第355話冬の雨

 冬の雨は冷たい。


 あたりまえだけど、外が寒いからだ。


 これが夏だったらまだしも、冬はシャレにならない。


 なぜなら僕は寒いのや冷たいのが苦手だからだ。


 今もこうして学校の玄関に立ったまま、どうやって家に帰ろうか悩んでいる。


 なんで悩んでるのかといえば、単純に傘を忘れてしまったからだ。


 このまま駆け抜けたら10分くらいで家には着くと思う。


 けれどその間にずぶ濡れになった僕の身体は、冷え切って心臓が止まるかもしれない。


 ガクガク、ブルブル。


 想像しただけで悪寒が背中を走った。


 ああ、どうしよう。


 雨は止む気配がないし、かといってここでじっとしても状況は変わらないし。


 僕はどうすればいいんだ……?


「傘、わすれたの?」


 そこへ女子茶道部の君が歩いてきた。


 この流れはもしかして、「わたしの傘に入っていく?」と誘ってくれるヤツだ。


 やったー助かった!


 と、勝手に喜んでいる僕をよそに、君は「走って帰れば?」と外を指差す。


 何を言ってるんだろうと思い視線を向けてみると、雨が止んでいた――のではなく、雨が雪に変わっていた。


 なるほどこれならずぶ濡れになることはないから大丈夫……なハズがない。


 余計に寒くなって震える僕は、「傘に……入れてください……」と両手を合わせて懇願した。

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