第292話いつもと違う景色

 学校の帰りに、わたしの身体が宙に浮いた。


 いつもの帰り道をなにげなく歩いていただけなのに、フワッと浮いた。


 わたしを中心に、半径一メートルくらいが円柱の光につつまれている。


 身体はどんどん上がっていき、見上げると円盤みたいなものが空中に待機していた。


 これって映画とかで観るヤツ?


 このあと未知との遭遇が待っているのだろうか?


「やぁ、こんにちは」


 円盤の中は、案の定宇宙船だった。


 そして気の抜けた声を掛けてきたのは、クラゲ型の異星人ではなく、わたしと同じ人間の男の子だった。


 どうやら宇宙旅行のついでに地球に寄ったらしい。


 この町の観光スポットが知りたいのだとか。


 あなたは期待に胸を膨らませているけれど、この町にたいした名所なんてない。


 がっかりさせるのも悪いと思い、適当に学校近くの山や町はずれの海岸を案内した。


 そしたらびっくりするほど感動していた。


 山を彩る紅葉や、海を染める夕日の色は、他の人から見ればそういうものなのかもしれない。


 普段見ているものでも、視点を変えれば感じ方が変わる。


 そんなことを、あなたから教わった気がした。


 ――次の日の放課後。


 わたしはいつもの帰り道を新鮮な気持ちで歩く。


 ものの見方を変えれば、毎日が未知との遭遇なのかもしれない。

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