第96話 宅配便と掲示板その7


 翌朝、目覚ましの音で目が覚める。今日は時間は大丈夫だけど、なんだかいつもより薄暗い。


「……なんだ、今日は雨なのか」


 耳を澄ませば、外から雨音が聞こえてくる。6月に入ったのでそろそろ梅雨入りの季節である。雨続きになると大変だけど、降らなきゃ降らないで大変だしな。とりあえずさっさと起き上がって朝飯食うか。


 1階に下りてきたら、ちょうど母さんが玄関にいた。これから出勤ってとこか。


「あ、圭ちゃんおはよう。今日はちゃんと起きたんだね」

「母さん、おはよう。いや昨日はちょっと焦った……」

「それじゃ先に仕事に行くね」

「おう、行ってらっしゃい」

「あ、そうだ。もしかしたら今日、宅配便が届くかもしれないから帰ってきてたら受け取りお願いね」

「ほいよ」


 なにか宅配便が届くのか、なんだろう? 一昔前に不在時の再配達が大変だという事だったらしくて、今は情報管理を徹底して基本的に望んだ通りの時間に届くようになっている。家庭用のホームサーバーを利用した生体認証配達制度だっけか? どこの家庭にも当たり前のように使われているホームサーバーからサービス登録をしておいて、登録済みのその家の人の生体認証と位置認証をして配達を頼めば、すぐに配達してくれるようになっている。一昔前とは随分変わったと父さんと母さんは言うけども、昔を知らないからな……。

 まぁ配達可能な地域まで宅配便が来ていれば、在宅中に配達頼めば即座に配達してくれるって事だな。多分、俺が一番早くに家に帰るからその都合だろう。


「それで届いたら連絡ちょうだいね? それによって晩御飯の内容が変わるから!」

「……どゆこと? なんか食材でも頼んだの?」

「それは届いてからのお楽しみって事で。圭ちゃん、任せたよ!」

「ま、それならそれでいいか。とにかく帰ってきてから受け取れるようなら受け取っとけば良いんだな」

「そういう事。それじゃ行ってきます!」

「行ってらっしゃい」


 さてと母さんの見送りも済んだ事だし、朝飯っと。あ、メニュー的にこれは晴香の寝坊対策か。ドタバタと2階から音がし始める。やはり好物のピザトーストの効果は抜群だな。焼き始めたら速攻かよ。


「おはようー! 兄貴!」

「相変わらずこれの時は寝起きが良いな」

「まぁね!」


 さてと、さっさと食って学校行くか。


「そうだ! 兄貴、今日帰って来たら宅配便がーー」

「あーそれならさっき母さんから聞いた。てか晴香の方が先に聞いてたのか?」

「あ、それは違うよ。私宛の荷物だからね!」

「そうなのか? 中身なんだよ?」

「それは届いてからのお楽しみって事で!」


 内容は母さんも晴香も教えてくれないようだ。晴香に自力で買う金があるとも思えないから懸賞か何かを当てたのか? まぁ悪い話ではなさそうだし、晩飯に関わるって事は食材系なのは確かだな。楽しみにしとくか。



 ◇ ◇ ◇



 そして雨の中で傘を差しながら学校へと向かう。すると机に突っ伏している慎也がいた。病気でも1日で復帰か。


「あー雨の日って嫌いだ……」

「朝からどうしたよ?」

「雨の中の自転車通学1時間は色々とキツイんだよ……。特に病み上がりだとさ……」

「なるほどね。昨日は仮病かと思ったけど本気で風邪だったんだな」

「……あれ? それ、どこで聞いた?」

「昨日、水月さんとアーサーに会ってそこで聞いた」

「あーなるほど。あっちにはログイン出来ないとは連絡入れたからな……」


 まぁあの2人に会ったのは単なる偶然みたいなもんだけどな。サヤたちが居なけりゃ、俺は多分遭遇してなかったし。


「そういやアーサーって随分変わったな?」

「具体的にどうだったか知らんけど、圭吾に倒された後からの雰囲気は元々あんなだぞ?」

「やっぱりあれが素なのか。って事はその前が特別荒れてただけか……?」

「まぁな。だから俺もあんな風になってるとは思わなくてな……」

「なるほどなぁ……」


 ゲーム内で会った相手とはいえ、中身は現実での生活もある人間だという事だな。仮想現実とはいえその辺りは切り離す事の出来ない事なんだろう。いや、切り離してはいけない事と言うべきか。


