第285話このあと、おかわりしに行ってた

 僕は学食で「うどん」を注文する。


 理由は一番安いからだ。


 のどごしが良く、腹持ちもいいので気に入っている。


 食券と引き換えに、カウンターで茹でたばかりのうどんをいただく。


 立ち上る湯気を吸い込みながら、窓際の席へと移動する。


 ゆっくり腰を下ろして、割り箸を一本とる。


 手を合わせたあと、麺を適度な長さに持ち上げてみた。


 見つめるたびに不思議に思う。


 小麦粉と水から、どうしてこんなおいしいものができるんだろうと。


 しょうゆをかけるだけで、なんで料理に変貌するんだろうと。


 コシの内側はミステリーでいっぱいだった。


「あ、ここ空いてる?」


 そこへやってきたのは君だった。


 正面に座って、特盛のうどんをすすりはじめる。


 トッピングは山のような天ぷら。


 それらはあっという間に君の胃袋へ消えた。


「ごちそうさま!」と両手を合わせるその顔は、実に幸せそう。


 男子に負けない無限の食欲が、空の器に潜むもう一つのミステリーだ。

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