第361話25日の夢

 僕は、えんとつに入る。


 べつにサンタクロースになったわけじゃない。


 単純にえんとつの掃除をしているだけだ。


「うわっ――」


 そこで僕はバランスを崩して、真っ逆さまに落ちてしまった。


 ああ、こんなところで生涯を終えるなんて。


 僕は無念の思いで目を閉じたのだけれど、身体はどこも痛くない。


 訝しげに思いながら恐る恐る瞼を開けてみると、僕は全身に赤い服をまとっていた。


「それにこの赤い三角の帽子は……」


 間違いなくサンタクロースだった。


 しかも、あたたかい木のにおいがする部屋にいる。


 正面から小さな女の子が走ってきて、僕の身体に飛びつく。


「なにかプレゼントちょうだい!」


 と言うので、仕方なく手に持っていた掃除用ブラシをあげた。


 女の子は不思議そうに首を傾げながらも、「ありがとう!」と言って笑った。


 ――そして次の日。


 気付いたら僕は部屋のベッドで目が覚めていた。


 この奇妙な夢の話をしようと、通学路で出会った君に声を掛ける。


 すると僕が話す前に、君は幼少期のクリスマスエピソードを話してくれた。


 なんでも本物のサンタに会ったことがあるのだが、誰も信じてくれないのだという。


 しかも、そのとき貰ったプレゼントが、どういうわけか掃除用のブラシだったとかで……。


「…………」


 沈黙する僕の顔を覗き込み、「どうしたの?」と君は言う。


 しばらくすると空には白い雪が舞う。


 クリスマスの夜は、奇跡が、起きる。

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