3.食料

「でも、釣り竿なんてないぜ」

「いや、イカダの中に積んであったはずだ……アレ……?」

「イカダがない!」

 おれたちは叫んだ。

「流されたか!?」

「ああ、潮が満ちて流されたのかも……いや、それはともかく、メシを食う方法を考えよう」


 必死になって食料の取り方を考える。

 おれは、素潜りで魚を捕ろうと言った。シンに止められた。貴重な服を濡らすわけにはいかないからだ。

 シンは、森に入って動物のいそうな所に罠を仕掛けようと言った。もう薄暗いから、深入りは危ない。これもダメ。

 アイデアを出し合ったが、一向にいいのが出ない。

 槍を作って狩りをしよう。槍の製作も、狩りも難しそうだ。却下。

 弓矢はどうだ。もっと作りにくいだろう。無理。

 海がダメなら川で捕ろう。どこに川がある?やっぱりダメ。

 ……潮干狩りはどうだろう。どこかに死んだ動物はいないか。海藻はあるか……。

 いろいろ考えたものの、難しそうだったり、危険が大きすぎたり、運任せだったり……。


 いろいろと無茶な案を出し合った。

 もう出尽くしたか。……まさか、ここで餓死するってのか?

 そう思ったあたりで、シンがつぶやいた。

「一つ、忘れてた……」

「何だって?早く言ってくれ!」

「でも、これだって一歩間違ったら……」

「この際どうでもいい、早く!」

「おい、とりあえず落ち着け……まあいい、その案はこうだ。

 森に入って、木の実や雑草を採るんだ。食べられそうなやつをな……」

「なんだ簡単じゃないか!」

「でも、万が一毒草にでも当たったら……」

「死ななきゃ大丈夫だ!」

「いや、下手したら死ぬんだって……」

「とにかく早く!」

「……仕方ない、行くか……。

 ただし、採ったら一旦見せてくれ。毒草が混じってると危ないから……」

「お前わかるのか!?」

「いや、少ししか……。とにかく怪しいのはやめておこう」

 とにかく、これで食料は手に入りそうだ。


 森に入った。

 薄暗い中、ところどころに差す朱色の夕陽を頼りに歩く。

 草木が風に揺れて、ざわめいている。鳥の群れが一斉に鳴いているようだ。

 獣道すらないから、茂みをかき分け、枯れ木をまたぎ、少しの土も見えない地面を、ザック……ザック……と踏みしめていった。

 茂みの中に、ワラビみたいなのが生えていた。とりあえず採っておく。

 枯れ木の根元に、灰色の椎茸みたいなキノコが生えていた。ちょっと心配だが、後でシンに見せれば大丈夫だろう。これも採る。


 もうだいぶ暗くなってきた。それに、風も強くなっている。

「なあ、そろそろ戻ろうぜ」

 後ろにいるシンに声をかけた。

 でも、返事がない。

 風が強くて聞こえないんだろうか。まだ夢中になって探しているのかもしれない。あいつは昔からそうだ。集中すると周りが見えなくなる。

 こんな所で周りが見えないのはマズい。万が一のことがあったら大変だ。探しに行かないと。


「おーい……シン、どこにいるんだー!?」

「聞こえてたら返事してくれー!」

 叫びながら早歩きで探し回る。でも、返事は聞こえない。

 草が踏まれた跡を探して、そこら中の地面を見て回った。

 それでも、全く見つからない。

 ひどく腹が減って、足にも力が入らなくなってきた。

「そういや、今日はまだ何も食ってなかった……」

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サイケデリック無人島 二輪ほむら @wno-41592

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