第314話驚くポイント

 わたしはあることに必死になっている。


 それはあなたを驚かすことだ。


 男子生徒の中では、比較的おとなしい性格のあなた。


 だが、もうおとなしいとかいうレベルじゃない。


 いつもぼーっとしていて、こっちの声に反応しているのかも怪しい。


 そんなあなたの反応が気になって、一度驚かせてみることにした。


 しかしこれが上手くいかない。


 背後から「わっ!」と声を掛けても、おもちゃの銃で脅してみても。


 あなたはぼーっとどこかを見たまま反応しない。


「こうなったら……!」


 わたしは休日を利用して、あなたをお化け屋敷につれてきた。


 きっとここなら驚くはずだ。


 しかしいざ中に入ってみると、わたしのほうが驚いて騒ぎまくってしまった。


 その反動で、ついうっかりあなたを突き飛ばして、軽いケガを負わせてしまう。


 外に出たあと、「ご、ごめん……」と謝って絆創膏を貼ってあげた。


 そしたらあなたは目を見開いて驚いた顔をする。


 こんなの初めて見た。


 何に反応したのか気になって尋ねてみると、わたしが傷の手当てをするキャラには見えなかったのだという。


「…………」


 わたしは傷口の上からぺしんと叩いた。


 なんだよその認識。


 今度は驚かすだけじゃなく、絶叫でも上げさせてやろうかと思った。

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