情景72【薄く伸びる雲の筋】

 お日さまを真上に頂くと、空はそこから広がっているように思える。

 空気は透き通っていて、空はどこまでも高く伸びていた。


 その空に、真白い一筋の雲が薄く伸びている。道を歩きながらぼんやりと見上げていて、それが気になった。

 その筋を目で追っていくと、空を漂う人工物が目に入る。

 どうやら飛行機雲らしい。


 薄く伸びる筋は、それが通りがかったあとも、しばらくそこに残ったまま風に浚われるのを待っていた。

 いつあそこを通ったのだろう。あそこを通ったときにはきっと、人と音とを引き連れて無機的に通り過ぎていたはずだった。

 今は薄雲が頼りなく伸びている。

 余韻だけがそこにあった。

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