第289話ゲーセンの君

 僕はゲーセンにやってきた。


 家でスマホをいじってる時間が多いけど、こうして外でゲームするもの好きだ。


 クレーンゲームやカードゲーム、音ゲーなど、ゲーセンにあるものならなんでもプレイする。


 今日やってきたゲーセンは、珍しくレトロな機種を扱うお店だった。


 僕が生まれてない時代のものだ。


 とても興味がある。


 と、店の奥で人だかりができているのを見かけた。


 覗いてみると古い格闘ゲームで連勝している少女がいる。


 隣のクラスの君だった。


 一回も話したことがなく、無口で凛としたその表情から、なんとなく近寄りがたい印象があった。


 とにかく君は、大人相手に一回も負けることなく、すさまじいコンボを叩き込んでいた。


 やがて挑む客もいなくなって、エンディングを観た君はそっと席を立ってベンチに座る。


 世代じゃないゲームを極めてる感が、なんとなくカッコよく見えた。


 僕はそのあと、君に対戦を申し出る。


 君は面倒くさい顔をしたけど、ゴリ押しで頼み込んで一戦だけ勝負した。


 結果は惨敗。


 まったく隙がないのはスゴイ。


 僕はこの日以来、このゲーセンに通うことになる。


 対戦しているうちに、たまに君は笑うようになった。


 知らない物に触れてみて、わかることがある。


 それを僕は、ゲーセンから学んだ気がした。

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