第323話まってるよ

 僕は未来からやってきた。


 思念を男の子の形に変えて、過去の地球にやってきた。


 目的は地球を救うためだ。


 未来の地球は滅びかけている。


 その危機を救うカギが、この時代にあるハズなんだけど……。


「あれ? きみ見ない顔だね?」


 一人の女の子が僕の顔を覗き込んでくる。


 うまく学校という場所に潜入したが、なるほど、この子が例の救世主らしい。


 とはいえ、どうやって未来を救うのか見当もつかなかった。


 とりあえず転校生というありきたりな理由で、僕は君と日常を過ごす。


 その中でわかったことは、君はいつも楽しそうということだ。


 晴れの日は太陽に背伸びし。


 雨の日は雨音に耳を澄ませ。


 曇りの日は流れる雲を見つめ。


 風の日は運ばれる森の香りを楽しんだ。


 君はなんでもないことに顔をほころばせる。


 その姿に僕はハッとして、身体が光りだした。


 別れのときだった。


 僕の思念は未来へと還り、本来の身体へと融合する。


 地球である僕は、もう少し生きようと思った。


 君が未来で笑えるように。


 がんばる。


 いつかまた、その日まで。


 自転を止めるには、まだ、早い。

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