情景36【車窓。薄い橙色の膜】
電車はレールを噛んで走る。
風の音しかない夕闇の田舎道に、走行音のこだまを残しながら、駆け抜けていく。
車輪がレールの継ぎ目を踏み、タタタン、タタタン、と小気味よい音を立てていた。それが車体を微かに揺らす。振動が座席に伝わり、乗客にささやかな眠気をもたらしていた。
しだいに、体に馴染むような感触を帯びはじめる。頬のそばの窓硝子が外の茜がかった陽光を感じ取り、薄いオレンジの膜を張っていた。
夕陽を手首に肌で浴びているのを感じ、そういえば七分袖だったなと、そんなことをこともなげに思い出していた。
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