第303話しばらく出てこないから

 押入れの奥から、謎の箱を発見した。


 クッキーが入っていそうな、ブリキで長方形の箱。


 だけどラベルは貼っていないし、色も真っ黒だ。


 僕はこんなもの入れた覚えはない。


 気になってフタを開けてみることにした。


「…………」


 開かない。


 テープを貼ってるわけじゃないけど、ぴっちりフタが閉まっている。


 こうなるとよけい中身が気になってくる。


 どうやって開けようか考える。


「ねぇ、それなに?」


 遊びに来ていた君が、背中から覗き込んでくる。


 事情を話すと、君はスカートの裾を折って正座した。


 そしてカッと目を見開くと、フタの上に強引な手刀を振り下ろす。


 まるで瓦割り。


 でも、そのおかげでペコっと音を立てて、フタが開いた。


 中を見ると、小さいころに僕が書いたラブレターがいっぱい入っていた。


 年月が経ちすぎてすっかり忘れていた。


 本来送る相手にまさかの形で読まれることになって、頭が真っ白になる。


 恥ずかしい。


 ニヤニヤする君に僕は言う。


 押入れの奥に、僕を仕舞ってくれ……。

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