第287話さて、いつ声をかけようか……

 夜の公園に行ってみる。


 昼間は人で賑わっているこの場所も、夜はひっそりとして静かだ。


 すべり台の上にネコが一匹いるだけで、人の気配は感じられない。


 いつもとは違った公園の姿だ。


「せっかくだから……」


 僕はブランコに乗ってみた。


 肌寒い秋の夜気に、キーコ、キーコと鉄の擦れる音が響く。


 その音に混じって、なにかがカサっと音を立てた。


 じーっと暗闇に目を細めると、同じクラスの君が何かしている。


 スカートの裾を折ってしゃがみ込むと、袋から缶詰めを出して蓋を開けた。


 するとすべり台の上にいたネコがやってきて、君の開けた缶詰めにかぶりつく。


 それを見て君は、フフっと笑った。


 意外だった。


 いつも君は無表情だったからだ。


 ネコが好きなんだな、と思う。


 ニャーと満足気な声を上げるお友達の頭を撫でて、君も幸せそうな表情だ。


 夜の公園も、君の顔も。


 今日はいつもと違った姿が見れた。


 そんな特別な一日だった。

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