「おら、さっさと席につけ」

「そんじゃまた後で」

「おう」


 教師が来たので、さっさと引き上げよう。雑談してたら掲示板を見る暇が無かったな。

 


 ◇ ◇ ◇



 よし、とりあえず授業は1時限目は終わりっと。授業の合間の休み時間に掲示板を見ていこう。とりあえず総合情報スレからだ。さて、どんな感じだろうか?



【新エリア】総合情報スレ その11【進出開始】


1:通りすがりのモンスター

 ここは総合情報スレになります。

 各種エリア、新種族、クエスト情報など総合的に扱っています。


 深く掘り下げたい場合は各種情報の専用スレにお願いします。



 前スレ

 http://*************




68:通りすがりのモンスター

 よっしゃ! やっとボス倒せた! ……残滓だけど。


69:通りすがりのモンスター

 残滓の討伐報告はいらねぇよ……。


70:通りすがりのモンスター

 いや、なんかつい……。

 とりあえずこれで新エリアに行ける!


71:通りすがりのモンスター

 新エリアもあちこちにあるからな。

 具体的な目的地が設定されてないからどこに行くかで悩むな……。


72:通りすがりのモンスター

 悩める人は良いな!?

 俺は一箇所しかボスは倒せてないから、そもそも選択肢がねぇよ……。


73:通りすがりのモンスター

 所属群集と初期エリアによるだろうけど、ボスの周回してる奴もいるらしいしPTに入れて貰えば?


74:通りすがりのモンスター

 なんと、そんな手が!?

 ……なんで周回してんの?


75:通りすがりのモンスター

 進化の軌跡狙いだよ!

 現状、ボスの残滓からしか手に入らないからな。


76:通りすがりのモンスター

 そもそも使い捨てだからな。

 使い捨てじゃないのが欲しい……。


77:通りすがりのモンスター

 そんなのあるの?


78:通りすがりのモンスター

 さぁ?


79:通りすがりのモンスター

 くっ、言いたい!

 だが、言えば情報漏えいになる!?


80:通りすがりのモンスター

 >>79

 おい、何を知っている!?

 所属群集具体的な内容を吐け!


81:通りすがりのモンスター

 ふっ、言う訳がないだろう!


82:通りすがりのモンスター

 赤の群集だが、そんな情報は知らんぞ?


83:通りすがりのモンスター

 灰の群集でも特にそんな情報はないぜ?


84:通りすがりのモンスター

 ならば青の群集か!?

 ……青の群集に期待出来ないか……。

 どこだ、嘘をついてる群集は!


85:通りすがりのモンスター

 ちょっ!? 青の群集を舐めんなよ!

 ……でも否定しきれないのが悲しい。


86:いったん

 なんか面白い事になってるけど、これは僕は口を出さないほうが良いかな〜?


87:通りすがりのモンスター

 おら、いったん!

 あるのか、ないのか吐けやこら!


88:通りすがりのモンスター

 そうだな、いったんから情報を仕入れたらいいんだ!


89:いったん

 あ、しまった!? これは罠!?



 ……何やってんですか、これ。これって要は『進化の輝石』の存在の有無についてなんだろうけど、意味深な事だけ言って情報開示しないとか、知らないと嘘をついてる灰の群集の人もいるみたいだし……。とりあえず他の群集にはまだ『進化の輝石』の情報は無いんだな。

