情景70【砂煙と風】

 新学期が始まって数日。帰りのホームルームが終わる。放課後、特にやることもなく教室を出た。階をふたつほど降りたあたりで、足元に夕日がかかる。

 もうそんな時間だっけ。外に視線を遣ると、遠くの山の稜線のうえあたりで、夕日がこちらをじっと見ていた。

 ピロティから校舎を出れば、外では部活に励むひとらの声が響いている。運動部員が声を出しながらストレッチ。運動場では野球部が今日も打ち込み、走り込み、投げ込み、土にまみれていた。


 ざぁっと舞いあがる砂煙。それは風に浚われてすぐに消えるけど、私の方にそよいできた風には、その砂煙の気配がまだ混じっていたような気がした。


 部活か。それもいいかな。

 でも苦手なんだよね、運動。


 牛乳を毎日飲めば、多少は体も頑丈になるか。そんなことを思いながら、喧騒と風を横目に私は帰途につく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る