第284話今度はこっちから誘ってやる

 玄関には傘がある。


 少し開いた状態で置いてある。


 水滴がポタポタと落ちる。


 今日はとても大雨だった。


「ふぅ……」


 わたしはドライヤーで髪を乾かし、タオル片手にベッドに座る。


 窓の外はやはり雨。


 灰色の雲を眺めながら、そりゃそうだよな、と思う。


 だって今日は雨だって、天気予報でいってたから。


 予想以上に降ってるけど、こうなることはわかっていた。


 だけどわたしはひねくれている。


 大丈夫、大丈夫といって、傘を持たずに学校に行った。


 だから帰るときすごく困って、下駄箱の前でウロウロしてた。


 そしたらあなたが来た。


 予備に折り畳みを持ってるからと言って、一本の傘をわたしに貸してくれた。


 予想外。


 計画では「よかったら、入る?」のセリフが返ってくるハズだった。


 なんで二本持ってるんだよ!


 と、叫びながら。


 家に帰ったわたしはベッドの上でゴロゴロもがく。

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