元也&彩枝編
「元也君、元也君、聞いてくれよ~」
「何ですか、彩枝さん」
俺達はファミリーレストランの一角に対面しながら座っていた。
俺は真継元也(まつぎもとや)。
そして目の前にいるやたらとテンションの高いのは相水彩枝(あいみずさえ)。
秘境旅行同好会という勝手に二人で作った謎の集まりのメンバーだ。
まあ、旅行好きの二人が普通に旅行に行くだけなのだが。
彼女とは大学入学の時に出会った。
入学当初から変にテンションが高く、浮いた存在だった彼女は友達が出来るはずもなかった。
いじめられているわけでもなかったので本当に変人扱いされた浮いた人ってイメージだった。
俺も関わることはないだろうと思っていた。
しかし、転機は突然訪れたんだ。
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俺はいつも通り趣味の一人旅の計画を立てていた。
「う~ん、次はどうしようか.........」
「何だ、元也。またどっか行くのか?」
友達の匠(たくみ)が声をかけてくる。
「お前って本当に旅行好きだよな」
「ああ、旅行はどこ行っても楽しいからね」
スマホでいろいろな有名地から秘境まで調べていたがいまいちピンとくる場所が無かった。
「海芝浦とか、どうだい?」
「海芝浦?どこだ、それ?」
俺が無意識に後ろを振り向くと彼女が笑顔で立っていた。
「ふぇ!?な、なに!?ど、どうしたの?」
俺は慌てすぎて変な声を出してしまう。
匠もさすがに驚いた顔をしていた。
「驚きすぎだって、普通に提案しただけじゃん」
彼女は少しだけ困った顔を浮かべながら言ってきた。
「あ!?俺まだ教授にレポート出してないんだった。じゃあな、二人とも」
「お、おい!!!行っちゃった........」
「そうだね」
あいつ逃げたな......。
女性経験のない俺にこの子を処理しろと?
端的に言って無理だ。
俺も言い訳を探してどこかに去ろうとする。
「君も旅行好きなの?」
「え?」
「旅行、好きなの???」
彼女が威圧するように聞いてくる。
「す、好きですけど........」
「そうなんだ~。私もなんだ~、一緒だね~」
彼女はニコニコ笑いながら近づいてきた。
「じゃあ、さっき言ったところに『一緒に』行かない?」
「さっきって海芝浦ってところ?」
「うん、秘境駅って呼ばれている海の見える駅なんだ~」
「へぇ~、そうなんだ.........」
「じゃあ、はい。スマホ貸して~」
「え、あ、うん........」
俺は流されるままにスマホを渡すと彼女は何やらポチポチといじっていた。
「はい、これで完了。私の連絡先登録しといたから、今後の予定はメッセージで連絡ね」
「あ、うん........」
スマホを押し付けられて彼女はそそくさと教室を出ていく。
若干、放心状態だった俺は状況を理解できるようになるまで時間がかかってしまった。
連絡先には『相水彩枝』と書いてあった。
俺は帰り道、匠に電話をかける。
『どうした?』
「なんか、さっきの女の子と旅行することになった件について」
『なんだ、惚気話か、切るぞ』
「ちょっと待てよ!!!お前だって、さっき逃げたじゃねえか」
『いや、ああゆうやつは絶対ヤバい女だろうが。関わらないことに限るよ』
「俺もそう思ったけどさ........」
『お前って押しに弱いもんな~、まあ、頑張れよ』
「ちょ、おい!!!」
電話を切られてしまう。
俺はどうなるかわからないまま家に帰った。
その後もメッセージで彼女とやり取りをしながら週末に海芝浦駅に行くことになった。
いや、これ付き合ってないけどデートじゃん..........
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