第307話放課後おごってね、と返ってきた

 僕は机の上で、シャープペンシルの芯を出す。


 カチカチと音を立ててノックすると、黒い芯が伸びてくる。


 カチカチ、カチカチ。


 数学の授業。


 黒板の前には先生。


 頭をかかえて問題を解く僕。


 悩んでふと、窓の外を見る。


 ゆっくり雲が流れて、遠くを飛ぶ二羽の小鳥がいた。


 一瞬ぼーっとして、また我に返る。


 カチカチ、カチカチ。


 机の上にポトリと芯が落ちた。


 僕がそれをシャープペンシルの中に戻して、またノックをはじめる。


 カチカチ、カチカチ。


 すると後ろから音が聴こえてきた。


 君がボールペンをノックする音だった。


 カチカチ、カチカチ。


 僕も続いてカチカチ、カチカチ。


 先生が僕に向かって、黒板の問題を解いてほしいと指名してきた。


 カチカチの音を思い出して、僕は問題を解く。


 結果は正解。


 先生はにっこりと笑って、僕は席に戻った。


 ほっとしたあと、後ろの席にカチカチを送る。


 ありがとう。


 君がモールス信号を送ってくれたおかげで、問題が解けました。

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