第53話 コケの環境適応


 アル達がみんな進化して赤の群集の森林エリアに出発して少し経った。まだ出発して間もないから今のうちならまだなんとか……。


<環境適応外の為、群体が全滅しました>

<リスポーンを実行しますか? 『群体分離』場所へ / ランダムリスポーン>


 これで死亡は49回目。多分出るならキリのいい数字になるはず。ここで変異進化が出れば追いつく事も十分可能な筈! さて、進化来い! 最後になる事を祈ってランダムリスポーンだ!


 えーと、何処に出たかな? あ、ここ見覚えあるからいつもの川の近くだな。とりあえず、ここで50回目の死亡を待とう。


<環境適応外の為、群体が全滅しました>

<環境適応外の死亡が規定数を越えたので、適応進化が発生します>


 おぉ! やった、適応進化来たぜ! あ、でも適応進化ってするかしないかの確認は出ないんだ。転生進化と同じような感じでポリゴンとなって今のコケは砕け散った。さらば死ぬ為だけの『水棲コケ』よ。君は役目をちゃんと果たしてくれた。


<『水棲コケ』から『水陸コケ』へと適応進化しました>

<属性:土の獲得により、スキル『適応環境外での死滅』は失われます>


 そしてリスポーンしたのは『群体分離』で作ったリスポーン位置。進化の際はリスポーン位置を設定していれば自動選択されるみたいだ。適応進化は転生進化の特殊版みたいな扱いかな? そして、嬉しいことに各種進化ポイントは不要ときた! とりあえずステータスの確認だ!



【ステータス】


 名前:ケイ

 種族:水陸コケ

 所属:灰の群集


 レベル 1

 進化階位:成長体・複合適応種

 属性:水、土

 特性:複合適応


 群体数 1/1000

 魔力値 40/40

 行動値 21/21


 攻撃 7

 防御 15

 俊敏 6

 知識 15

 器用 15

 魔力 20



 おぉ!? ちょっとだけど、ステータス微増してる。そして属性も増えた! 予想通りではあるけど、適応進化では進化階位は上がらないんだな。そして特化適応種から複合適応種に変化してるな。そしてさらばデメリットの塊の『適応環境外での死滅』よ。君のおかげで適応進化が出来たよ。

 さて種族の確認をしてみよう。


『水陸コケ』

 水の環境下に特化した『水棲コケ』が、それ故に幾度となく死を迎えた為に地上に適応するべく進化したコケ。『水棲コケ』程ではないが非常に水への親和性は高く、陸地での生存の道も手に入れた。ただし、乾燥に対する耐性は減っている。変異的環境適応型のコケである。



 よし、これなら何にも問題なし! 多分だけど単純に『ミズゴケ』に進化するより水の適性上がったんじゃないか? さてポイントの心配も要らなくなったし、アルにストップをかけられていた例のスキルを取得しようじゃないか!


<増強進化ポイント15、融合進化ポイント15、生存進化ポイント15を消費して、スキル『魔力制御Ⅰ』を取得しました>

<『水の操作』『魔力制御Ⅰ』により、『水魔法』を取得しました>


 ……あぁ、なるほど。操作系スキルと魔力制御スキルの両方を手に入れたら魔法が取得出来るのか。そりゃ取得ポイント高いよなー! とにかくだ。


「よっしゃー! 魔法スキルゲットー!!!」

「なん……だと……!?」

「え、ケイさんそれ本当!?」

「あ、ケイさんまた進化してる。ランダムリスポーン終わったんだ」

「ケイ、おめでとう!」


 それぞれ、色んな反応をありがとう! 岩の操作からは魔法の取得が無いってことは『魔力制御Ⅰ』では足りないって事か? やっぱりこの系統の名称のスキルはⅡやⅢがあるんだろうな。


「おい、ケイ! 取得条件は!?」

「ケイさんは何の魔法スキルを手に入れたの!?」


 お、情報大好きのアルとハーレさんがやっぱり情報を欲しがって来るね。まぁ隠すつもりもないからさっさと教えよう。


「俺が手に入れたのは『水魔法』だな。取得条件は、『水の操作』と『魔力制御Ⅰ』の両方を取得する事」

「さっきストップかけた例のスキルか! あれと操作系スキルか……。よし、ポイント足りるな」

「あ、アルさんも操作スキルあるよね!?」

「そう思って俺も『魔力制御Ⅰ』取ってみたぜ。大当たりだ。『根の操作』と『魔力制御Ⅰ』で『樹木魔法』だとよ」

「操作スキルって、魔法スキルの前提スキルなんだね! ケイさん、アルさん、魔法スキルの詳細は!?」

「ちょっと待ってて」

「俺の方もよく読んでみるわ」



『水魔法』

 魔力値を消費して水を生み出し、水に関する現象を再現、強化する。威力はLvと魔力に依存。消費行動値はLvに依存。消費魔力値は使用魔法のLvと『水の操作』の消費行動値との乗算。


