。まぁあくまでも可能性だし、結果は俺達の勝利だ。仮定の話をしても仕方ない。

 ……ただ、他の色んな種類の『進化の輝石』が欲しくはなったけど。よし、ポイント稼ぎを頑張ろう。あと今後もあるだろう色んなクエストも頑張らないとね。


「……なんか想像もつかない激闘を繰り広げてたみたいだな」

「しばらく休憩するから、大雑把でよければ説明するぞー」

「お、マジで! ライル、カステラ、ちょっと休憩がてら雑談していこうぜ」

「いいよ。そろそろ1回休憩したかったしね」

「……あれ、氷の纏属進化……? あ、ヨッシさんってあなたですか!?」

「そうだけど……? あ、ライルさんってランキング報酬の時の小鳥の人!?」

「はい、そうです。あの時の小鳥のライルです。あの時は譲っていただき、ありがとうございました」

「いえいえ、どういたしまして。私はあの時どうするか悩んでたし、氷は氷で便利みたいだから問題ないですよ」


 そういえば感謝してたって言ってたっけ。ライルさんは『進化の輝石・土』持ちになるんだな。あ、そういやカステラさんもランキングにいたんだっけ。という事はカステラさんが『進化の輝石・水』持ちか。

 地味にランキングの5人中4人が揃ってるね。うーん、機会があれば土も水も見てみたい。あんまり必要性は感じないけど興味本位としてね。


「そういえば、ほぼ初対面の人ばっかだっけ? そんじゃ自己紹介って事で俺はトカゲの紅焔だ」

「僕はカブトムシのカステラ。よろしくね」

「改めまして、小鳥のライルです。よろしくお願いします」


 それに合わせてこちらも各自、自己紹介を済ませていく。その後にルアーのPTとの1戦についてそれぞれの視点から語っていった。終盤の方は上空で戦ってた俺もみんなの様子は見れてなかったから、興味深いものである。

 イカがヨッシさんに凍らされた足を自分で切り落としたり、キツネの何かのスキルでサヤが混乱状態になり、一時的にサヤ対ヨッシさんになっていたとは思わなかった。カメレオンはカメレオンで、なんだかんだで範囲攻撃以外は最後にアルに捕まるまではほぼ全て避けきっていたというのも凄まじい。思ってた以上に、地上でも大激闘だったようである。


「相手も凄いが、倒したケイさん達も凄いな」

「うん、ヒノノコに勝ったっていうのも納得」

「どの群集にも強い人がいるってことなんですね」

「まぁこっちはそんなもんとして、そっちはどう? このエリア、どんな感じ?」

「あー多分このエリア、初期エリアの森林深部よりかなり広いぜ」

「競争クエスト情報板での情報からでは、どうも南北に長いエリアのようですよ?」

「ちょっと待った。なんだ、その競争クエスト情報板ってのは……?」

「あれ? そんなのあったっけ!?」


 アルが気になった点に食いついているし、ハーレさんは首を傾げている。俺もその名前に聞き覚えはない。なんだ、競争クエスト情報板って? 


「あれ? 情報共有板に情報は流したんだけどな。あ、もしかして微妙にタイミングが悪かった? エリア入ってすぐに赤の群集との戦闘だったとか?」

「まぁそうなるな」

「って事はこっちの新情報の発見と重なってた事になるのか……。って事はまだ……」


 俺だって入って早々に知り合い人のPTとガチ戦闘になるとは思ってなかったよ。その少し前に情報共有板は覗いたし、その時には無かった情報っぽい? 見つかったばっかりの新情報か。他の人達もしっかりと探索して、色々見つけているんだな。


「新情報って具体的にどんな情報なのかな?」

「まぁ凄く簡単に言えばNPCの木が見つかった」

「NPCはやっぱり木なんだ! クエスト絡みのNPCでいいのかな!?」

「おう、その通り。元不動桜で今は移動種の木だぜ」

「その木が今、この先の小さな湖の畔にいてね。会って話せばここのエリア内だけで有効な『競争クエスト情報板』ってのに登録出来るんだよ。僕達もさっき登録してきたところ。あと特殊なアイテムが貰えるよ」