 うん、とりあえず掲示板で情報戦をやってる灰の群集のプレイヤーがいる事はよく分かった。掲示板は参考程度でゲーム内の情報共有板の方が重要だな。

 そして相変わらずいったんは情報漏洩を狙われてると。ご愁傷様です。



 ◇ ◇ ◇



 そして昼休み。いつものように慎也と弁当を食べながら掲示板を眺めていく。


「そういや今ってメンテナンスの真っ最中だよな?」

「掲示板は普通に見れるけどな。おっ、気になる新スレ発見!」

「お、どんなの?」

「『新エリア情報スレ』だってさ」


 慎也が見つけた新スレにアクセスしてみる。ゲーム自体はメンテナンス中でも掲示板は稼働中なのはありがたいな。お、あった。これか。



【新たな】新エリア情報スレ その1【舞台へ】


1:通りすがりのモンスター

 ここはボスを討伐した先にあるエリアの情報スレになります。

 群集の表記は必要ないので、どんなエリアがあったのかを語り合いましょう。

 いや、切実にこの情報って気になるんですよね。


2:通りすがりのモンスター

 スレ建てお疲れ様と言いたいが、そこに自分の願望を直接書くのはどうなんだ……?

 いや、気持ちは分かるけど。


3:通りすがりのモンスター

 まぁそのくらいは次のスレで直せばいいだろ。

 ちなみに森林深部エリアから繋がるエリアに高原エリアがあるぞ。


4:通りすがりのモンスター

 おぉ!? 早速新情報!


5:通りすがりのモンスター

 高原エリアか。

 と言うことは森林深部エリアの高い側のエリアになるのか?


6:通りすがりのモンスター

 明確にどことは言わないぞ?

 それは自分で確かめろ。


7:通りすがりのモンスター

 確かにそれもそうだな。

 俺は湿地帯なら確認したぞ!

 リアルならハイキングとかに良さそうな場所!


 直接歩いたら足が沈んだから撤退したけども……。


8:通りすがりのモンスター

 湿地帯って足が沈むの!?

 そういやそういう観光スポットって木張りの足場とかあるし、当然と言えば当然か……。


 湿地帯は移動になんか対策が必須なのか……?


9:通りすがりのモンスター

 種族によるっぽい。

 大型モンスターは対策必須な感じ。

 小型の人は少し気を付けながらだけど歩けてたし。


10:通りすがりのモンスター

 沈みきって死ぬのを何回か繰り返せば、適応進化が発生したぞ!

 ただし、結構な苦行です……。

 嵌って身動き取れなくなるのは一瞬だけど、沈みきるのに地味に時間かかる……。


11:通りすがりのモンスター

 >>10

 可能ならで良いんだけど、どう進化するのか教えてもらえないか?


12:通りすがりのモンスター

 そのくらいの情報なら誰かが試すだろうし別に良いぞ。

 なんか水かきみたいなのが出来て、『湿地移動』ってスキルを覚えるね。

 後は特に変わらず。あ、土属性が付いたか。

 進化階位は変わんないね。


13:通りすがりのモンスター

 なんとも微妙な進化……。

 重量のあるモンスターでなければ問題はなさそうか…?


14:通りすがりのモンスター

 移動種の木のプレイヤーがいれば案外いけるっぽいぞ?

 水分吸収で水気を抜けば一時的にだが、歩きやすくはなるらしい。

 ちょっとしたらすぐ元に戻るそうだが……。


15:通りすがりのモンスター

 マジで!?

 あー単独で突っ込んだのが失敗だったか……。




 ほうほう、これは中々有用そうな情報だな。なんとなく沼ガメの先が湿地帯な気もするし、参考にさせてもらおう。高原エリアといい、湿地帯エリアといい、なんか灰の群集の情報な気もするけど、一番重要な情報だし良しって事にしておこう。



16:通りすがりのモンスター

 別のエリア情報を投下!

 荒野エリアからは砂漠エリアに繋がってたぜ!

 更に過酷なエリアだけど、だがそれが楽しいのさ!


17:通りすがりのモンスター

 砂漠かー。

 オフライン版だと特に暑さとかは感じないようになってたけど、その辺どうなん?


18:通りすがりのモンスター

 体感気温は特に何もないぜー。

 だけど、対処せずにいれば脱水って状態異常になってジワジワとHPが減り、そして死ぬ!


19:通りすがりのモンスター

 おう……。

 やっぱりエリアによっては進出自体に事前準備が必要な場所がチラホラあるのか。

 対処はやっぱり適応進化?


