第354話はむっ!

 わたしはカレーを作ることになった。


 事の発端は学校から帰ってすぐのことだ。


 家に誰もいないからどうしたんだろうと思い、台所に行くと書き置きがあった。


 共働きの両親から、「帰りが遅くなるから適当に冷蔵庫のものを食べて」とのことだ。


 だからわたしはキッチンを占領することにした。


 この手にかかればどんな料理でもお皿の上に並べてみせる!


 ――と、息巻いたものの、けっきょく作れるのは簡単なものしかない。


 冷蔵庫を開けて使えそうな具材を探してみる。


 ニンジン、たまねぎ、豚肉、カレー粉……。


 よし、カレーを作ろう。


 そう思い立って、それぞれの材料を包丁で手ごろな大きさに切りそろえた。


 よく火を通して水を入れたら煮立てる。


 いったん火を止めてカレー粉を入れる。


 そして弱火で再び煮立たせて、とろみをつければ完成。


 どうだ。


 カレー皿の上にハート型のごはんを盛り着けてスマホでパシャリ。


 SNSに投稿したらテーブルに座って「いただきます」。


 そしたらサッカー部のあなたからスマホにメッセージが飛んできた。


『それ、いまから食べにいってもいい?』


 数分後、わたしはもう一枚画像を投稿する。


 タイトルは『ごちそうさま』。


 そこに映ったのは、ピカピカに洗ったお皿だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る