「登録を終えて情報共有板に情報提供をしていたら、こちらの方から何やら空中で戦う方々の姿や、盛大な火の手が上がったのが見えましたからね。気になって見に来たんですよ」

「あーなるほど、そういう事か」


 紅焔さんの言葉に続け、カステラさんが細かく説明をしてくれる。そしてライルさんの言葉によって紅焔さん達がこの辺にいた理由も、俺らの所に来た理由も分かった。やっぱあれだけ盛大にやれば目立つか。

 そして、やはり元ボスの黒の暴走種には役割があるんだな。そういやまだ坂を下っただけでエリア的にはろくに進んでない。灰の群集の木のNPCがいるって事は赤の群集のもいるのか? とにかく探す予定の片方がすぐ近くにいるというのは朗報だ。……それにしても意外とNPCを探すのに手間取ったんだな。


「細かな内容も説明してもいいけど、ネタバレになるぜ? それでもいいなら話すけど」

「ネタバレになるなら聞かない! すぐそこの湖の畔なんだよね!?」

「今はですけどね。移動種だからか、あちこち移動しているようですよ? 1度会ってしまえばマップに表示されるようになるので問題ないですが」

「ちょ、移動すんのかよ!? あ、だから移動種なのか?」

「一定時間は所々で留まるようですので、今のうちに行ったほうが良いかもしれませんね」

「マジか!?」

「それなら、休憩を切り上げて移動した方が良いかな?」


 あちこち移動してたから発見に時間がかかったって事なのか。それが割と近場に居て、これからも移動していくのであれば居場所がわかっている内に行くほうがいいかもしれないな。

 もう少し早く知りたかった気もするけど流石に休憩は必要だったし、それに味方と交流を深められたから無駄な時間だった訳でもないか。


「その方が良いかもな。すまんケイさん、この情報は先に話しておくべきだった」

「いや、気にすんな。みんな、休憩終了。湖まで移動するぞ!」

「そだね!」

「ほれ、さっさと乗った乗った。サヤ、牽引頼む」

「アル、任せてよ!」


 素早くみんながアルに飛び乗って、移動準備はすぐに完了。今回は少し急ぎたいのでアルを引っ張って行く事になった。もうみんながスムーズに準備完了してる。うん、完全に移動拠点になってるな、アル。自分で牽引してくれって言ってるし。


「お、これが噂の大暴走の移動種か」

「いや、あの時みたいな大暴走はもうしないからな!?」

「あ、大暴走ってのは噂通りなのか。……まぁ、今度は誰も轢くなよ?」

「……大岩の時はホントすみませんでした!」

「いや、俺は別に気にしちゃいないけど、他のやつがそうとは限らんからな」


 あの時に轢いたのがアーサーと紅焔さんって事になるんだよな……。アーサーは別に良いとして、紅焔さんには悪い事をしたからな。ぶっちゃけ相手次第では面倒な事になっていた可能性は否定できない。極力他のプレイヤーは巻き込まないように気を付けないとな……。


「まぁケイの暴走は置いといてだ。紅焔さん達はどうするんだ?」

「ようやくNPCも見つかったし、今度はどこまでエリアがあるのか調べに南端まで行ってみる予定だ」

「そうか。お互い頑張ろうぜ」

「ま、『競争クエスト情報板』の登録さえしちまえば、情報のやり取りは楽になるからな。まだ登録人数は少ないけどな」

「その為にも急がないとね!」

「見つかったのがついさっきなら仕方ないだろうな。よし、移動される前に湖に急ぐか」

「おうよ! サヤ、アル、出発だ!」


 挨拶もそこそこに、移動を開始する。目指すはここから西に少し行った所にある小さな湖。正確にはその畔にいるらしい移動種のNPC。さて、ネタバレは避けて詳細は聞かなかったけど、どんな内容なのか確認して『競争クエスト情報板』とやらの登録に行こうじゃないか!


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