20:通りすがりのモンスター

 多分それでもいけるけど、水があれば割となんとかなるぜ?

 水魔法でもいけるけど、普通の水よりは効果は短くなるから要注意。

 まぁその辺は種族次第だな。

 乾燥耐性の固有スキル持ちの種族もいるらしいしな。


21:通りすがりのモンスター

 進出厳しそうなエリア状況の後では物足らないかもしれないけど、初期エリアとは別の森林エリアに繋がったりする場合もあったぞ。

 昨日のお知らせにあった苦手生物系統に分類されそうな種族が出現するようになってた。クモとかムカデとかその辺のやつ。


 あと、なんか……いや、これは教えられないか。


22:通りすがりのモンスター

 あー、そういうパターンもあるのか。

 それについては群集内で苦手生物フィルタの使用を呼びかけといた方が良さそうだな。


 教えられないって、何がある!?


23:通りすがりのモンスター

 すまんな。内容的に教えたら優位性がなくなる。

 自力で頑張ってくれ!


24:通りすがりのモンスター

 ん……? 灰の群集のプレイヤーが新しい森林エリアで駆け回ってたのと何か関係が……?

 そういやカーソルの上に見覚えのないようなものがあった気も……。


25:通りすがりのモンスター

 また灰の群集か!?

 そういや、新エリアってまともな名前が無かったりするよな……?


26:通りすがりのモンスター

 ……もしかして、なんかクエストでもあんのか!?


27:通りすがりのモンスター

 ふっ、あったとしても自分達の群集でやるべき事だろう!


 あ、青の群集の人には悪いけど、あのクジラは地味に役に立ったわ。


28:通りすがりのモンスター

 あのクジラ、どこまで悪影響残して行きやがった!?

 ……って待てよ。おい、そのクエストってもしかして群集拠点種絡みか!?


29:通りすがりのモンスター

 あ、やば!? 言い過ぎた!?



 そっか、出現パターンが変わるだけの同系統のエリアとかもあって、そこでは初期ランダムから除外された生物も出現し始めるって事なのか。不動桜の先のエリアがもしかしたらそんな感じか……? なんかクエストやら群集拠点種絡みやら気になる点はいくつかある。実際に行ってみないとはっきりはしないけど、それなりに参考にはなるかな。


「圭吾は新エリアはどこ行くんだ?」

「……シレッとどのエリアに繋がってるか、探ってきてるよな?」

「あ、やっぱりバレた? まぁ俺は不動種だし今は関係ないといえば関係ないんだけどな?」

「そういや、不動種はどんな感じだ?」

「聞いてる感じだと、早く特殊ボスを倒して俺のいるエリアにも群集拠点種が早く欲しいな。不動種には支援行動ボーナスって事で同エリアの群集拠点種からの経験値供給があるらしくてな」

「ほう、そりゃ確かに群集拠点種は欲しくなるな」

「その辺は灰の群集の方が情報多いんじゃねぇか?」

「それもそうだ。今日ログインしたら聞いてみよっと」


 昨日はあちこち移動して色んなプレイヤーと会ったしな。その中にもちろん不動種の人もいた。その人に聞いてみても良いし、情報共有板で聞いてみるのも良いか。って、昼休みももう終わりか。教室戻らないとな。


「ちょっとくらいは灰の群集の方の不動種の情報も教えてくれよ」

「まぁ気が向いたらな」


 なんだかんだで慎也も赤の群集の情報を教えてくれたりもしてるからな。少しくらいなら影響のない程度に教えてもいいだろう。



 ◇ ◇ ◇



 そして放課後がやってきた。今日は結局、1日中雨だったな。慎也が雨を見てため息をついている。


「そんじゃまた明日な!」

「歩いてすぐの圭吾は楽でいいよな!?」

「頑張れよ、自転車通学!」

「あーくそったれ!」


 文句を言われても家の近さは学生の俺らにはどうしようもないもんな。さて、さっさと帰って宅配便が配達待機になってるか確認して、配達可能なら配達してもらわないと。




 雨の中を歩いて、帰宅する。さて、ホームサーバーを確認してみるか。お、宅配便は配達待機になってるな。それなら生体認証と位置認証をして、配達依頼を出しておこう。これで1時間以内くらいには配達されるはず。

