第360話イヴ

 学校にサンタがやってきた。


 クリスマスイブの日にいきなりだ。


 教室を回り、大きな白い袋に入ったプレゼントを、一つ一つ生徒に配っていく。


「なんだ、校長先生じゃん」


 となりの席のあなたは、プレゼントを受け取りながらそんなことを言った。


 サンタに扮した校長先生は、「しーっ」とわざとらしく口元で人差し指を立てて、生徒の笑いを誘っていた。


 和やかになる昼休み。


 みんなは自分がもらったプレゼントの箱を開けて、各々の感想を述べる。


 お菓子が入っていた生徒や、勉強道具が入っていた生徒もいた。


 プレゼントの中身でみんなが盛り上がる。


 こうしていると、小さかった頃を思い出す。


 枕元にプレゼントを運んだサンタがパパだって気付いても、わたしは嬉しかったし、その日は一日ハッピーだった。


「なぁ、その箱なにが入ってんの?」


 わたしの箱を見たあなたが、興味ありげに覗いてくる。


 箱の中身がなにであれ、毎年この中には想い出が詰まっている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る