第33話 ポイントでスキル取得


 情報共有板での聞き込みの結果を簡単に言えば成果なしだった。結局のところ、俺たちの倒したフクロウや負けたツチノコ、ヨッシさんとアルの巣の事など、新情報に対しての質問攻めにあっただけである。色々考えてみてくれてたけれど、これぞというアイデアはなかった。望む情報が絶対にある訳ではないから仕方ないけどさ。


「ま、そういう事もあるさ。こればっかりは仕方ないって」

「それもそうだな」


 とりあえず自力で戻る事を考えよう。結構距離があるとはいえ同じエリア内だ。このくらいの距離で困っていてはそのうち行くことになる他のエリアに移動とか無理になってしまう。『黒の暴走種』にさえ気を付ければなんとかなるはずだ。


 それはそうとして取ろう取ろうと思いつつ後回しになってたスキル取得をそろそろやろうじゃないか。今あるポイントは増強進化ポイントが24、融合進化ポイントが22、生存進化ポイントが19だ。進化予定の『ミズゴケ』に増強進化ポイントが5必要だから、その分は残しておかないと。

 とりあえず前に気になってた『増殖』とやらを取得してみよう。確か融合進化ポイント10だったはず。もしかしたらこれは結構重要なスキルな気もしている。他のスキルに比べて必要ポイントも多いし。よし、取得完了。詳細表示っと。


『増殖Lv1』

 既存のコケ以外に自らコケを生み出し、群体数を増やす事が可能となる。ただし、充分な水分を必要とする。群体化解除で切り離す事も可能。増殖量はLvに依存する。


 お! これはやっぱり重要なスキルだな。コケのないところにコケを生み出せるわけだ。でも水分が必要ってのがちょっと厳しいか? なんだかんだで水の操作で割と水を消費しているしな。

 これでツチノコにコケを焼き尽くされたりした後にも水さえあれば、コケの復活もできる訳だ。……すぐにまた燃やされそうな気がするけど……。まぁこの森にいる間はあんまり使う事はなさそうだけど、そのうち別エリアにも行くつもりだし、その時に役立つだろ。


 ……火の耐性スキルとかないかな? 耐性系スキルまだ全然ないか……。この辺は進化したら開放か?



 他に良さそうなスキルはないかな? あ、『識別』があるな。サヤが便利そうに使ってたし、いつも一緒って訳でもないから取っとくか。取得は生存進化ポイント3か、これくらいなら有りだな。よし、取得完了。これも詳細見ておこう。


『識別Lv1』

 敵モンスター及びプレイヤーの種族、固有名、進化階位を見抜く事が可能になる。識別可能範囲は自身の階位+Lv分まで。


 なるほど、『識別Lv1』なら自分の進化階位より1段階上の成長体までは分かるのか。これは敵の強さを計るのに使えそうだ。確かにこれなら死にスキルじゃないな。でもこの仕様だと進化階位が上がっていくと段々意味がなくなっていくな。序盤用でそのうち上位スキルに切り替えのタイプだな。



 それぞれ10ポイントは残しておきたいけどもう一つくらいは取得しておきたい。まだ余裕があるのは増強進化ポイントだな。それで何か良さそうなのはないか? あっ、すっげぇ良いの見つけた! これは絶対に欲しい! 10ポイントだけど迷う余地なし、即座に取得! よっしゃ詳細確認だ!


『行動値増加Ⅰ』

 行動値の上限が2増加する。


 効果は単純。そして行動値が不足気味になりがちな俺には重要なスキルだ! 『一発芸・滑り』で多少節約できるとはいえ、あれの登録数は1つのみ。臨機応変に使えるわけじゃないので素の行動値が増えるのは助かる。そして消費なしの常時発動のパッシブスキルか。とりあえずこれで上限が2増えた訳だ。

 ……気になるのはLv表記じゃないところだな。『視覚延長』もだけどⅠってことはⅡやⅢもあったりするんだろうか?



 とりあえずこんな所で良いか。これ以上は温存しておこう。あ、折角マップの南側に来てるんだし、戻る前に別エリア覗いてみようかな? マップの南端の先も他の群集の初期エリアなんだろうか?