 配達されるまでは流石にゲームはお預けだな。ゲーム内に通知は来るから対応は出来るけど、今のうちに宿題とかでも済ませて置くか。


 一時間ほど経った頃にホームサーバーからなんか通知が来ていた。家族全員分の携帯端末は連携登録をしているので、携帯端末の方から確認してみるか。なになに? 「雨天による配達遅延のお知らせ」か。そういやさっきから雨足強まってたし、これは仕方ないかな。……これ、晴香は電車の遅延の影響受けてたりするかもな。


「たっだいまー! あーギリギリ遅延に巻き込まれずに帰ってこれたよ!」

「おー、おかえり」

「ねぇ、兄貴! 宅配便は届いた!?」

「あー、雨の影響で配達遅延だとさ。まぁもう少し待ってたら来るだろ」

「あちゃー、そっちが雨の影響受けちゃったか」

「とりあえず結構濡れてるから、さっさと着替えてこいよ。風邪引くぞ?」

「うん、そうするねー!」


 さてと、後は宅配便の到着を待つだけか。って思ってたらチャイムが鳴ったな。宅配便が来たか! ホームサーバー経由で玄関前の様子が携帯端末の方に映し出される。うん、宅配業者だな。受け取りに玄関へ行こうか。


「お届け物です」

「はい、雨の中をご苦労さまです」

「いえいえ、これが仕事ですので。こちらに受領コードの発行をお願いします」

「はいはいっと」


 受け取ったという電子証明を俺の携帯端末から、宅配便業者の業務用端末へと送信する。これで受け取りは完了だ。結構な大きさの冷凍便か。さてさて、一体中身はなんだろうかな?


「……内緒にされっぱなしってのもなんだし、送り主と品物くらいは見ておくか」


 個人情報保護という点で、発送主と業者と受取人以外には内容物も発送者も情報が読み取れないようになっている。まぁ家族間でホームサーバーを共有していれば問題なく見れるから問題なしっと。


「えーと、発送者が『四ツ谷雫』さんで、中身は『タラバカニ』か」


 なるほど、カニときたか。家族全員カニは好きだし、そりゃ楽しみにって言う筈だな。……ん? でもカニですと……? なんかつい最近カニを送るとかいう話を聞いた気もするんだけど……。いやまさかなぁ……?


「あ、届いたんだね!」

「……中身ってカニなんだな?」

「あ!? 兄貴、見ちゃったの!?」

「まぁ気になってな? それでこの送り主は……?」

「私の友達のヨッシ……じゃなくて雫だよ! 去年までは小学校の頃からずっと一緒だったんだけど、この春に引っ越しちゃってね?」


 今言いかけたヨッシって名前に、今年の春に引っ越しか。思いっきり聞き覚えがあるな。……これはあれだな。ここまで状況が合致すればもうほぼ確定か。いや、一応最後に1つ確認しておこう。これも合致した上で違ってたら、そっちのほうがどんな偶然だよって話だし……。


「そういや、晴香って今オンラインゲームやってるって言ってたよな? なんてゲーム?」

「……兄貴、いきなりどうしたの? 今やってるのは『Monsters Evolve Online』ってゲームだけど……」


 やっぱりか。もうここまで情報が揃えば確定だな。まさかこんな偶然があるとはびっくりだ。


「晴香、お前がリスのハーレさんか」

「え!? なんで兄貴がそれ知ってるの!?」

「俺も今、『Monsters Evolve Online』をやってんだよ」

「え、ホント!? それじゃ、どっかで会ってたのかな? 兄貴は何のキャラをやってるの?」

「コケだよ、コケ。プレイヤー名はケイだ」

「……え? ……えっ!?」


 流石にビックリしたのか、晴香の動きが固まった。まぁびっくりするよな。まさか一緒にPT組んでた相手が兄妹だったとは……。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る