【水魔法Lv1:アクアクリエイト】 消費行動値:1 消費魔力値:4

 行動値と魔力値を消費して水を生成する。『水の操作』にて操作可能。


 おぉ、これは水を自分で用意できるのか! 魔力値は自然回復と魔法スキル以外での攻撃で回復になってるんだな。後で回復量がどの程度のものなのかも確認しとかないと。

 そして『水の操作』のLvが非常に重要って事だ。『水の操作』はLvが上がれば使用行動値が減るから、そっちのLv上げも重要か。『水の操作』はLv3の時に消費行動値が1減ったからLv5か6でもう1減るんじゃないかって気はしている。



「推測だが、魔法はLvが上がる毎に使える魔法が増えそうな感じだな」

「お、アルの方もそんな感じか。あと操作系スキルのLvも重要な感じだ」

「まさか消費魔力値が使用魔法のLvと操作系スキルのLvとの乗算とはな……」

「ふむふむ、これってケイさんが操作系スキルの取得方法の情報を公開したのが凄い事になるんじゃない?」

「そうだろうね。私も操作系スキルがもっと欲しくなってきたよ」

「そんなサヤに朗報! 取得可能スキルの一覧に操作系スキル発見! スキルに応じて必要なポイントの種類が違うけど一律20とか結構きついけどね」

「称号での取得が近道なんだね」


 進化したらあちこちに新要素が開放されたようだ。それにしても『魔力制御Ⅰ』との組み合わせで手に入るのは魔法スキルだけなのか? まだ何かありそうな気がするけど、まぁ後々検証していけばいいか。今は、とにかく……って、あー!?


「……なぁ、アル? そこに水月さんいるんだよな?」

「あっ!? しまった、いつものつもりでベラベラと喋って!?」

「アルさん、失敗しちゃったよ!? ……え? 水月さん、代わりの情報くれるの!?」

「へぇ、そういうスキルもあるんだね。あ、でもポイント足りないかな」

「あー私もポイント足らないや。ポイント貯めなきゃね」

「水月さん、ありがとね!」


 いかん、水月さんの発言が聞こえないから何がなんだか分からない。


「ケイ、水月さんから魔法と操作系スキルの情報の代わりに、前衛向けの魔力使用のスキルを教えて貰ったぞ」

「え、マジで!?」

「『自己強化』と『魔力集中』だとよ。『自己強化』は魔力値消費で一時的にステータスアップ。『魔力集中』は魔力値消費で指定した自身の一部の攻撃に魔力ダメージ付与だとよ」

「お!? 確かにそれは前衛向けだな。ポイント取得か?」

「今のところポイント以外では取得方法見つかってないとさ。とりあえず、サヤとハーレさんが『魔力制御Ⅰ』だけ取得出来たけど、残りはポイント不足だとよ」

「流石に一気に消費したらポイント足りないもんな」


 まだ他のみんなは『魔力制御Ⅰ』を使うのには色々厳しいらしい。まぁかなり有用なスキルっぽいし、地道にポイント集めて取得するのが確実なんだろうな。


「さてと、とりあえず情報交換はこれくらいにしといて合流するわ!」

「まだ赤の群集の森林エリアまで行ってないし、ケイなら追いつけるか」

「のんびり進んでるから、待ってるね」

「ケイさんも揃って、みんなで赤の群集に殴り込みだー!」

「いや、ハーレ、それ目的違うから」


 なにはともあれ、進化も果たしたし合流出来る範囲内の時間にも収まった。それじゃ合流しにレッツゴー!


「あー、くそったれ! 俺が何したってんだよ!?」

「あっ……」

「あぁん!? コケか、水月はどこに行ったよ!?」


 イノシシが復活してきた。あー露骨に不機嫌そうだし、相手にしたくないから無視して行こう。水月さん、リアルでどういう対処をしたんだろうか? まさかこんなタイミングで戻ってくるとは……。


「おい、コケ! 無視すんじゃねぇよ!」

「あーアル、水月さんに伝言頼める?」

「ん? 別に良いがどうしたよ?」

「イノシシが復活してきてなんかキレてるんだよ……」

「……なるほど。わかった、伝えとく」


 さて、いい加減このイノシシには苛立ってるし、どうしてくれようか。とりあえずは水月さんの返答待ちってとこだけど。轢いた事とかもう知るか。



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