第278話それを見た先生は、なつかしそうに当時を思い出していました

 押入れを開けると大量の段ボールが出てきた。


 中を開けるとかなり古い本がいっぱい入っていた。

 

 わたしが昔、お小遣いをためて買ったマンガたちだ。

 

 なつかしい。


 一つを手に取りページをめくる。


 インクと古びた紙のにおいがした。


 基本的に少年マンガが好きだったので、ここにある本もほとんど少年誌に連載していたものだ。


 シリアスなストーリーものからギャグマンガまで、男の子が読むようなものばかりわたしは読んでいた。


 一方であなたは少女マンガが好きだった。


 小学生のころ男の子のくせにとか言われてからかわれていたけど、あなたは大事な少女マンガを手放さなかったのを覚えてる。


 ちなみにからかってた男子は、わたしが本のカドでぶっとばしてやったけど、辞典が凶器と呼ばれる理由がよくわかった瞬間だった。


 ま、それは置いといて。


 わたしとあなたが仲良くなったのは、それからだったかもしれない。


 お互いマンガを交換して読み合ったり、オススメのマンガを紹介したりもした。


 なつかしい。


 そういえばあなたの本が一冊なくなったときは大騒ぎした。


 どこでなくしたのかわからずに、結局見つからないまま時は過ぎた。


 そして今、わたしは見つけた。


 あのときあなたがなくした本が、今ここにある。


 交換しているうちに紛れてしまったのか。


 古びてしまったけれど、顔を近づけたらあのときのにおいがした。


 なつかしい。


 せっかくだからあなたに持っていってあげよう。


 ついでに今日の出来事をネタにしてもらうんだ。


 少女漫画家として活躍するあなたのアシスタントとして。


 わたしは一冊の想い出を片手に玄関を出る。

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