第4話 梟の一声その4
「はいはーい、僕達が集められた理由はまぁ……、わかったけどさ、その梟になる里をどうやって決めるの?」
手を上げながら場違いな程明るい声でそう言うのは、他の忍と比べても一回り小さい、まだあどけない顔立ちをした少年。
毒喰み終造こと、丑三終造だ。
「当然の質問ですね。答えましょう。……これから皆様には全員で殺しあっていただきます。そして、最後の1人になった者の里を、梟として任命したいと思います」
「…………」
佐久間以外の全員が、程度の差こそあれ、驚愕の表情を浮かべる。
「戦闘に使用してよい区域はこの小屋のある山を中心に、東西南北にある山1つ分です。そこから出た場合には逃亡とみなし、梟になる資格を失います」
佐久間が忍達が声を発する前に畳み掛ける。
(…………そうか)
銅駝は、ここに来て気付いた。
やはりこれは、処刑の様相を孕んでいる。
幕府お抱えの職に着くことのできる褒美があるとしても、この中でその褒美を受け取る事が出来るのはただ1人……。
それ以外の忍は抹殺……。
(ついでに幕府に敵対した場合厄介になる強力な忍も排除することも出来る……。盗賊を出した処罰と幕府の未来の安定をこの「梟決め」は兼ねている……)
「決着がつかない場合はどうする?」
そう言うのは、全身に奇妙な斑模様の刺青を入れた忍、合獣鵺だ。
トロリと眠たそうな目で、佐久間を見ている。
「……そのために、皆様にはこちらを飲んでいただきます」
そう言って佐久間が着物の懐からだしたのは、小さな瓶だった。
そしてその中には小さな白い丸石のようなものがちょうど10、入れられている。
「……これは?」
羅世蘭が目を細めて言う。
「……毒薬……でございます」
おそらく、全員が警戒しているのを悟り、誤魔化すことを諦めたのであろう。
佐久間はハッキリとそう言った。
「個人差はありますがちょうど2日後……、この毒は一気に服毒者の体内を蝕み、殺害します」
「……解毒方法は?」
「私が持っている解毒剤を最後の1人となった方にお渡しいたしま……」
佐久間が最後まで言い切る前に。
佐久間の近くにいた銅駝、合獣がいつの間にか抜いた刃を佐久間の首元、そして頭に当てていた。
「そりゃぁ……、ちょーっと無用心が過ぎるんじゃねぇのかい?佐久間さんよぉ……」
銅駝は佐久間の額すれすれに振りかざした短刀、「百鬼夜行」の一振りをゆらゆらと動かす。
「確かにここにいる10人全員はあんたを殺すために協調しないだろうがぁ……。それでも今、2人は動いたぜぇ……」
「別に
「……そうですか……」
「……」
「それでは、銅駝宇随、合獣鵺両名……。ここで処刑いたします」
「あ?」
佐久間が腰に差した日本刀の柄に手を置いた。
瞬間。
「……っ!」
銅駝と合獣は、後ろに飛び退いていた。
プシュ、と銅駝の右頬に一筋の鋭い痛みが走る。触れるとそこには横一文字、切り傷が出来ていた。
「言い忘れていましたが、現在この小屋の周囲……、そして各山の麓……。鼠一匹通さない程の厳重な「包囲網」が敷かれております……。あなた達は罪無き人々をむやみやたらに蹂躙した盗賊を最も多く出した十の里の代表者です……。今ここで、罪人として全員切り捨てても良いのですよ……」
「……」
銅駝は大きく息をふっー、と吐いた。
佐久間の間合いは最大であの日本刀1つ分。飛び道具としても扱う事が出来、かつこの狭い室内、小回りの聞く短刀の「百鬼夜行」を持つ自分の方が大きく有利……。
しかし、銅駝には攻めあぐねている理由が2つあった。
1つは後ろ、そして横に同じく佐久間に向かって構える忍の存在。
彼等は銅駝と同じく「裁かれる」側の人間だが、銅駝の仲間というわけではない。「梟」を目指す者が後ろから不意打ちを銅駝に試みるかもしれない。
……そして2つ目は……。
(純粋に、佐久間とかい言う野郎がつえぇ……。刀気だけで俺と合獣を押切やがった……。やはり並大抵の輩じゃなかったな……)
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