第312話そしてお弁当を食べるのかもしれないね

 わたしが勇者だったらなにをするだろう。


 ふと、そんなことを考えてみる。


 学校の昼休みのことだった。


 中庭のベンチでぼーっと雲を眺めながら考えてみる。


 勇者、勇者、勇者……。


 きっと世界を救うだろう。


 だけどちょっと待て。


 救う以前に世界が平和だったらどうする?


 そもそも救うの定義とは?


 う~ん……。


 考えてたらわからなくなった。


 そんなところにあなたがやってくる。


「となり、いい?」


 そう言ってベンチに座ると、購買で買ったパンを食べ始めた。


 モグ、モグ、モグ……。


 辺りは静かで、雲がゆっくり流れ、小鳥が空を飛んでいた。


 そんな世界が平和に見えて、勇者はいらないのかもと思ったりする。


 もしわたしが勇者だったら、明日も変わらず学校に行くのかもね。

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