第333話風の日は

 風が吹く。


 真夏の湿った風が吹く。


 セミの声も相俟って、暑さは倍増。


 こんな日は、冷たいものでも食べたい。


 風が吹く。


 グラウンドを駆け抜ける一陣の風。


 僕は野球部の補欠で、今日も球拾い。


 滴る汗を、風が拭う。


 風が吹く。


 雷鳴轟く曇天の風。


 今日は試合で初レギュラー。


 強敵を前に、ザワザワと嵐の予感。


 風が吹く。


 全てが終わった静かなグラウンド。


 あそこでボールを取っていれば……そんな後悔が頭をよぎる。


「次がんばろー!」そう言ってマネージャーの君は励ましてくれる。


 逆風が吹いても、その一言で元気になれる。

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