情景12【彼は太陽を背負っていた】

 私は今日もひとり、教室の片隅で燻っている。

 児童向け漫画を開いて過ごす昼休み。やがてあきらめを覚えはじめた。


 差し伸べられる手なんて、望めやしない。いつしかそう思うようになる。

 それでもと、内心に抱く一抹の期待を捨てきれないでいる自分に気づいていた。

 そしてあるとき。

「その漫画、おれも読んだ!」

 頭上の、鈍色の天井を砕くような言葉が飛び込んでくる。

「……図書室で?」

「ああ! 図書室で」

 ふいに見上げた先の真白い光は、眩しかった。

「図書室あなどりがたし、だよな!」


 決して忘れない。そのときのこと。

 彼にひかれるようにして、私は立ち上がれた。


 私にはそのとき、彼が太陽のように思えたんだ。

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