第291話君はおかわりを要求してくる

 僕は不思議な水をもらった。


 お酒ではないけど、飲むと酔っ払った感覚を味わえるらしい。


 まだ十代の僕からしたら、ちょっと興味をそそるものではある。


 大人がお酒を飲んで気持ちよくなっている姿は、どことなくうらやましかった。


 ほんとにイヤなことを忘れたり、飲むだけで気分がよくなるのかな?


 僕はボトルの栓を抜き、恐る恐る水を口に含んだ。


「…………」


 飲んですぐはなにも感じなかったけど、やがて頭のあたりがぼんやりしてくる。


 身体の感覚が鈍くなったというか、ほんわかした高揚感に包まれてきた。


 これが酔った感覚なのか。


 なんだか空も飛べそうな気がする。


 僕はボトルを片手に外に飛び出して、そのまま当てもなく近所をさまよった。


 すると部活帰りの君と遭遇する。


 女子茶道部の君は、僕のボトルを見て顔を近づけてきた。


「きれいな水ね」


 興味があるみたいだから、僕はこころよく水をプレゼントした。


 ボトルごと持ち帰った君は、次の日の放課後、その水でお茶をたてた。


 ――――


 そして二日酔いの僕は、頭を押さえたまま茶道部の部室に呼び出されることになる。


 すると、酔っ払った君たちの介抱をさせられた。


 お酒を飲んでもいいことばかりじゃないな、と思った。


 何事もほどほどが一番なのかもしれない。

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