第359話ネガティブ・アクティブ
僕は怪しい影を見た。
学校で授業をしているときも。
通学路でも。
休日に買い物をしているときも。
僕の後ろに何者かの気配を感じる。
さりげなく振り返ると、決まってサッと影が引っ込むんだ。
曲がり角や人混みの中に消えていくその気配は、怪しさの塊でしかない。
いったいどんな理由で僕を付け回しているのだろう?
ある日僕は、放課後に人のいない場所に移動する。
学校の裏手にある用具倉庫、その中に隠れて影の正体を突き止めようとした。
しばらくすると扉が開いて、影の主が入ってくる。
跳び箱の陰からそーっと覗き見ると、その人物は女子手芸部の君だった。
手にはロープのようなものを持っているが……まさか、アレで僕の首を絞める気じゃないか……!?
そんなことを思っていると、こちらに気付いた君が目を光らせて跳び掛かってくる。
僕の上に馬乗りになると、そのロープのようなものでギリギリと首を絞めはじめた。
「……35センチ」
そんなことを呟くと、君は立ち上がってロープを仕舞う。
よく見るとそれはロープではなく、洋裁の巻尺だった。
どうやら、僕の身体に合うセーターをつくっているらしい。
君は怪しげな笑みを湛え「フフフ、待っててね」と呟いて去って行く。
誰もいなくなった倉庫に倒れて、僕は一気に脱力した。
「フツウに言ってよ……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます