情景19【記憶のうるおい。祖母のこと】

 かつて、私がたくさんの時間を過ごした祖母の家。地方都市の住宅街の片隅で、背の高い家々に挟まれるようにしてそれは在った。

 その頃の記憶は今も色褪せることなく、確かなうるおいを持って私のなかに息づいている。外で遊び疲れた私は、縁側から網戸をガラッと開けて「ただいま」と言った。卓にはいくつかの湯呑が屹立し、おばあちゃん好みの渋いお菓子が並んでいる……。


 それがもう何年前のことだろう。


 祖母は亡くなり、空き家になって久しいその家は更地になったと聞いた。

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