唯斗&南月編2
俺は真由と長添さんの二人を近くのショッピングモールに連れて来た。
「本当にいいの?」
「俺達のせいなんだから弁償させてよ」
そのまま一階にある眼鏡屋さんに入った。
「どれでも気に入ったやつを選んで」
「う、うん.......」
彼女はいろんな形の眼鏡を見ていたが、なかなか決まらないようだった。
「静原君はどれが似合うと思う?」
ふと、彼女がそんなことを聞いてくる。
「え、俺!?」
俺は困ってしまった。
そんなこと聞かれるなんて思ってもなかったから。
「ええっと~」
「これがいい!!!」
真由が青色の丸眼鏡を指差す。
「真由ちゃんは、って、あ.........」
「まゆでいいよ、おねえちゃんのなまえは?」
「長添南月だよ」
「な~ちゃんだ!!!」
真由が長添さんにニックネームを付ける。
彼女も少し嬉しそうだった。
「な~ちゃんはこれがいい」
「真由ちゃんはこれがいいのね」
長添さんが眼鏡をかける。
小顔の彼女には凄く似合っていた。
「どうかな?」
長添さんが上目使いで俺に聞いてくる。
めっちゃ可愛い.........。
「凄く、似合ってると思う.........」
「えへへっ、ありがと。じゃあ、これにするね」
彼女の笑顔も凄く尊かった。
こりゃ、クラスの男子共が唸るわけだわ。
その後、度を合わせて一時間後に眼鏡が出来た。
お金を払い、彼女に出来上がった眼鏡を渡す。
「買ってくれて、ありがとう」
「いやいや、弁償しただけだから........」
「ゆ~にぃとなっちゃん、おそろいだ~!!!」
「「え.........?あっ!?」」
俺達は今更、色が一緒だと気づく。
そして、お互いに恥ずかしくなってしまった。
帰り道も少し気まずい雰囲気だった。
真由を家に置いた後に暗くなってきたので、長添さんを家まで送ることになった。
「じゃあ、送ってくるから真由は大人しく家で待っててね」
「わかった、あと........」
真由が長添さんに何かを話していた。
そして彼女の顔が少し赤くなる。
何を話してるんだ?
「じゃあね、なっちゃん!!!」
真由が手を振りながら家に入っていった。
そして、二人きりで歩き出す。
「家って、ここらへんだったんだね」
「うん.......」
お互いにお互いの顔が見れない状態が続く。
そして、会話も弾まずに彼女の家に到着する。
「今日は本当に妹がごめんなさい」
「いいよいいよ、眼鏡ありがとう。大事にするね」
「うん、じゃあ、さよなら」
「うん、またね」
俺は彼女に手を振りながら歩き出した。
ふと視線を感じる。
後ろを振り向くと彼女はもういなかった。
週末が終わり、また月曜日が来る。
日曜日は真由がずっと「なっちゃんにあいたい」と連呼していた。
両親も「誰?唯斗の彼女?」とからかい半分で言ってくるほどだった。
まあ、連絡先も交換していなかったので、人気者の彼女と話す機会なんてこれっきりだろう。
俺は学校に着いて席に座る。
そして、いつも通りに朝の勉強をしていた。
数分後、教室がざわついた。
なんだ?と思って見てみると長添さんがあの丸眼鏡をかけて登校してきたのだ。
俺もぎょっとした。
「南月、どうしたの!?イメチェン!?」
「長添さん、可愛いね~」
「田中君、下心見え見えだよ~」
彼女の取り巻き達がいつもよりも騒がしかった。
「これは、えっと........」
彼女は照れながら、俺に視線を送ってくる。
俺は何も言えずに固まっていた。
取り巻き達は彼女と俺の視線の触れ合いに気づいていないようだった。
皆の興奮が冷めぬまま、放課後になる。
「南月、一緒に帰ろ~」
「今日はごめんね。ちょっと用事があるの」
長添さんが友人の誘いを断っていた。
俺は帰り支度をしながら彼女らの会話に耳を傾ける。
「何々?イメチェンもそうだけど、彼氏でもできたの?」
「ち、違うよ!!!」
「ええ~、怪しいな~。じゃあ、好きな人でもできたの?」
「........うん」
「きゃ~、青春してるね~」
「うわっ、マジ!?俺、狙ってたのに~!!!」
「田中君は無理でしょ~w」
ドンマイ、田中。
お前だけ不憫だな。
俺はそんなことを思いながら長添さんの好きな人のことについて考えてしまっていた。
誰なんだろ?
皆が帰った後に掃除を終えて、真由を迎えに自転車を取りに行く。
そして、自転車に乗って学校を出る。
「静原君!!!」
俺は道端で聞き覚えのある声がした。
急ブレーキかけて振り向く。
「長添さん!?」
彼女が俺のところに近づいてきた。
「どうしたの?」
「真由ちゃんと約束したの。月曜日に君と一緒に迎えに行くって」
「え、そうなの!?」
「そうだよ。だから一緒に迎えに行ってもいいかな?」
彼女は少し不安そうに俺に聞いてくる。
「もちろん、いいよ」
俺は自転車を押して歩く。
「そ、その.......眼鏡にしたんだね」
「うん。せっかく君が選んでくれたから」
選んだのは真由だけどね。
でも、意外だった。
てっきり、休日用として使われるもんだと思っていたから。
保育園に着くと園長先生が少し驚いた顔をした。
「唯斗君、彼女出来たの~?やったわね~」
「いや、長添さんは彼女じゃ.........」
園長先生はニヤニヤしながら「真由ちゃんはいつものとこよ~」と言ってどこかに行ってしまった。
「私達って端から見たらカップルに見えるのかな........」
長添さんが小声で俺に呟いてくる。
俺は恥ずかしくて何も言えなかった。
キリン組に向かうと真由が俺達を見つけるやいなや、こちらに向かって走ってくる。
「ゆ~にぃ!!!なっちゃんもいる~!!!」
真由は長添さんに抱きついた。
「やくそく、まもってくれた」
「うん、ちゃんと守ったよ」
長添さんは笑顔で答えた。
「いっつもくる?」
「真由ちゃんが来てほしいなら来るよ」
「なっちゃん、だいすき!!!」
真由が長添さんにもう一度抱きついた。
俺は二人の笑顔を見て癒される。
俺達は園長先生に挨拶をした後に保育園を後にした。
「ゆ~にぃとなっちゃんはけっこんするの?」
長添さんと手を繋いで歩く真由が突拍子も無いことを言ってきた。
「な、何を言ってるの!?俺達は付き合ってもないんだから.......」
俺は慌てて返答する。
長添さんは好きな人がいるんだからそんなこと言うのは失礼だぞ。
俺はそんなことを考えながら、彼女を見る。
「どうかな?静原君次第だよ♪」
彼女は微笑みながら俺の顔を見つめてきた。
その瞳は俺の心を意図も容易く射ぬいてしまう。
「え、それって........」
長添さんの好きな人って.........
二人は楽しそうに笑い合いながら走り出す。
「ちょ、ちょっと待ってよ~」
俺も自転車を押しながら二人を追いかけるのだった。
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