第353話いろんな箱

 僕の部屋には、いろんな箱が置いてある。


 片付けするのが面倒だから、適当にその場にあるものを箱に詰めてしまうんだ。


 それがどんどん積み重なって、終いには自分でもなにを入れたのか思い出せない。


 押入れを開けてみると、いろんな形の箱が置いてあった。


 せっかくだから、中になにを入れたのか開けて確かめてみることにした。


「どれどれ……」


 一つ目の小さな箱には、幼稚園のころに遊んでいたおもちゃが入っていた。


 ミニカーや飛行機の模型。


 僕が描いた落書きも一緒に入っていた。


 なんだか懐かしい気持ちになりながら、二つ目の大きな箱を開けた。


 中にはオセロやトランプ、将棋の駒などその他にもいろんなものが入っていた。


 中学の頃に、「マジシャンになる!」とか「プロの棋士になる!」とか言っていろんなものに手を出したっけ。


 けっきょくどれも長く続かなくて、投げ出したのを思い出した。


 最後に開けた箱は、リボンが結んでいる箱だった。


 昔、遠くに引っ越してしまった君からの贈り物を、開けずに仕舞っていたみたいだ。


 蓋を開けると、中には手紙が入っており、幼い筆致で楽しかった想い出が綴られていた。


 今ごろ君はどうしているだろう?


 手紙のすみっこには、引っ越し先の住所が記されていた。


「…………」


 今さらだけど、僕は机に向かって返事を書く。


 箱に詰めた想い出は、ペンを走らせて君に届く。

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