第310話飲まないと冷めるよ
わたしは首を竦める。
北風が冷たくて、思わずマフラーの中に顔を埋める。
部活が終わっての帰り道。
温まっていたはずの身体が一気に冷えて、コートのポケットに手をつっこんだ。
あ~。
う~。
特に意味のない声が漏れる。
無意識に寒さを紛らわせるためだ。
まぁ、紛れないのだけれども。
それでも「あ~」や「う~」を繰り返す。
逆巻く風に舞う枯れ葉が、カサカサとステップを踏む。
その音に顔を上げると、あなたが自動販売機で飲み物を買っていた。
その手に光るホットの紅茶を、じーっと見つめる。
すると呆れたように缶を差し出された。
わたしはマフラーから顔を出して、愛でるように缶に頬ずりする。
あ~。
う~。
顔をほころばせたその声に、あなたは目を細めて、肩を竦めた。
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