「おーい、アル! ちょい質問!」

「お、どした?」

「このマップの南側のエリア情報って出てるか?」

「……いや、まだなかったと思うぞ。確かループして先に進めないとかなんとか……」

「ループしてるって、あのオフライン版での行き止まりの通行不可仕様か。え、でも初期エリアでそんなことする必要あんの?」


 VRゲームをやっていると世界は何処までも続くように思う事もあるけども、どうしてもゲームという性質上全ての場所に行けるとも限らない。イベントフラグが必要なエリアにイベント以外での侵入不可の為にそんな仕様がオフライン版にはあった。これが良く出来たものでマップを見ながらでなければ迷っている風にしか感じられないようになっているのだ。


「あ、そういやその情報はワールドクエストの前だ」

「って事はもしかすると」

「『黒の暴走種』がいる可能性は充分あるな」

「よし、ちょっと行ってくる!」

「あっ! ズルいぞ、ケイ!」

「駄目だよ、アルさん! アルさんは私が止める! ケイさんは先に行って!」

「小癪な! 邪魔者は先に消してくれるわ!」

「ケイさんの邪魔はさせない!」

「この愚か者めが!」


 おい、なんか変な小芝居が始まったぞ。……これ二人には一発芸スキル取得とかにはならないのかね? 一緒に持とうぜ『一発芸・滑り』をさ。

 それはともかくワールドクエスト前の情報という事は、既に古い情報という事だ。まだ『黒の暴走種』がボスとして配置される前だという事なんだろう。よし、確かめに行く価値はあるな!


「ま、冗談はこれくらいにしてと。ケイさんが私達を逃してくれた結果のリスポーンなんだし、それをズルとかは言っちゃ駄目だと思うんだ!」

「それもそうか。それはハーレさんの言う通りだな。でもどんなの居たかくらいは後で教えろよ!」

「おう! それは元々そのつもりだから心配すんな! そもそも勝てるとも思ってないしさ」

「あー確かにな。エリア開放のボスの『黒の暴走種』が弱いとは思えんしな。そもそも『黒の暴走種』の時点で雑魚じゃないが……」


 死んだらランダムリスポーンすればいいだけだし、誰にも未発見ならポイントも貰えるし、そうでなくてもどんな敵がいるのかだけでも欲しい情報だ。折角近くに来ているんだから寄っていくのが良いだろう。


「それじゃとりあえず行ってみる」

「おう、情報待ってるぞ!」

「ケイさん、いってらっしゃい!」


 さてとマップの南端はほぼ埋まってるし、『一発芸・滑り』で一気に進むか。あ、そうだ。行動値も増えたし、登録し直しておこう。


『一発芸・滑り』

登録内容:『群体化Lv2』・『群体内移動Lv2』・『群体化解除Lv2』・『群体化Lv2』・『群体内移動Lv2』・『群体化解除Lv2』・『群体化Lv1』・『群体内移動Lv1』・『群体化解除Lv1』


 よし、再登録完了。群体系統のLv2が1セット分追加出来たから、結構移動できる距離が伸びたぞ! いや、ますます群体化の熟練度の稼ぐのが遠のいてないか? うーむ、移動に便利過ぎて悩むところだな。


 まぁいいや。とりあえず南側のエリアの切り替え場所に向けて出発しよう。


「お、アルさん! この熟練度稼ぎは結構いいね!」

「ケイとサヤが似たようなことやってたんだよ。ケイが水で的を作ってサヤがそれを叩き落としたりしてな?」

「おーそれはそれで楽しそう! 合流したらケイさんにやってもらおう!」


 気にせずそのまま出発しようかと思ったけど楽しそうな2人の声を聞いているうちに少し寂しさを感じたのでやっぱり気にする事にしよう。とりあえず移動しながらで……。


「2人とも、どんな熟練度稼ぎやってんの?」

「お、ケイか。ケイとサヤがやってた熟練度稼ぎの防御版って感じの事をだな」

「アルさんの根を避け続けるんだよ! 当たったら私の負け! 行動値切れでアルさんの負け!」

「いや、別に勝ち負けは決めてないけどな?」

「今のところ私の勝ち越し! さって、アルさんには何してもらおうかな?」

「ちょ!? 負けたらなんかあるのか!?」

「そりゃもちろんだよ!」

「……楽しそうでなによりだ」


 うん、俺とサヤがやってたときのアルの気持ちが少し分かった。これはちょっと寂しいわ。

 俺の心境はともかく、これはこれで有りなんだろうな。アルは根の操作の熟練度を稼げて、ハーレさんは逃げ足の熟練度を稼げる。うん、対戦ゲーム感覚でやると捗るんだよな。黙々と作業的にやるより確実だ。


「ケイさんも戻ってきたら一緒にやろうね! 水の的当てもやってみたい!」

「おう、もちろん良いぜ」


 さて戻ったらやる事も出来たし、さっさと確認してアルの植わっているところに戻ろう!

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