第299話ついでに手を繋ぐこともできない

 あと少しでわかりそうなことが、いつもわからない。


 答えが喉の奥で引っ掛かって、なかなか出てこない。


 それが僕の、最近の悩みだ。


 昔はこういった悩みはなかった気がする。


 成長して考えることが増えたせいだろうか。


 放課後の教室で、一人考える。


 とにかく答えというものは出にくい。


 暗闇の中で扉を探す感じ。


 鍵を見つけてその先へ行くと、また鍵の掛かった扉があるみたい。


 思考の迷路はぐるぐる回る。


 いつも僕は、答えに辿り着けない。


「ねぇ、一緒に帰ろ」


 だからそう言う君にも、すぐに返答ができない。


「うん」と一言返すだけなのに。


 昔はふつうに言えていた言葉なのに。


 昔はこういった悩みはなかった気がする。


 成長して考えることが増えたせいで、君の瞳を、直視できない。

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