第308話あ、ありがとう
わたしは犬が苦手だ。
その理由は、小さいころに道端で吠えられたからだと思う。
どんなにモフモフでかわいくても。
どんなにキラキラの瞳を輝かせても。
道端ですれ違うときはピクリと身体が反応してしまう。
「……あ」
そう思っていた学校の帰り道。
正面から犬が歩いてきた。
首輪がないから、おそらく野良犬だと思う。
舌を出しながら呼吸するその口元には、鋭く白い歯が光っていた。
どうしよう。
動けない。
「ん、大丈夫か?」
そこへあなたがやってきて、固まっているわたしに声を掛けた。
犬は何事もなく通り過ぎていって、道の角を曲がっていなくなった。
どんなにビクビク怯えていても。
どんなにガクガク震えていても。
小さいころ、あなたはわたしの前に立って、犬から守ってくれたのを思い出した。
もう、高校生になって、あなたはそんなこと忘れているようだけれど。
道端で声を掛けられたときは、ピクリと身体が反応してしまう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます